Aa Aa Aa

フェラリスは、ダグラス・ホワイト、ブレット・プレブル、ザック・パートン、ジョアン・モレイラといった名騎手たちがアパート周辺を行き交うのを目にしていた。しかし、子供たちはレース当日に競馬場に入ることを許されておらず、フェラリスはコースの外ラチから数メートルの場所に設置された緑色のフェンスの上に座っていつもレースを観戦していた。

先週の水曜日の夜遅く、22歳という若さで香港通算100勝を挙げたフェラリス騎手は、かつて自分が子供の頃に座っていたそのフェンスのそばに立ち、自らの目標達成について振り返った。

今、香港競馬という熾烈な戦いの場を知っている状態だとして、あのフェンスにいた子供時代の自分に何を伝えたいだろうか?

「子供の目で見ていると、競馬はもっとシンプルに見えました。でも、その一部になり、馬に乗せてもらえたり逆に降ろされたりといった山あり谷ありを経験すると、香港競馬がいかにジェットコースターのようなものかが分かります」

Ferraris celebrating his 100th winner aboard Mojave Desert
LUKE FERRARIS, MOJAVE DESERT / Sha Tin // 2024 /// Photo by HKJC

フェラリスは競馬場に隣接するアパート群で育った多くの若い騎手の一人だ。彼の親しい友人には、トム・プレブル(ブレットの息子)やキャンベル・ローウィラー(ナッシュ・ローウィラーの息子)がいる。彼らはオーストラリアで活躍しており、ほかにもG1勝ち鞍を持つチャド・スコフィールド(グリン・スコフィールドの息子)や、スター見習騎手の兄弟ザックとジェイデン・ロイド(ジェフ・ロイドの息子)も同じアパート群出身だ。

フェラリスはフェンスに座ってレースを見ていた少年だった後、母国である南アフリカに戻り、二度の見習騎手チャンピオン、G1を6勝、さらに史上4人しか達成していない南アフリカ三冠を10代のうちに制覇するという輝かしい経歴を築き上げた。

こうした実績を引っさげ、19歳のフェラリスが約3年前にシャティンという『第二の故郷』に戻ったとき、すぐに成功が約束されているようにも見えた。しかし実際には、20勝、35勝、28勝と苦しい日々も味わった。

「振り返ると、それは自分にとって必要なことだったのかもしれません。精神的に強くなる必要があったからです」とフェラリスはスランプについて語る。

「他の国では勝てない日があっても、翌日には別の競馬場でレースができます。でも香港では、悪い日があると次のレース日までそのまま向き合わなければなりません。数日後には次のレースがありますが、その間にできることは何もありません。他の場所で勝ち星を挙げて切り替えることもできないんです」

「香港でのこうした不調がなければ、自分からトレーナーに電話をかけたり、新しい関係を築いたりといった行動を起こすことはなかったかもしれません。それが自分の中の情熱に再び火をつけるきっかけになったと思います」

Ferraris after winning Tourbillion Prince
LUKE FERRARIS, TOURBILLION PRINCE / Sha Tin // 2024 /// Photo by HKJC

今シーズン、フェラリスの競争心は確実に燃え上がっている。シーズンの約3分の1が過ぎた段階でキャリアベストを目指せる勢いだ。現在17勝を挙げ、騎手リーディングでは単独4位につけている。その成功の中心にいるのが、2年目のマーク・ニューナム調教師だ。ニューナムとは香港での通算100勝のうち21勝を共にし、今季も9勝を挙げている。その記念すべき100勝目は、モハーヴェデザートで達成された。

ニューナムは2023年9月に香港での調教師キャリアを開始する前から香港競馬を熱心に観察しており、バリアトライアルを見ている中でフェラリスが平均以上のスタートの巧さを持っていることに気づいた。

「その馬が前で競馬をするかどうかにかかわらず、スタートでの優位性は非常に大きい」とニューナムは付け加えた。

フェラリスとの連携の機会が訪れたとき、ニューナムはレース以外の面でも密に連携できる人物を見つけた。

「オーストラリアでは、少人数の騎手と密接に連携する方が自分の厩舎ではうまく機能していました」とニューナムは語る。

「ルークはまだ若く、騎乗技術において多くの成長の余地があり、改善を継続的に進めていると思います。長期的に見れば、それは私にとって非常に魅力的です」

「ザック(パートン)やヒュー(ボウマン)も私の馬に乗ってくれますが、トップ2の騎手を常に確保するのは難しいです。ルークは必要な安定性を提供してくれる存在です。調教からトライアル、そしてレースまで、一貫したサポートを得られることで結果に繋がっています」

フェラリスも、香港で台頭している調教師の一人であるニューナムとのパートナーシップの長期的な利点をしっかり理解しているようだ。

「勝利を挙げることで感謝の気持ちを返せる以上の喜びはありません。マークは香港でさらに成長し、成功を収めると思います。その関係を築き上げることは非常に重要です」

David Ferraris with his son Luke
DAVID FERRARIS, LUKE FERRARIS / Sha Tin // 2010 /// Photo by HKJC

香港での特異な幼少期を送ったからこそ、フェラリスは競馬シーンのベテランのような賢明な言葉を口にするのかもしれない。また、その数々の実績により、彼が香港の騎手の中で最年少であることを忘れがちなのかもしれない。

全体的に見ると、シャティン競馬場で常に自分の居場所があると感じているフェラリスだが、彼の真の全盛期はこれから訪れるという期待感が漂っている。

「100勝を達成したことはかなり誇りに思っています」とフェラリスは語る。

「特にここで育ち、この舞台を見てきて、今ではその一員になれたことが本当に嬉しいです。ずっと香港で成功したいと思っていましたが、香港は見た目よりもはるかに厳しい場所です。19歳でここに来ましたが、それはかなり若い年齢だと思います。この長い間やり抜けたことも一つの成果ですが、さらに成功を収められたことは自分にとって大きな達成です。次の100勝を目指して頑張りたいと思っています」

次の100勝は控えめな目標に見えるかもしれないが、過去3年間の経験がフェラリスを現実的な考えに基づいた土台に立たせている。

「香港では誰もがこの環境の厳しさを理解しています。それが重荷になりすぎると、フェンスの上で夢を見ていた子供時代の情熱が失われてしまうかもしれません。でも勝利を重ねれば、その情熱は燃え続けます。それを絶やさないように頑張りたいと思います」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

マイケル・コックスの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録