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G1・香港マイルは、地元の香港馬が圧倒的な好成績を残しているレースだ。香港のリッキー・イウ調教師とマーク・ニューナム調教師は、今年も地元勢が優勝トロフィーを獲得するだろうと自信を見せる。

イウ調教師は前年覇者にして、昨季の香港三冠を完全制覇したヴォイッジバブルを送り出す。一方のニューナム調教師は、期待の新星と称されるマイウィッシュを出走させる。この香港マイルは、香港馬が過去21回のうち19回制してきた。

イウ師は「勝負は香港馬同士になると思います」とIdol Horseに語る。「マイウィッシュ、ギャラクシーパッチ、そしてうちから出すもう一頭のサンライトパワーも、きっといい走りをしてくれるはずです」

「サンライトパワーは、使うごとに少しずつ良くなっています。前回のG1出走(チャンピオンズマイル)では、クリストフ・スミヨン騎手を背に3着とよく頑張ってくれましたし、今回も同じ騎手です。きっとまたいい走りをしてくれると強く信じています」

一方、今年のメンバーには、昨年の香港マイルで2着だった日本のソウルラッシュや、クラシック牝馬のエンブロイダリーに加え、欧州からザライオンインウィンター、ドックランズ、ブーバティエも参戦する。

ニューナム師もIdol Horseの取材に対し、「リッキー(イウ師)の言う通りだと思います」と同調する。

「このレースの過去の成績が示す通り、香港馬同士の勝負になるケースが多く、そして香港の名マイラーたちは、毎年このレースで結果を残してきました」

「このレースを連覇したゴールデンシックスティやグッドババを見れば、それがよく分かります。今シーズンは、マイウィッシュ自身がその第一歩を踏み出してくれればいいなと期待しています」

7歳馬のヴォイッジバブルは前走、2000m戦でロマンチックウォリアーの2着に入り、健在ぶりを示した。ニューナム師はヴォイッジバブルこそが「倒すべき相手」と見ている。

「ヴォイッジバブルはとても器用な馬で、マイウィッシュと同じようにポジションを取れるだけのスピードを持っています」

「前走は逃げましたが折り合いもついていましたし、自分でレースをつくれるタイプです。ゲートをしっかり出て、道中も無駄な力を使わずに運び、最後までしっかり伸びてくる馬です」

「マイウィッシュが前回対戦した時は、こちらが叩き2走目だった上に、20ポンド(9キロ)という斤量差の恩恵も受けていました。ですが、今回はそのアドバンテージがありません。こちらが一段階レベルアップして臨む必要があります」


イウ師はヴォイッジバブルについて「状態はいい」と報告し、先週、ビッグレースで手綱を取ってきたザック・パートン騎手を背に走った楽なバリアトライアルを経て、フレッシュな状態でレースに臨めると見ている。

「今回はレースに向けてフレッシュな状態に保つこと、コンディションを維持することがトライアルの目的でした」と調教師は説明する。

「ジョッキーには、あのトライアルはとにかく彼を気分良く走らせて、スタートにしっかり集中させるためのものだと伝えました。実際、とても楽にこなしてくれましたし、だからああいう形で最後方で終えたんです」

一方でニューナム師は、マイウィッシュが前走のG2・ジョッキークラブマイルでギャラクシーパッチの4着に敗れた際、単勝1.4倍の1番人気だったが「フレッシュすぎて気負い気味」だったと振り返る。

「5週間も間隔が空くと、彼には合いません」とニューナム師。「マイウィッシュは元気で小柄な馬なの、とにかくコンスタントにレースを使っていくことが何より重要なんです」

「マイウィッシュへの自信はまったく失っていません。なぜ勝てなかったのか、理由ははっきり分かっています。あのレースを見返せば、序盤で厳しいペースを刻んだ馬たちは皆、ゴール前では大きく失速していました。ですが、マイウィッシュだけは1馬身差まで踏ん張っていました」

「気持ちが乗りすぎていた分だけ、いつもなら他馬を2馬身突き放している余力が削られてしまっただけです」

「今季の2戦目と、昨季の香港ダービーに中3週の間隔で臨んだ時が、私の見立てではマイウィッシュのベストパフォーマンスでした。今回もレース間隔は3週間で、そのパターンに戻ります。ピークの状態で臨めるはずです」

ニューナム師は、マイウィッシュに金曜朝にもう一度速い追い切りを課す予定。「ベストコンディションでレースに向かわせますし、あとはこのメンバーの中でどこまで通用するかを確かめるだけです」と見立てを語った。

My Wish winning the Hong Kong Classic Mile
MY WISH, LUKE FERRARIS / Hong Kong Classic Mile // Sha Tin /// 2025 //// HKJC

12月は、JRAの2歳G1・3競走が行われる大一番の月であり、その先陣を切るのが日曜の阪神ジュベナイルフィリーズだ。

このレースは、その後のG1戦線へ直結することが多く、この5年で見ても、リバティアイランドやソダシといったクラシック戦線を代表する名牝たちが勝ち馬に名を連ねている。

さらに、のちにG1・桜花賞2着、G1・ヴィクトリアマイル、G2・1351ターフスプリントを制したアスコリピチェーノも、ここを足掛かりに飛躍した一頭だ。

今年は「大本命」と呼べる存在こそいないが、人気の中心となりそうなアランカールには評価すべき材料がそろっている。9月の阪神戦で快勝を収め、ここまで2戦2勝。2016年のオークスを制したシンハライトの娘という血統背景も魅力だ。

一方で、アランカールはまだ重賞は未経験。これは2016年のソウルスターリング以降、歴代勝ち馬のパターンには当てはまらない。

しかも今年は、重要な前哨戦の勝ち馬が不在だ。G3・ファンタジーステークスを制したフェスティバルヒルは故障で戦線離脱し、G3・アルテミスステークス勝ち馬のフィロステファニも怪我ですでに引退している。

離脱が相次ぐ今年、「物差し」となるのがアルテミスステークス2着馬のミツカネベネラと、同レース3着馬のタイセイボーグだ。タイセイボーグはG3・新潟2歳ステークスでリアライズシリウスの2着、フェスティバルヒルはそのレースで3着だった。

こうした事情もあり、今年の阪神ジュベナイルフィリーズは混戦模様の一戦となっている。サフラン賞を制したアルバンヌも見逃せない存在だ。また、白菊賞を無敗で制したマーゴットラヴミーも注目を集めるだろう。同馬はクールモアが所有していたG1牝馬、トゥゲザーの孫にあたる。

今年は重賞勝ちの実績こそ手薄だが、この中から何頭かは、春になれば牝馬クラシック戦線を賑わす存在になっているだろう。

Alankar wins at Hanshin
ALANKAR, YUICHI KITAMURA / Listed Nojigiku Stakes // Hanshin /// 2025 //// Photo by @dk_horse1412

1995年12月10日、フジヤマケンザンが森秀行調教師、蛯名正義騎手とのコンビで香港カップ(当時:香港国際カップ)を制し、日本調教馬として初めて日本国外の重賞競走を制した。

1977年12月10日には、当時“神童”と呼ばれたスティーブ・コーゼン騎手が、1シーズンの獲得賞金総額600万米ドルに到達した史上初の騎手となり、歴史に名を刻んだ。デビューからわずか2年目のシーズンでの快挙であり、この活躍により『スポーツ・イラストレイテッド』誌と、AP通信のスポーツマン・オブ・ザ・イヤーのタイトルを手にすることになった。

1999年12月10日、ラフィット・ピンカイ・ジュニア騎手は、ハリウッドパーク競馬場でアイリッシュニップに騎乗して8,834勝目を挙げ、ビル・シューメーカー騎手を抜いて世界最多勝騎手となった。

2008年12月14日、香港のチャンピオンマイラー、グッドババはG1・香港マイルを3年連続で制覇し、香港国際競走の同一レースを3勝した史上初の馬となった。

カーインライジングとロマンチックウォリアーが、火曜日のシャティンで30分の間に相次いで追い切りを行った。その様子と両チャンピオンへの期待を、デイヴィッド・モーガン記者が現地から詳しくレポートした。

今週のシェーン・ダイ元騎手のコラムでは、香港を代表する名伯楽、ジョン・サイズ調教師の「真の凄さ」に言及。香港競馬を変えたトレーニング革命の現場を間近で見てきた筆者が、サイズ師をリーディングトレーナーに押し上げた“調教術”を紐解く。

ドバイワールドカップ制覇という大仕事を成し遂げながら、騎乗数の落ち込みにも直面したフローレン・ジェルー騎手。日本での初の短期免許取得を前に、Idol Horseの取材に「奇妙な一年」の舞台裏を明かした。

香港国際競走ウィークに合わせて読み返しておきたい一本。

ジェームズ・マクドナルド騎手が、20歳の頃に挙げたシャティンでのG1初勝利から、近年のロマンチックウォリアーとの名コンビに至るまで、自身の「香港競馬で得た学び」をデヴィッド・モーガン記者に語ったロングインタビュー。

アケダクト競馬場の牝馬限定・9ハロン戦、G2・デモワゼルステークスでは、トッド・プレッチャー厩舎の牝馬に常に目を光らせておく価値がある。先週末もその“鉄則”が生きた。

アメリカンファラオ産駒の2歳牝馬、ゼイニーが今年のデモワゼルSを制し、プレッチャー師にとって通算10回目となる勝利をもたらした。

レポールステーブルが所有するゼイニーは、イラッド・オルティスJr.騎手を背に第4コーナーで先頭に立つと、耳をピンと立てたまま他馬を突き放し、8馬身半差の楽勝劇を演じた。

プレッチャー師は、このレースを一貫して「その先」へのステップとして活用してきた。2003年の勝ち馬アシャドは、すでにG1馬としてデモワゼルを制していたが、その後もG1を6勝。ケンタッキーオークスとブリーダーズカップディスタフも制覇した。

マラサートも同様に、この2つのビッグタイトルを含むG1・6勝を挙げている。さらに、ストップチャージングマリアや、ベルモントステークス2着で知られるネストも、デモワゼルSを足掛かりに複数のG1を勝ち取った面々だ。

香港国際競走
シャティン競馬場、12月14日

香港が誇る年末の祭典は、今年も“名勝負”の予感が漂っている。4つのG1それぞれに、興味深いストーリーと見逃せない戦いが待っている。

G1・香港スプリントでは、カーインライジングが圧倒的な1番人気で登場する。焦点は、自身の持つシャティン1200mのレコードを再び塗り替えることができるかどうかだろう。G1・香港マイルは、距離短縮で挑むヴォイッジバブルの参戦により、一気に盛り上がりを見せる。巻き返しを狙うマイウィッシュ、そして日本からは実力派牝馬のエンブロイダリーが加わり、ハイレベルなマイル戦になりそうだ。

G1・香港カップでは、ロマンチックウォリアーが史上初となる同一G1・4連覇の偉業に挑む。

そして“この日のベストレース”になるかもしれないのが香港ヴァーズだ。前年王者のジアヴェロットに、欧州からソジーとアルリファー、日本からアーバンシックが挑み、ハイレベルな中長距離決戦が繰り広げられそうだ。

阪神ジュベナイルフィリーズ
阪神競馬場、12月14日

ここに至るまでに重賞ウィナーが複数離脱し、混戦模様となっている今年の阪神ジュベナイルフィリーズだが、一番人気は無敗の2連勝を果たしたアランカールが有力視されている。勝てば母のシンハライトに続くG1制覇となり、親子でのクラシック制覇も現実味を帯びてくる。

また、前走のサフラン賞を良い内容で制したアルバンヌ、G3・中京2歳Sで僅差2着のスターアニスも有力視されているほか、ダノンスコーピオンの全妹・ギャラボーグも抽選を突破して出走が叶えば人気を集めるだろう。なお、ソダシの妹、マルガは登録のみで回避となる。

朝日杯フューチュリティステークス
阪神競馬場、12月21日

G3・新潟2歳ステークスを4馬身圧勝、無敗のリアライズシリウスが主役と目される一戦。6月のデビュー戦は7馬身圧勝、ここまで2戦はどちらも圧勝で突破している期待の逸材だ。

一方、G2・デイリー杯2歳ステークスを2歳コースレコードで制したアドマイヤクワッズも負けず劣らずの逸材候補。エコロアルバやダイヤモンドノットといった前評判の高い重賞馬も参戦し、頭数は多くないながらも実力馬揃いのレースとなりそうだ。

有馬記念
中山競馬場、12月28日

国内を代表する女傑、レガレイラは有馬記念の連覇なるか。先月のG1・エリザベス女王杯を制したレガレイラは、実力が疑問視されていた昨年と違い、今年は堂々の一番人気で出走すると見られている。

ジャパンカップ3着のダノンデサイルは前走、ゴール後に放馬するアクシデントがあったが、予定通り有馬記念へと参戦する。凱旋門賞5着のビザンチンドリーム、皐月賞のミュージアムマイルも出走を表明。このレースがラストラン、ジャスティンパレスも出走予定馬に名を連ねている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

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