ジェームズ・マクドナルド騎手が月曜早朝に初めてドバイに降り立つ。そして、世界の注目は彼に集まることになるかもしれない。
『ワールド・ベスト・ジョッキー』の称号を持つ男が、来週金曜にメイダン競馬場で行われるG1・ジェベルハッタ(1800m)で中東デビューを果たす。相棒は香港の王者ロマンチックウォリアー。この一戦を皮切りに、UAEとサウジアラビアでの3戦に挑む。
「金曜にシドニーで騎乗してから香港へ向かい、日曜にヴォイッジバブルに乗ります。その後、月曜の朝にはメイダンに到着し、芝コースでロマンチックウォリアーの調教に乗る予定です」とマクドナルドはIdol Horseに語った。
「ドバイに1週間滞在します。滞在するのは初めてですがメイダンを知る良い機会になりそうです。正直、まだ厩舎の場所も分からないくらいですが、来週にはかなり詳しくなっているはずです」

ロマンチックウォリアーは、昨年12月8日の香港カップ制覇以来のレースとなるが、12月17日からすでにメイダン競馬場に滞在しており、ジェベルハッタまでの準備期間は5週間以上と長くなる。これはロマンチックウォリアーが過去に海外遠征で取ったスケジュールと同様で、マクドナルドもそれを支持している。
「彼は過去の遠征でも長めの準備期間を取っています。メルボルンでコックスプレートに向けてそうしましたし、日本の遠征でも同じでした」とマクドナルドは説明する。
「すぐにレースを使うのではなく、環境に慣れる時間を与えるんです。今回は遠征の序盤ということもあり、さらに長めの滞在になりましたが、ダニー(シャム調教師)はその方が彼の適応に良いと考えたのでしょう」
「現地の関係者からの報告では、とても順調に過ごしているとのことです。ロマンチックウォリアーは旅慣れしている馬なので、特に問題はないと思っていましたが、予想どおり落ち着いています。健康状態も良好で、今のところ何のトラブルもありません。このレースは彼にとって厳しい戦いになりますが、すでにチャンピオンのみが成し得る偉業を達成している馬ですし、さらなる歴史を刻むチャンスにふさわしい存在です」
マクドナルドにとって、今回のメイダン初騎乗はロマンチックウォリアーだけにとどまらない。オーストラリアのマイケル・コスタ調教師ともタッグを組み、前座レースで複数の馬に騎乗予定だ。特にメイダンのダート戦での騎乗は、4月に控えるドバイワールドカップ挑戦に向けた重要な経験となる。
実はマクドナルドがコスタ厩舎の馬に騎乗したのは、約9年前のワーウィックファーム(シドニー)での一度きりだ。その日、マクドナルドは5勝を挙げ、そのうち4勝はゴドルフィン所属馬、もう1勝は当時若手調教師だったコスタの管理馬、ヴィアダクトレスでの勝ち星だった。
それ以降、マクドナルドは世界のトップジョッキーへと上り詰め、一方のコスタはドバイのジェベル・アリへ拠点を移し、現在はUAE調教師リーディングで首位争いをしている。
「マイケルの馬に乗るのは本当に久しぶりだけど、彼があそこで素晴らしい仕事をしているのは知っている」とマクドナルドは語る。
「彼はシドニーでも有望な調教師だったし、今の成功はまさに彼の努力の賜物だと思う。再び彼の馬に乗れるのは嬉しいね。まだ何鞍乗るのかは分からないですが、楽しみにしています」
ニュージーランドの小さな町、ケンブリッジから世界へ。マクドナルドは10代で母国の競馬界を席巻し、その後オーストラリア、日本、香港、マカオ、シンガポール、イギリス、アイルランドと舞台を広げてきた。現在は消滅したマカオを除くすべての地で勝利を挙げている。
次はドバイとサウジアラビアだが、異なる調教師や馬主との出会いは、さらなる世界的なチャンスにつながるかもしれない。何しろ、こうした超高額賞金レースは全世界の注目を集め、特にアメリカやヨーロッパの関係者も熱視線を送っている。
2022年にはダミアン・レーン騎手がG2・UAEダービーでクラウンプライドを勝利に導き、オーストラリア人として初めてG1・ケンタッキーダービーに騎乗する可能性があった。しかし、最終的にチャーチルダウンズで手綱を取ったのはクリストフ・ルメール騎手だった。

マクドナルドもまた、今後数ヶ月の間に中東で同じような扉を開く可能性がある。しかし、ケンタッキーダービーのような舞台で異なる騎手たちと腕を競う機会には興味があるとしながらも、メイダンやリヤドでそれを積極的に求めているわけではないと語る。
「もちろん、ジョッキーとして世界最高峰のレースで騎乗できることを願うのは当然だし、その可能性があるのも確かです。アメリカで乗る機会があれば素晴らしいでしょう。でも、それが今の最優先事項ではない。こうした大レースに参戦するとき、将来どこに繋がるかを考えているわけではないんだ」
「来週はロマンチックウォリアーに乗って最高のレースをすることだけを考えているし、秋に向けて国内や香港での騎乗予定に集中しています」
「先のことは分からないよ。ロマンチックウォリアーのおかげですでにいくつもの扉が開いた。来週ドバイに行き、世界最大級のレースに話が及んでいるのも、遠征を通じて名前が広まり、チャンスが広がるからこそです。次はどこに繋がるかなんて、本当に分かりません」
マクドナルドの来週の海外遠征により、世界最強牝馬ヴィアシスティーナの帰厩後初のバリアトライアルには騎乗できないことになる。本来は木曜にワーウィックファームで行われる予定だったが、シドニーの激しい嵐の影響で月曜に延期となった。
「理想的ではありませんが、これら一流馬に乗る素晴らしいチャンスを得られる立場にいればこういうことも起こるものです」とマクドナルド。「ヴィアシスティーナ、ロマンチックウォリアー、そしてヴォイッジバブルとも関係を築けているのですから」
「まだ細かいスケジュールは詰めていませんが、今後数ヶ月の予定は大体うまく調整できるはずです。ただ土曜日のサウジカップから、日曜日の香港ゴールドカップに向けてのことだけはまだ完全には確信が持てていません」