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偉大な王者は勝負から逃げない。必要とあればどこへでも赴き、自らが最強であることを証明する。今週、引退が発表されたばかりのロマンチックウォリアーはその道を往く一頭だった。そして今、カーインライジングがそれを見せている。

狭い視野で語る逆張り派の中には、カーインライジングは欧州を避けてきたと言う人もいるかもしれない。一方で、それがどうした、と言う人もいるだろう。

実際、カーインライジングに欧州は必要ない。香港競馬界が送り出した新たな、そして史上最高の名スプリンターは、すでに海を渡り、オーストラリアのトップスプリンターたちを相手の本拠地で破っている。それはロイヤルアスコット開催のクイーンエリザベス2世ジュビリーステークスを勝つよりも、はるかに価値がある。

シドニーで挙げたジ・エベレストの勝利、香港での圧倒的な強さ、刻んできたレコードタイム、打ち負かしてきた相手の質、そして余裕に満ちた勝ち方。カーインライジングが自らの偉大さを証明するには、これで十分だ。

同馬の主戦を務めるザック・パートン騎手もまた、Idol Horseの取材に対し、同様の見方を示した。

「私が香港競馬に来てから、ここで見てきた馬のなかでは、カーインライジングが恐らく最高の馬です。ゴールデンシックスティやロマンチックウォリアーがいたことを考えれば、そう言うことには大きな意味があります」

しかし、カーインライジングは勝利を重ね、今度の日曜日にシャティン競馬場で迎える休み明け初戦も、単勝オッズはまた1.05倍になるだろう。その一方で、香港のほかのスプリンターたちは、「鬼の居ぬ間」を狙うしかない。

構図ははっきりしている。香港でG1級の力を持つスプリンターが勝利を望むなら、海外行きの飛行機を予約することだ。

20年以上前、サイレントウィットネスが王座に君臨していた時代も同じだった。ケープオブグッドホープの陣営は、早々と矛先を切り替えて海外へ向かい、イギリスとオーストラリアでG1勝利を手にした。それに加えて、海外で6度の3着以内も記録している。

そして今週末、カーインライジングが出走する頃、ファストネットワークは日本で『ケープオブグッドホープ二世』になることを目指す。歯が立たない王者を避けて海を渡り、相手関係が楽になるとみられるG2・セントウルステークスに狙いを定めた。その後は中山競馬場のG1・スプリンターズステークスへ向かう。

メルボルンを拠点とし、日本競馬でも実績を残しているダミアン・レーン騎手は、この機会を逃さなかった。ファストネットワークを管理するデニス・イップ調教師に自ら連絡を取り、2戦とも騎乗することになった。

「このクラスでこの馬に騎乗できるのを楽しみにしています」とレーンは今週、Idol Horseの取材に話した。

「日曜日に対戦する相手は、カーインライジングに比べるとしたら、かなり楽になります。今年は特に、日本のスプリンターの層はかなり薄いと言ってよいと思います」

「この秋はサトノレーヴが日本にいませんし、この2年ほどは恐らく日本で一番のスプリンターだったと思います。その不在で、ほかの馬にもチャンスが広がります」

「ファストネットワークを遠征させるには良い年を選んだと思いますし、この馬にとって良い機会になってくれればと思います」

Fast Network ran third behind Ka Ying Rising in the G1 Hong Kong Sprint
KA YING RISING, FAST NETWORK / G1 Hong Kong Sprint // Sha Tin /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

日本国外の競馬ファンに日本の一流スプリンターを挙げてほしいと尋ねても、ロードカナロアと、欧州での活躍によって今やその名を知られるサトノレーヴ以外を答えられる人は少ないかもしれない。

サトノレーヴが国外へ向かったのは、王者を避けるためではない。シャティンには4度も遠征し、そのたびにカーインライジングに完敗している。問題は、現実的な選択肢となるレースが少ないことだ。

日本競馬界はそもそもスピードを重視しておらず、競馬のシステム全体が、中距離で活躍する馬を軸に組み立てられている。G1レースを番組に詰め込みすぎず、全体の質を守っていることは、日本競馬の長所のひとつだ。しかし残念ながら、それが短距離路線の選択肢を限ってもいる。

日本の全24のG1のうち、スプリント戦はわずか2つ。どちらも1200mで、春は左回りの高松宮記念、秋は右回りのスプリンターズステークスだ。

サトノレーヴは、スプリンターズステークスが行われる中山競馬場のコースを明らかに苦手としている。それが今年の長期遠征の大きな要因だ。国内にはほかの選択肢がない。

日本のトップスプリンターのなかには、ほかに活路を見いだせず、短距離に行き着いた馬もいる。長い距離では期待に応えられず、距離を短縮してきた馬たちだ。マイルから距離を短縮し、日曜日の有力候補とみられている3歳馬のダイヤモンドノットも、その一例である。

レーンはセントウルSの相手関係について、「ダイヤモンドノットのような若い馬、力をつけてきている馬たちの方が、注目すべき存在になると思います」と見解を述べる。

「4歳馬のフリッカージャブは11戦6勝と好成績を重ねていますし、今年5歳馬のピューロマジックも最近はとても良い走りをしています」

とはいえ、カーインライジングを避けたからといって、勝利が保証されるわけではない。この夏に3度敗れたサトノレーヴが、そのことを身をもって知っている。

「輸送もありますから、やはり簡単な挑戦ではありません。ファストネットワークは検疫施設での滞在を経て、競馬場へ移動しなければなりませんでした。移動を重ねてきたので、それをどうこなしてきたか、状態を見て確かめたいですね」

レーンは抱負を語るとともに、阪神競馬場のコースは、ファストネットワークにとって特に問題にはならないだろうと見解を示した。

有力馬が手薄な日本の短距離路線は、ファストネットワークが輝くには、絶好の舞台なのかもしれない。そしてこの馬が輝けば、カーインライジングの強さもさらに際立つことになる。もっとも、あの王者にとってはそれすらも関係ないのかもしれないが。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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