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昼食の席で、女王陛下のコーギーたちが足元を駆け回っていたら。それはいったいどんな体験なのか。

「その経験はどんなものだったのかと聞かれると、テーブルの会話が止まってしまうんです」と語るのは、オーストラリアのクリス・ウォーラー調教師だ。「みんなが聞きたがるんですよ」と笑いながら話す。

競馬と社会全体との結びつきには、目を見張るものがある。調教師が管理を任される相手も、国家元首、政治家、実業家、映画スター、スポーツ界の著名人に至るまで、実にさまざまだ。

2000年のゴールデンスリッパーをベルデュジュールが制した後、オーストラリア元首相のボブ・ホーク氏は、広告業界の大物であるジョン・シングルトン氏とともに、ローズヒルガーデンズ競馬場のパブリックバーで一杯ずつ酒を振る舞ったことがある。どんな競馬場にも、実にさまざまな人生を歩んできた人々が集まっている。

だが、常勝の名伯楽であるウォーラー師がエリザベス女王と築いたような関係を誇れる調教師は、ほとんどいない。それは、女王のためにオーストラリアで何頭かを管理した天才調教師だったから、というだけではなかった。そこには、確かな親交があった。

女王陛下は、ウォーラー師が手がけたウィンクスに夢中になった。ウィンクスは、オーストラリア競馬史上最高の一頭とも言える存在である。33連勝を飾って引退。ラストランにあたり、ウォーラー師は女王に、ウィンクスがラストランで履いていた蹄鉄のひとつを贈った。

その最後のレースは2019年、ロイヤルランドウィック競馬場のクイーンエリザベスステークスだった。

サラブレッドに深い愛情を注いだ女王が2022年に亡くなった際、葬儀に招かれたオーストラリアからの関係者は、要人を除けばわずか10人だった。ニュージーランド出身のウォーラー師も、そのひとりだった。

その数カ月前、ウォーラー師はネイチャーストリップでロイヤルアスコット初勝利を挙げていた。5ハロンのキングズスタンドステークスである。オーストラリアでどれほどの実績を積み上げてきたウォーラー師にとっても、あの瞬間は感情があふれそうになるものだった。

「レースの直後でした。私はある部屋に案内されて、要するに『女王陛下がお話しになりたいそうです』と言われたんです」と、ウォーラー師はIdol Horseに語る。「女王陛下は体調が良くなかったのですが、それでも電話をかけてくださいました」

「あれは本当にすごいことでした。端的に言えば、あの一週間がどれほど特別なものになり得るか、そして私たちが世界的なスポーツに関われていることがどれほど幸運かを示す出来事でした。女王陛下は人生を愛し、さまざまなスポーツを愛し、オーストラリアを愛し、人を愛していました。そして競馬には、特別な愛情を持っていました」

The Wallers and The Queen
STEPHANIE & CHRIS WALLER, QUEEN ELIZABETH II / Photo from instagram
Chris Waller and James McDonald walk by a floral tribute to The Queen at Rosehill in 2022
CHRIS WALLER, JAMES McDONALD / Rosehill // 2022 /// Photo by Mark Evans (Getty Images)

競馬の歴史と伝統をウォーラー師ほど理解している人物は少ない。だからこそ、ロイヤルアスコット開催は常に彼にしっくりくる舞台だった。

彼を単に特別な存在と呼ぶだけでは、むしろ過小評価になる。20年以上前、管理馬1頭と限度額いっぱいのクレジットカードを抱えてシドニーにやって来たウォーラー師は、モデルで妻のステファニーに収入面では支えられながら歩み始めた。

彼の物語は、競馬界だけでなく、オーストラリアのスポーツ界全体を見渡しても、最も偉大な叩き上げの物語と言っていい。

仕事への姿勢は徹底しており、手法は細部まで緻密で、それを毎年、毎年、繰り返している。開催日のプレスルームで、記者たちの横に座り、ノートパソコンに向かうウォーラー師の姿は珍しくない。だが、それこそが、オーストラリア東海岸の各拠点で常時数百頭を抱える大所帯を管理し、勝利を重ね続けるためのやり方なのだ。

53歳のウォーラー師は、オーストラリアの調教師記録を次々に塗り替える道を進んでいる。現在のオーストラリアには、昔に比べてG1競走が不釣り合いなほど多いという事情はあるにせよ、その歩みは止まらない。

ウォーラー師はすでにG1通算200勝を超え、レジェンドトレーナーのトミー・スミス調教師とバート・カミングス調教師が記録した246勝を猛追している。スミス師は何十年にもわたってシドニー競馬界に君臨し、驚異の33年連続リーディングを達成した人物だった。

ウォーラー師はまもなく16年連続のリーディングに手をかける。管理馬は今季だけで5000万豪ドルを超える賞金を積み上げる見込みで、出走頭数は最も近いライバルの3倍に達している。馬主たちはずっと前から、勝てないなら仲間に加わるしかない、と判断してきた。

いま問われるのは、競馬史を作るこの調教師に馬を預ける余裕があるかではない。預けない余裕があるのか、である。

だからこそ、ウォーラー師が1頭の馬、ジョリースターのために世界の反対側へ飛ぶ姿は、どこか異例に映る。同馬はロイヤルアスコット開催最終日の6ハロン戦、クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスで1番人気として出走する見込みだ。

世間の見方とは違い、ロイヤルアスコット開催はウォーラー師にとって決して執着の対象ではなかった。何より、馬に大きな輸送負担がかかるからだ。ウォーラー師はきわめて慎重に馬を扱う調教師であり、さらに賞金面でも、オーストラリアの主要スプリント戦には及ばない。

「何かの案に対して、最初はそこまで本気になれないこともあります。でも一度その味を知ると、欲しくなるんです」とウォーラー師は言う。

「メルボルンカップについても、長い間同じように考えていました。何頭か出したことはありましたが、そこまで本腰を入れていたわけではありませんでした。ところがある年に4着に入って、その時に『なるほど、このレースは勝てるんだ』と思ったんです」

ウォーラー師にとって初めての英国遠征は、忘れたいものだった。G1馬のズースターで遠征したものの、現地滞在中に故障。発走ゲートに入ることはなかったが、その後はオーストラリア屈指の大種牡馬となった。

2頭目の遠征馬、ブレイゼンボーは、さまざまな意味で話題を集めた。中でも注目されたのは、同馬に騎乗したオーストラリアのクレイグ・ウィリアムズ騎手が、馬群とは離れたスタンド側の進路を選んだことだった。結果、ブレイゼンボーは半馬身差で敗れた。

2022年のロイヤルアスコット遠征では、ネイチャーストリップが勝った。その同年、もう1頭の有力馬だったホームアフェアーズは結果を残せなかった。

「ネイチャーストリップの時は、どこか現実離れしたような出来事でした」とウォーラー師は振り返る。

「発走地点へ向かう時、私はかなり緊張していて、発走までの数分を待つ間、何かして気を紛らわせたかったんです。ゲートが開いたと思ったら、10秒後にはもう先頭に立っていて、勝ちそうに見えました。あまりに早く、あまりに非現実的で、ほとんどショックのようでした」

ロイヤルアスコット開催への遠征回数は決して多くないが、実はウォーラー師は、かつて北半球にサテライト厩舎を構えることまで検討していた。

「最初に行った時、『あちらに小さな厩舎を持つべきだろうか』と考えました。当時は輸入馬も多く入ってきていました」

「ドバイのことまで考えました。でも、考えてみれば、オーストラリアは本当に恵まれています。私たちは、とてもいい環境にいるんです。オーストラリアにいられることがどれほど幸運なのか、強く実感するようになりました」

ウォーラー厩舎らしい馬の典型を探すなら、ジョリースターはその一頭かもしれない。もともと素質はあった。3歳時にはマイルのG1レースを勝っている。ただし、課題も抱えていた。先行勢から離れすぎる位置で競馬をすることが多く、合わない馬場状態でつまずくこともあった。

しかし、ウォーラー師は慌てなかった。この男はいつもそうだ。ネイチャーストリップを、行きたがって自由に走りすぎ、早々に自滅してしまうこともあったスプリンターから作り変えたように、ジョリースターにも少しずつ手を加えていった。

そして5歳シーズンの終盤、ジョリースターはオーストラリア最強格のスプリンターへと姿を変えた。今年は3戦無敗である。

ただし、今年の賞金2000万豪ドルのジ・エベレストには、カーインライジングという巨大で不気味な影が迫っている。そう考えれば、シドニーでカーインライジングを相手にするよりも、世界の反対側へ向かう方が魅力的に映る。

「もしジョリースターが勝てば、この馬は世界的に、永遠に認められることになります」とウォーラー師は言う。「その機会にふさわしい馬です。キャリアの円熟期にいて、それが成績にも表れていますし、今季はここまで無敗、安定して走れています」

「だからこそ、その舞台に立つ資格があると思います」

「ジョリースターはこれまで、オーストラリアの最強スプリンターたちと戦い続けてきました。いつも勝ってきたわけではありませんが、多くの場合、そこには理由がありました。馬場状態、枠順、あるいはレース中の巡り合わせです。今の成熟度が、それらの課題を乗り越えさせているのです」

では、これほど遠くへ馬を遠征させるうえで鍵になるものは何か。ウォーラー師らしく、答えはシンプルだ。

「回復がどれほど大事かを、軽く見てはいけません。そして、それはとても単純なことなんです。水を飲むこと、飼葉を食べること、落ち着いていること。それが90%で、調教は10%です。すべては回復にかかっています。私は現地に到着してから、回復のために7日間を見ています」

ジョリースターが勝ったとしても、ウォーラー師が小さな部屋へ案内され、女王からの電話を待つことはもうない。それは、どこか寂しいことでもある。ウォーラー師は、その会話を心から愛していたからだ。彼は競馬の人であり、女王もまた競馬の人だった。

それでもウォーラー師には、女王陛下と競馬を語り合えたという特別な記憶が、これからも残り続ける。足元を駆け回るコーギーたちも含めて。

アダム・ペンギリー、ジャーナリスト。競馬を始めとする様々なスポーツで10年以上、速報ニュース、特集記事、コラム、分析、論説を執筆した実績を持つ。シドニー・モーニング・ヘラルドやイラワラ・マーキュリーなどの報道機関で勤務したほか、Sky RacingやSky Sports Radioのオンエアプレゼンターとしても活躍している。

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