ジョアン・モレイラ騎手はメルボルンカップに何度も騎乗しており、レースそのものは理解している。しかし、『国を止める競走』の重要性を理解し始めたのは、最近オーストラリアの田舎町を訪れたことがきっかけだった。
「唯一比較できるのは、ブラジルがサッカーワールドカップの決勝に進出する時でしょうね」とモレイラはIdol Horseに語った。「ブラジルが決勝に進出すると、国民の10人中9人が各ポジションの選手を知っている。メルボルンCはそれに近い存在です」
先週末、モレイラ騎手はスケジュールの合間を縫ってハンターバレーを訪問した。その際、引退したチャンピオンホース、エイブルフレンドにも再会したが、そこで出会った地元の人々は皆、同じ質問をしてきた。
「人里離れた田舎で出会った人々が皆、口を開けば『メルボルンCの騎乗は決まっているの?』と聞いてくるんです。そこで初めて、メルボルンCがどれほど大きな存在なのか分かりました」
「ブラジルがワールドカップ決勝に進出すると、誰も働かない。全てが止まります。メルボルンCの時も同じように、オーストラリアの人々は、工場であれ農場であれ、どこにいても仕事の手を止めてレースを見る。それを想像すると、感動しますね」
「海外の人、特にブラジルの人々に『国を止める競走なんだよ』と伝えると、競馬が大好きだから大げさに言っているだけだと思われるんです。しかし、これは事実です。とても印象的で、素晴らしいレースです」


田舎町の人々が尋ねる質問の答え、つまりメルボルンCで彼が騎乗する馬は、クリス・ウォーラー調教師のバッカルーだ。早くも本命視されているこの馬は、G1・アンダーウッドステークスを制し、コックスプレート優勝馬のヴィアシスティーナの2着(訳者注:10月5日、G1・ターンブルS)、そしてコーフィールドCでは鋭い脚を見せて2着に入っている。
これはモレイラ騎手にとって6度目のメルボルンC挑戦となる。過去にはサインオフ(4着、2014年)、ザユナイテッドステイツ(14着、2015年)、コンスタンティノープル(13着、2019年)に騎乗し、ハートブレークシティー(2016年)とソウルコム(2023年)では、多くの波紋を呼んだ2着に終わっている。
2017年にはウィリー・マリンズ調教師のトーマスホブソン(6着)に騎乗予定だったが、当日の落馬により出場できなかった。モレイラ騎手のメルボルンCでの騎乗に対する批判については後述するが、あと一歩及ばなかったという経験が、世界の競馬でも特に自身のレガシーに影響を与えるであろうこのレースに勝ちたいという思いをさらに強くしたと語る。
「どんなレースでも2着に何度か入ると、勝てるはずだと考え始めます。少し運が悪かっただけだと」
「メルボルンCは他のレースとは違う。レースに出て、翌日には、あの有名なレースの勝者として有名になって帰国するかもしれない。何も人生を変えるために競馬に勝つ必要はないが、メルボルンCに勝てば、人生は変わると思います」
オーストラリアで尊敬されていないと感じるかと問うと、モレイラ騎手は「少なくとも、人々は私をより尊敬してくれるはずです。さらに尊敬してくれると思います。夢を叶えるようなものです」と補足した。
「重要な人々は私を尊敬してくれていると思います。しかし重要なのは、彼らが私に与えてくれた場に応えたいということです。彼らが私をスターのように扱おうとしますが、私自身はそうは思っていない。しかし、このレースに勝てば、私に示された信頼に応えられたと感じられるでしょう」

モレイラは、メルボルンCは文化的な影響力だけでなく、24頭立てのレースゆえの展開と戦術的な繊細さが、独特な難しさを生み出していると語る。
「こんなレースは他にないと思いますよ。レース中、両側にたくさんの馬がいるんです。古い戦争映画や西部劇で、馬が横一列に並んで突撃するシーンがあるでしょう?時々、馬に乗っている人の視点から横向きに撮影されたシーンがありますよね。初めて乗った時の感覚はまさにそれでした」
「興奮するし、たくさんの馬がいる。コースが大きいほど、進路妨害を受けたり、審議を受けたりする可能性が高くなる。あまり良くない馬が邪魔をして、前に行くはずが後ろに下がってしまうこともあります」
「だから、より戦術的なレースになるんです。良い馬の後ろに付けるようにする必要があるからです。レースに勝つには良い馬が必要ですが、最も良い馬が必ずしも勝つわけではない。運も必要で、私は運が悪かったんですよ」
一部の著名な評論家は、モレイラ騎手の自己評価に同意しないだろう。オーストラリアでの彼の成績は優れているものの、敗戦時の騎乗は激しい議論の的となることがある。メルボルンCでの騎乗について詳しく尋ねると、「ソウルコムのことを聞きたいんでしょう?」と彼は言い、先手を打って答えた。
「まず、彼のスタートを改善するために、許される限りのことは全てやりました」

ソウルコムの出遅れは予想が付いたことだったが、批判は直線での判断に集中した。まず、勝者のウィズアウトアファイトの後ろに付いていなかったこと、次に、内ではなく外を選んだことだ。モレイラ騎手は、これらの批判は後知恵からくるものだと示唆した。
「その時その状況下で下した判断を後悔してはいません。あの判断は間違っていたか?おそらくそうでしょう。可能性は高い。でも、それを今になって言うのは簡単です」
「レースを見たことのない人に、1200m地点と700m地点で映像を止めて『さあ、ここでどうするべき?』と聞いてみたら、10人中8人は外に向かうと思いますよ。なぜなら、ペースが速かったし、前の馬は疲れ始めて、そのうちの何頭かが邪魔をしてレースを台無しにする可能性があったからです」
モレイラ騎手は火曜日のレースに向けて前を向きたいと語った。
「2着に終わったことを落胆したままでいることはできないし、その感情を今回のレースに持ち込むわけにはいかないんです」
「実際、そんなことはしてません。もちろん当日は少し落ち込みましたが、前に進まなければならないんです。それは絶対に今の判断に影響を与えることはないです」
「今回のレースも直感を信じて騎乗するつもりです。考えすぎたり、分析しすぎたりするのは好きではないんです。去年の判断が、今年は正解になるかもしれない。私に任せてほしい。経験があるからです。直感を信じているし、必要な判断は自分でする。それが正しい判断になるのか?それは、見守っていてほしいですね」