ザック・パートンの最新ニュース

04/04/2025
日本vs香港、芝の王者vsダート王者……競馬界を盛り上げる熱い「ライバル関係」
競馬界を支えているのは、まさにライバルたちの存在だ。馬同士の死闘、長年のライバル対決、国の意地、さらには火花散る馬主同士の確執まで、世界の競馬では今、魅力的な対決が次々と生まれつつある。
マイケル・コックス

04/04/2025
「さらに6ヶ月!」来日資格延長のモレイラ騎手、サトノレーヴとの “香港再挑戦” に期待
高松宮記念を制し、短期免許資格の延長に成功したジョアン・モレイラ騎手を取材。サトノレーヴが香港に再挑戦し、カーインライジングと再戦が実現すれば楽しみだと話した。
マイケル・コックス

18/03/2025
パートン騎手、香港ダービー騎乗を諦めず「土壇場での電撃復帰」も視野
7度のリーディングジョッキーに輝いたザック・パートン騎手が、負傷したつま先について専門医からのゴーサインを受け、日曜日のBMW・香港ダービーでの騎乗の可能性を探っている。
ジャック・ダウリング

14/03/2025
7日間で2勝、ビューティーアライアンスが香港ダービーに駆け込み乗車
ジョン・サイズ厩舎のビューティーアライアンスが、南アフリカダービー3着馬モンディアルを補欠馬へと追いやり、金曜日に発表された2025年香港ダービーの最終14頭に名を連ねた。
アンドリュー・ホーキンス

13/03/2025
ホー、サナ、木村和士、パートン…怪我と戦う世界の騎手たち、復帰への闘い
トップジョッキーのヴィンセント・ホー、ザック・パートン、木村和士、アルベルト・サナが、それぞれの負傷と長期離脱の現実、そして復帰への道のりについて語る。
デイヴィッド・モーガン
ザック・パートンのプロフィール
巧みな手綱捌き、秀逸なレースセンス、ゴール前での勝負強さ、そして優れた身体能力を持つザック・パートン(ザカリー・パートン)は、歴代トップクラスのジョッキーと言えるだろう。
騎手として目立ったウィークポイントはない上に、香港競馬での信頼や厩舎とのコネクションといった『場外戦』でも隙はなく、完璧な騎手を体現したような存在だ。
パートンの優れたバランス感覚や、仕掛けどころでの判断力は高く評価されている。かつては体重制限の問題に悩まされたこともあったが、プロ意識の高さで乗り越え、香港競馬を代表する騎手の一人となった。彼の忙しさを考えれば、これは驚異的である。

ザック・パートンの生い立ち
パートンの家族に競馬関係者はいない。彼は、オーストラリアのニューサウスウェールズ州、北中海岸地域のコフスハーバーという自然豊かな街で幼少期を過ごした。ニュージーランドのネルソン、南オーストラリア州のマウントガンビアに住んでいたこともあるという。
パートンが初めて馬と出会ったのはネルソンで、その後マウントガンビアでもスタンダードブレッド種の馬と触れ合っていた。
パートンは平均より小柄な身長だったが、運動神経は抜群で、心肺能力も高かった。
故郷のコフスハーバーに戻ったパートンは14歳で学校を辞め、地元に厩舎を構えるトレバー・ハーディ(Trevor Hardy)調教師に弟子入りした。パートンを騎手として育てたのは彼だが、ハーディはこう語る。
「みんなから『凄い仕事じゃないか』と褒められるが、別に私の手柄というわけではなく、彼に素質があっただけですよ。ただ、人としての成長には貢献できたかもしれませんね」
パートンの母親、リズは当時の息子についてこう振り返る。
「彼はレースが終わって馬から降りた途端、馬主に向かって『この馬はロバだ』と言い放ったんです。まあ、言いたくなる気持ちは分かりますが、馬主本人に向かって言うべきことでは無いですよね」
ハーディは荒削りなダイヤの原石だったパートンを磨き上げ、立派な騎手へと成長させた。次第に騎手として頭角を現し、2003年には見習い騎手ながらブリスベン地区のリーディングジョッキーとなった。
シドニー地区に拠点を移すと、2年連続でダレン・ビードマン騎手に次ぐリーディング2位となり、2007/2008シーズンから香港競馬に移籍した。

ザック・パートン、最大の偉業とは?
パートンは香港で現在の地位を築くまで、多くの苦労を重ねてきた。ダグラス・ホワイト騎手やジョアン・モレイラ騎手といった強力なライバルがひしめき合っており、有力な調教師たちから信頼を勝ち取るには時間を要した。
2023/2024シーズンには新記録となる179勝を挙げ、6度目の香港リーディングジョッキーを獲得したが、宿敵であるホワイトとモレイラはその時既に香港を去っていた。
パートン最大の偉業と言えば、この2つが挙げられる。
一つ目は、モレイラとの激闘の末に首位を勝ち取った2021/2022シーズンのリーディング争いだ。シーズン最終日、絶好調のパートンは4勝を稼いだ一方、モレイラは勝ち星を挙げられなかった。最後の最後で明暗が分かれ、長きに渡る大激戦に終止符が打たれた。その年、パートンは5度目のタイトルを手にしたのだ。
もう一つは、ホワイトが樹立した香港通算最多勝記録を塗り替えた功績だ。2025年1月22日、ハッピーバレー競馬場でビューオブザワールドに騎乗し、通算1814勝目を挙げた。この瞬間、パートンはホワイトを抜いて単独首位に浮上し、歴史にその名を刻んだ。

ザック・パートンの有名な相棒は?
かつて香港競馬を席巻した、ジョン・ムーア厩舎のパワフルな先行マイラー、ビューティージェネレーションとのコンビは最も有名だろう。怒涛の10連勝を含め、このコンビでは通算で14勝を挙げた。
2018/2019シーズンはこのコンビで8戦8勝、無敗で1年を終えている。

ザック・パートン、最高の名騎乗
ハッピーバレー競馬場の条件戦を見ていると、パートンの巧さがよく分かる。非常にトリッキーなこの競馬場はスタート、位置取り、そしてレースペースの判断力が全てを分ける勝負の鍵となり、パートンはそれに見事に対応している。
G1での名騎乗だと、2つの名レースが思い浮かぶ。2013年のドミナントで制した香港ヴァーズは、パートンの鋭い洞察力と仕掛けのセンスが垣間見えた。12番枠に入ったドミナントは、単勝13倍の穴馬と見られていた。レースが始まると最後方ラインに位置し、最終コーナーの辺りで捲り気味に進出開始。人気馬たちをまとめて負かした。香港ヴァーズは北半球のステイヤーが席巻していたレースのため、ドミナントの勝利は15年ぶりの地元香港馬による勝利だった。
2015年のG1・高松宮記念、エアロヴェロシティが勝ったときのレースも、パートンの冷静さが際立っていた。エアロヴェロシティにとっては不利な稍重馬場だったが、冷静にコーナーで加速体制に入ると、直線では鋭い伸び脚を見せた。パートンは追える豪腕騎手としても知られているが、このレースではオーストラリア人騎手らしい巧みな手綱捌きも見れた。

ザック・パートン、最大のライバルは?
パートンとジョアン・モレイラのライバル関係は、香港競馬そのものを新たなる高みへと押し上げた。10年間でパートンは6回、モレイラは4回もリーディングジョッキーのタイトルを獲得した。しかし、パートンを最も苦しめた相手である、ダグラス・ホワイトとのライバル関係はさらに熾烈なものだっただろう。
パートンの前に立ちはだかり、リーディングのタイトルを防衛し続けたのはホワイトという巨人だった。ホワイトは2000/2001シーズンから13年連続でチャンピオンを獲得していた。2012/2013シーズンになると王座を脅かす存在としてパートンが台頭し始めるが、今度はその一挙手一投足に注目が集まり始めた。『どちらかがレース中に潰しに行った』のような些細な出来事にも関心が集まるようになり、時にはマスコミを介した言葉の応酬も見られた。
ホワイトからパートンに乗り替わりとなったアンビシャスドラゴン、ホワイトの新たな相棒となったグロリアスデイズの2頭によるライバル関係は、今となっては伝説だ。
大接戦の末、グロリアスデイズに軍配が上がったG2・ジョッキークラブマイルでは、ホワイトはパートンを指差して挑発したとして裁決委員から非公式の警告を受けた。アンビシャスドラゴンが逆転した香港マイルでは、パートンが反撃とばかりにホワイトを指差しながら捲し立てる光景が見られた。

ホワイトは現在調教師に転身しているが、あの頃のわだかまりはもう無いようだ。先述にあった2021/2022シーズン最終日の4連勝には、ホワイト厩舎の管理馬での勝利も含まれている。
パートンを有名なスポーツチームに例えるなら?
パートンはナショナルラグビーリーグ(NRL:13人制のラグビーリーグ)のシドニー・ルースターズの大ファンとして知られているが、いくつかの共通点を見出すことができる。
ルースターズが歩んだ歴史は、パートンのキャリアと重なる部分がある。かつてのルースターズは労働者階級の地元チームだったが、現在は国を代表するエリートチームへと進化している。最近、ルースターズの試合ではビールよりシャンパンの方がポピュラーだという。コフスハーバーの一般市民として生まれたパートンも、香港で一流へと成長し、国際的なファッション雑誌に登場し、一流レストランで食事をするセレブとなった。
常に誇りと期待を併せ持つルースターズは、時に傲慢の象徴だと批判される。しかし、その度に結果を出して黙らせてきた。パートンにも同じことが言えるのではないだろうか。欲しいのは人気でなく、目の前の一勝だ。香港では、彼より圧倒的な成績を残した者はいない。
2023年、シドニー地区で騎乗中だったパートンは、ルースターズに招待されてチームメンバーと対面している。
ご存知ですか?
パートンの妻、ニコールさんは殿堂入りジョッキーのジム・キャシディ元騎手の娘だ。2人の間には、キャッシュとロキシーという2人の子供がいる。

周囲からの評価
2016年、パートンはG1・サイアーズプロデュースSをヤンキーローズで制した。調教師のデイヴィッド・ヴァンダイクは、パートンの優れたバランス感覚についてこう述べた。
「彼の騎乗フォームは本当に美しい。騎手が馬に騎乗する写真を撮るとしたら、これが理想的な題材だろう」