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夢がかなうこともあれば、打ち砕かれることもある季節が来た。4月から5月へ差しかかるこの時期、話題の中心はクラシックレースとトリプルクラウンだ。

今週末には英国クラシック最初の2戦が行われる。英国三冠の初戦にあたるG1・英2000ギニー、そしてG1・英1000ギニーだ。一方、米ルイビルではG1・ケンタッキーダービーで米国三冠が幕開けを告げる。

そして大井もある。地方競馬を代表する東京の大井競馬場では水曜夜、日本の3歳ダート三冠初戦となるJpn1・羽田盃が行われ、戸崎圭太騎手を背にしたフィンガーがロックターミガンを退け、1800m戦で逃げ切り勝ちを収めた。

「前に行くプランを騎手と立てていました。ただ、競馬ではいつもそうですが、それがうまくいくかは本当に分かりませんでした」と田中博康調教師はIdol Horseにコメント。「戸崎騎手は本当にうまく乗ってくれて、馬のリズムをいい形で保つことができました」

「次は東京ダービーへ向かいます。2000mのレースは、この馬にさらに合うと思います」

日本勢に話を戻すと、JRAのワンダーディーンとダノンバーボンは、ケンタッキーダービーの前売りオッズでは穴馬評価にとどまる。人気を争う2頭は、G1・アーカンソーダービーを勝ったレネゲイド、そしてG1・フロリダダービーで有力馬のコマンドメントにハナ差まで迫ったザプーマだ。

GEORGE BOUGHEY / Golden Gates Handicap // Ascot /// 2022 //// Photo by Ascot

一方、英国三冠の最後の勝ち馬を探すなら、1970年の名馬、ニジンスキーまで遡らなければならない。現在有力馬のボウエコーが今週土曜、ローリーマイルコースの英2000ギニーを勝ったとしても、三冠馬に用意されている200万ポンドのボーナスが支払われる可能性は高くなさそうだ。

「10ハロンを超える距離を走る姿を見ることになれば、私は驚くと思います」と、同馬を管理するジョージ・バウヒー調教師は今週語った。「ものすごいスピードを見せていますし、そこを生かしていくつもりです」

バウヒー師とビリー・ロックネイン騎手(ビリー・ロクナン)は、このコンビとして初のクラシック制覇を狙う。

ただし、英2000ギニーは混戦模様だ。ボウエコーは、エイダン・オブライエン厩舎のバリードイル勢と対峙することになる。アイルランドの名調教師はこのレースを10勝しており、今回は4頭を送り込む。その中でもG1勝ち馬のグスタードとプエルトリコが中心だ。

また、オブライエン師は日曜の英1000ギニーにも、3頭の有力牝馬を送り込む。プリサイス、ダイヤモンドネックレス、トゥルーラブはいずれもG1勝ち馬だ。さらに、カール・バーク厩舎からは、同じくG1勝ち馬のヴェネチアンサンも参戦する。

その強豪たちに挑むのが、スチュアート・ウィリアムズ調教師の伏兵牝馬、アズリートだ。

ウィリアムズ師はこれまでG2以上のレースを勝ったことがないが、2週間前のニューマーケットのローリーマイルで、タスリート産駒のアズリートがマルコ・ジアーニ騎手を背にG3・ネルグウィンステークスを制し、キャリアでも屈指の大きな勝利を挙げた。

「昨年末、キノーがアスコットの英チャンピオンズスプリントで3着に入りました。ですから、それがこれまでG1に最も近づいた経験です」とウィリアムズ師はIdol Horseに語った。「少しずつ近づいています。ただ、こういうレースを勝つのは夢であり、本当に、本当に難しいことです」

「勝つ馬や、その馬たちがどこから来ているのかを見ると、多くは自家生産馬だったり、セールで桁外れの値が付く馬だったりします。私たちには、まず手が届かないような馬たちです」

アズリートも自家生産馬ではある。ただし、シャドウェル、ジャドモント、ゴドルフィン、アガ・カーンスタッドのような大手の自家生産馬ではない。比較的知られていないオーナーブリーダー、デヴィッド・ノブレット氏の勝負服で走る一頭だ。

ノブレット氏は母アズールミストも所有し、同馬はヤーマス競馬場のクラス6・条件戦を勝っている。

7ハロンのネルグウィンステークスでは、アズリートは出遅れ、後方に構えた。動き出そうとしたところで不利も受けたが、そこから加速し、力強く伸びて勝ち切った。単勝オッズ51倍の伏兵だった。

「ネルグウィンの前から調教の動きは良かったので、勝ったことにそれほど驚いたわけではありません」とウィリアムズ師は言う。「あのレースの締めくくり方を見る限り、英1000ギニーのマイルも問題にならないだろうとかなり期待していますし、レース後の状態もとても良いです」

「気難しい馬ではありませんが、ゲートでは少し苦労するところがありました。冬の間、その点を改善しようと多くのことをやってきました。先日のネルグウィンSでもまだ少し出は遅かったので、一度使ったことで落ち着きが出て、英1000ギニーでは五分に出てくれることを願っています」

Nijinsky and Lester Piggot win G1 The King George VI And Queen Elizabeth Stakes
NIJINSKY, LESTER PIGGOT / G1 The King George VI And Queen Elizabeth Stakes // Ascot /// 1970 //// Photo by Leonard Burt

1970年4月29日、ニジンスキーはレスター・ピゴット騎手を背に英2000ギニーを制し、英国三冠馬となる道の第一歩を踏み出した。ヴィンセント・オブライエン師が管理した同馬は、その後、英ダービーとセントレジャーも制することになる。

エディ・アーキャロ騎手は1941年4月30日、慌ただしい一日を過ごした。のちの三冠馬ワーラウェイでケンタッキー州チャーチルダウンズ競馬場のケンタッキーダービーを制する前に、ニューヨーク州クイーンズのジャマイカ競馬場で5鞍に騎乗し、4勝を挙げていた。

今週のIdol Thoughtsでは、シェーン・ダイ氏がカーインライジングを過去半世紀の名馬たちの中でどの位置に置くべきかについて論説を展開。また、スプリンターは「もっと正当に評価されるべき」だと根拠を交えて論じる。

カーインライジングとロマンチックウォリアーが圧巻の走りを披露した今年の香港チャンピオンズデー。前述のコラムもこの走りが“根拠”となっている。デイヴィッド・モーガン記者は現地で取材し、2頭の名馬が見せた圧倒的なレースを見届けた。

今週末に英2000ギニーが行われる。今年は、フランケルがクラシック史上でも屈指の圧巻の走りを見せてから15年にあたる。昨年掲載した特集記事では、あの名馬がリードを広げていく姿を見せつけられた2人の騎手の証言を振り返っている。

バーイードは圧倒的な名馬だった。フクムはG1を2勝した。そして、全弟のラーヒーブもまた、先週サンダウン競馬場で行われたG3・クラシックトライアルで、エリートの仲間入りを予感させるだけの走りを見せた。

シーザスターズ産駒の同馬は、昨年アスコット競馬場で未勝利戦を鮮やかに勝っており、サンダウンでのレースが2戦目だった。ラーヒーブのロッサ・ライアン騎手は内ラチ沿いの楽な3番手で追走。前ではオイシン・マーフィー騎手がワインディングストリームでしっかりした流れを作っていた。

最終コーナーを回ると、ラーヒーブは逃げ馬の後ろから外へ持ち出された。直線半ばまで追い出しを待たれると、その時点で周囲の馬はすでに脱落していた。残り約100mまでは、派手さよりも確実さで相手を封じ込めているように見えたが、そこでラーヒーブは手前を替え、もう一段ギアを上げた。

最後は耳を立て、手綱を抑えられながら、後続に3馬身1/4差をつけてゴールした。

ラーヒーブはまだ2戦しかしておらず、競馬を覚えている段階にあり、完成もこれからだ。兄たちの実績を考えれば、その事実も含めて魅力は大きい。6月初めの英ダービー、そしておそらくその先の大舞台へ向けても、楽しみな存在である。

サウスオーストラリアンダービーデー
モーフェットヴィル(オーストラリア)、5月2日

先週の「世界の注目馬リスト」で取り上げたアクシデンタルビッドが、G1・サウスオーストラリアンダービーでさらに一段階上の舞台へ進む。1番人気に推されても不思議はない注目を集めている。

2518mのこの一戦には16頭がそろい、近走でVRCセントレジャーを勝ったシルヴァシスタ、同じく牝馬でG1好走歴のあるアフターサマー、エンジンオブウォーなどが出走する。

英2000ギニーデー
ニューマーケット(イギリス)、5月2日

2歳時にG2・ロイヤルロッジSを勝ち、翌年に英2000ギニーも制した最後の馬は、2010年と2011年のフランケルだった。

ボウエコーは、その名馬に続く存在として有力視されている。エイダン・オブライエン師はこのレースに4頭を送り込み、その中にはG1勝ち馬のプエルトリコとグスタードが含まれる。グスタードは前回の登録段階で誤って取り消されたため、追加登録された。

一方、前哨戦の勝ち馬では、ニューマーケットの直線ローリーマイルコースでG3・クレイヴンSを制したオクサゴン、ニューベリーのG3・グリーナムSを勝ったアルパルスランがいる。

英1000ギニーデー
ニューマーケット(イギリス)、5月3日

エイダン・オブライエン調教師は、前売り上位4頭のうち3頭を擁している。その筆頭は、G1・モイグレアスタッドSとG1・フィリーズマイルを勝ったプリサイスだ。同馬はG1勝ち馬の僚馬ダイヤモンドネックレス、トゥルーラブと対戦する。

先週の主要前哨戦が伏兵の勝利に終わったあとも、プリサイスは英1000ギニーの前売り人気で首位を保っている。英国勢の大きな期待を背負うのは、昨年G1・モルニー賞を勝ったカール・バーク厩舎のヴェネチアンサン。

伏兵でG3・ネルグウィンS勝ち馬のアズリートは、スチュアート・ウィリアムズ調教師にとってキャリア最大の白星を目指す。

ドゥームベン10000デー
ドゥームベン(オーストラリア)、5月16日

1200mのこのメイン競走は1933年に創設され、クイーンズランド州を代表する馬齢重量のスプリント戦だ。

今年の登録は5月5日に締め切られるが、前売り段階の有力馬は、かつてパースで走っていたジョーカーズグリン。プライベートハリー、レディオブキャメロット、プライベートアイも出走してくる可能性がある。

ロッキンジステークスデー
ニューベリー(イギリス)、5月16日

ゴドルフィンのG1・BCマイル勝ち馬ノータブルスピーチは、このマイルのメイン競走で有力候補になりそうだ。

ゴドルフィンはこのレースを9勝しており、最初の勝利は、同レースがG1に昇格し3歳馬に門戸を閉ざした3年後、1998年のケープクロスまでさかのぼる。

この一戦には、昨年に大穴でクイーンエリザベス2世Sを勝ったキケロズギフト、成長著しい5歳馬モアサンダー、近走でG3・アールオブセフトンSを制したダミサスも出走する可能性がある。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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