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広東省郊外の従化トレセンで休養している時でさえ、カーインライジングの話題が尽きない。ロイヤルアスコット開催のG1戦線が、サトノレーヴとジョリースターを含む4頭の大接戦となったG1・クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスで幕を閉じると、早くも来年の同レースへの参戦候補として、その名が取り沙汰されている。

香港競馬が誇る稀代の王者は、この日本のサトノレーヴと豪州牝馬のジョリースターをすでに退けている。それだけに、参戦を熱望してきたアスコット競馬場の関係者の間では、6月20日の大一番に姿がなかったことが議論の的となった。

英国メディアが飛びついたのは、アスコット競馬場でレース運営と広報を統括するニック・スミス氏の発言だった。レーティング世界一位のカーインライジングを管理するデヴィッド・ヘイズ調教師から、来年のロイヤルアスコット開催について「前向きな反応」があったという。

パドック脇から中継していた豪州のテレビ局チャンネル7の解説陣に至っては、来年の参戦がほぼ決まったかのように語っていた。

「ノーとは言っていません」と、ヘイズ師は6月22日、Idol Horseの取材に答えた。

「選択肢の一つではありますが、おそらく可能性は低いでしょう」

世界最高賞金のスプリント戦であり、シドニー競馬を代表する総賞金2000万豪ドルの一大レース、ジ・エベレスト。それはカーインライジングを引きつける魅力であると同時に、2026年と同様、2027年もロイヤルアスコット遠征を見送る理由になり得る。

「ジ・エベレストは素晴らしいレースですし、賞金面でも非常に大きな魅力があります」とヘイズ師は話す。

「この馬はオーストラリアから香港へ来ましたし、私もオーストラリア人です。ですから、私にとってジ・エベレストは常に最優先です」

そうなると、アスコット側の期待の膨らませ方は、どこかロイド・クリスマスを思わせる。1990年代の名作コメディ映画『ジム・キャリーはMr.ダマー』で、ジム・キャリー演じる主人公が、意中の女性、メアリー・スワンソンと結ばれる可能性を尋ねる場面だ。

「正直に言ってくれ。僕にどれくらいチャンスがある?」

「ほとんどないわ」

「ほとんどないって、100分の1くらい?」

「どちらかといえば、100万分の1ね」

「つまり、チャンスはあるってことだ!」

冗談はさておき、確かにチャンスはあるようだ。100万分の1よりは高いとしても、依然として実現の可能性は低い。

カーインライジング陣営の優先順位としては、2027年のロイヤルアスコット参戦は上位にない。それが最優先事項に浮上するとすれば、今後10か月で香港短距離王が、馬主のレオン・シェク・コン(梁錫光)氏とカーインシンジケートが求める条件をいくつか満たした後になる。

もっとも、ヘイズ師やカーインライジングの主戦を務めるザック・パートン騎手が指摘したように、最終的な決定権を持つのは梁氏だ。

「香港スプリントとチェアマンズスプリントプライズで、ともに3連覇を狙い、ジ・エベレストでは連覇を目指します」と、ヘイズ師は語った。

「それらをすべて達成すれば、オーナーも挑戦してみようという気持ちになるかもしれません」

しかし現時点でヘイズ師が最も可能性の高いシナリオと考えているのは、カーインライジングが今季と同じローテーションを繰り返すことだ。10月のジ・エベレストに2年連続で出走するための準備を進め、その後は2027年の同レース3度目の出走を目指す。

ランドウィック競馬場で行われるジ・エベレストの総賞金は2000万豪ドル(1050万ポンド・約22億円)。一方、アスコット競馬場のクイーンエリザベス2世ジュビリーステークスは総賞金100万ポンド(190万豪ドル・約2.1億円)で、6月20日の1着賞金は56万7100ポンド(107万豪ドル・約1.2億円)だった。

理由は大きく二つある。ジ・エベレストが用意している巨額賞金は当然、大きな魅力となる。さらに、6月に英国へ遠征し、香港に戻った後、豪州のシドニーへ向かい、再び香港へ帰るという移動を4か月のうちにこなす負担も避けたい。

スミス氏は、カーインライジングほどの特別な馬を呼び込むため、アスコット側が提供できる奨励金やボーナスについて言及している。ヘイズ師もIdol Horseに対し、香港スプリントやチェアマンズスプリントプライズと連動した何らかのボーナスがあれば、アスコット遠征の魅力は増すかもしれないと明かした。

「ただ、何よりも大切なのは馬です」とヘイズ師は語る。

「ジ・エベレストがなければ、アスコットへ行くことに迷う余地はありません。しかし、アスコット側にとっての問題はジ・エベレストです。アスコットへ行けば、この馬には休める時期がまったくなくなります」

「最大目標であるチェアマンズスプリントプライズが終わっても調教を続け、英国へ行かなければなりません。その後は香港へ戻ってジ・エベレストに備え、おそらく前哨戦も必要になります。かなり厳しい日程です」

「この馬は1走平均で120万豪ドル(約1.3億円)、約60万ポンドの賞金を獲得しています。アスコットの1着賞金は、その1走平均の獲得額を下回ります」

「ですから私たちは、この馬をリスクにさらさないことを第一に考えています。この馬のような規格外の馬に巡り合ったら、少しでもリスクを減らすために、できることは何でもします。遠征するたびに、何らかのリスクが生じますから」

KA YING RISING, ZAC PURTON / G1 The Everest // Randwick Racecourse /// 2025 //// Photo by David Gray (AFP)

現在、カーインライジングは中国本土にある香港ジョッキークラブ(HKJC)の従化トレーニングセンターで、数週間の休養を取った後、調教を再開したところだ。

ヘイズ師は同馬の近況について、「昨季と同じ流れを、そのまま繰り返しています。だからこそ、今年はアスコットへ行かないと強く主張したのです」と説明する。

「従化トレセンの放牧地で1か月を過ごし、その後は暑さを考慮して、1週間にわたってプール調教と水中歩行を行いました。そして、キャンターを始めたばかりです。新シーズンの開幕初日への出走を見据え、7月第2週から調教負荷を高めていきます」

「それに、香港からオーストラリアへの遠征は、英国から米国へ行くのとは事情が違います。オーストラリアでも香港でも検疫があります。豪州へ行けば、おそらく合計6週間は隔離環境で過ごすことになります。非常に大がかりな海外遠征ですし、これ以上この馬に無理をさせたくありません」

高額賞金がないなか、アスコットが最大の魅力として訴えてきたのは、そこでしか得られない経験だ。長く華やかな歴史、英国王室の臨席、欧州で最も格式ある開催としての地位、そして勝利がもたらす名誉がある。

カーインライジングの主戦ジョッキー、パートン騎手はIdol Horseの取材に、「率直に言って、オーナーはお金を必要としていません。非常に裕福な方ですし、お金を人生の最優先にする人でもありません。ただ、極めて成功した実業家ですから、自分にとって何がより重要なのかを見極めなければなりません」と話す。

「私たちはオーストラリアへ遠征し、世界最高賞金のスプリント戦であるジ・エベレストを勝つという、素晴らしい経験をしました。では、オーナーは3度目もそこへ行きたいと思うのか。それとも、ロイヤルアスコットへの遠征に、より大きな価値を見いだすのか、ということです」

「私も年齢を重ね、より大きな成功を収めるにつれ、経験には金銭面を上回る価値がある場合もあると気づきました」

「ロイヤルアスコットで走ること自体が特別な経験です。英国王室が見守るなか、欧州の一流馬が集う素晴らしい競馬場で走るのです。ただし、賞金を目当てに行く場所ではありません」

「最終的にはオーナーが、ロイヤルアスコットで得られる経験を選ぶのか、それともランドウィックで総賞金2000万豪ドルを懸けて走ることを選ぶのか、比較して判断しなければなりません」

2027年4月のチェアマンズスプリントプライズを終えた時点で、アスコットの格式が梁氏とヘイズ師の心を動かす可能性はある。アスコット側がヘイズ師の発言からくみ取っている「前向きな反応」とは、そこにある。

「ジ・エベレストを2勝し、香港の国際レースを6勝し、G1を13勝か14勝していたら、オーナーも挑戦したいと思うかもしれません。どうなるかは分かりません」とヘイズ師は言う。

「オーナーをはじめ関係者が前向きで、馬の状態も良ければ、私は迷わず挑戦します。シルクハットとモーニングも持っていますし、ぜひ行ってみたいです」

しかし、そうした思いも、現状を踏まえれば慎重にならざるを得ない。カーインライジング陣営には、アスコット遠征は魅力的な挑戦であっても、類まれな運動能力と疑いようのない偉大さを備えた香港王者が、その実力を証明するために行く必要はないという確かな考えがある。

「オーナーは、この馬を何より大切にしています」

「香港競馬では、馬主が所有できる馬は数頭に限られています。だからこそ、カーインライジングのような馬に巡り合えたオーナーは、名誉を求めるよりも、この馬にできるだけ長く現役を続けてもらいたいと考えているのだと思います」

「それが現時点でのオーナーの考えでしょうし、HKJCも同じ意向です」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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