Aa Aa Aa

カーインライジングが土曜のジ・エベレストで2度目の優勝を果たせば、次の海外遠征先を尋ねる声がすぐに上がるだろう。その筆頭に挙がるのはロイヤルアスコット開催だ。

私の答えは、「なぜ行く必要があるのか」だ。デヴィッド・ヘイズ調教師はすでにIdol Horseの取材に、英国遠征は「可能性はありますが、おそらく実現しないでしょう」と話している。

そして、ジ・エベレストがなければ、アスコットへの遠征のは「迷うまでもない選択」とも語った。「シルクハットも燕尾服も持っていますし、ぜひ行きたいですよ」とまで言っている。

しかし、今はジ・エベレストが存在する。ヘイズ師が言うように、「この馬も私もオーストラリアから来ているから、私は常にジ・エベレストを優先する」ということだ。

ロイヤルアスコット開催は通常6月に行われる。そこから地元香港へ戻り、休養を取ったうえで、10月半ばには再び走れる状態に仕上げなければならない。そのスケジュールは現実的ではない。

おそらく、これまでうまくいっている1シーズン8戦のローテーションを続けるだろう。ヘイズ師も「昨シーズンのローテーションをそのまま踏襲します」と話している。変える必要がどこにあるのか。月曜には、この馬は「昨年より10%良くなっている」との見解を示した。

スプリンターにとって大切なのは、長く現役を続けることだ。短距離での走りは馬体への負担が大きい。

ブラックキャビアは25戦、ロードカナロアは19戦、ヴェインは14戦だった。サイレントウィットネスは29戦まで走ったが、最初の20戦で18勝を挙げ、その後の9戦では一度も勝てなかった。

カーインライジングはここまで24戦を走り、今まさに全盛期にある。もし私の馬だとしたら、できる限り長く現役を続けさせたい。

海外遠征を経て、別の馬のようになって帰ってきた例を、私は数多く見てきた。サイレントウィットネスが日本のスプリンターズステークスを勝った後、トニー・クルーズ調教師はIdol Horseに、帰国した同馬は見た目からして以前とは違う馬になっていたと話している。その後、二度と勝つことはなかった。

ヘイズ師自身が言うように、遠征には毎回リスクが伴う。これほど規格外の馬に巡り合ったら、リスクを負わせることは何であれ避ける、とも話していた。私も全面的に同意する。

ロマンチックウォリアーは海外遠征をまったく苦にしなかった。それだけ並外れた馬だったということだ。

しかし、サイレントウィットネスも能力ではまったく引けを取らなかったのに、海外遠征で競走生活が台無しになってしまった。影響を受けなかった馬もいれば、受けた馬もいる。

また、賞金の問題もある。香港スプリントでカーインライジングの2着に入れば、588万香港ドル(約1億1900万円)を獲得できる。キングチャールズ3世ステークスの優勝賞金を上回り、クイーンエリザベス2世ジュビリーステークスの優勝賞金とほぼ同額だ。

香港スプリントは4着でも、キングチャールズ3世ステークスの2着より賞金が高い。昨年の香港国際競走で行われた4つのG1の賞金総額は1億3000万香港ドル(約26億2200万円)で、ロイヤルアスコットの全35競走を合わせた額よりも多かった。

ヘリオスエクスプレスを見れば分かる。G1未勝利ながら、シャティンでの出走だけで5000万香港ドル(約10億円)以上を稼いでいる。G1で5回2着に入り、そのたびに前にいたのはカーインライジングだった。今シーズン、香港でカーインライジングに勝てる馬はいない。地元には、同馬が獲得できる賞金がこれほどあるのだ。

休養こそ大事なのに、なぜ時期も合わず賞金も少ない英国競馬へ、わざわざ連れていくのか。

世界中の人が、最高のスプリンター同士の対決を見たいというのなら、答えは簡単だ。12月の香港競馬へ来ればいい。問題は、誰もが怖がって馬を連れてこないことだ。

すべての名馬が道悪をこなすわけではない

土曜のシドニーが道悪になれば、カーインライジングにとってこれまでで最大の試練になる。

私はめったに馬をチャンピオンとは呼ばない。その言葉があまりにも安易に使われているからだ。しかし、この馬については誰よりも早くそう呼んでいた。私の大好きな馬の1頭であり、これまで見てきた競走馬の中でも最高の部類に入る。それでも、ひどい道悪になれば敗れる可能性があると思う。

どんな名馬でも道悪をこなせるわけではない。私はレッツイロープに騎乗し、コーフィールドの道悪で12頭立て10着に敗れたとき、それを思い知らされた。文字通り、まったく走れなかった。その後の4戦ではターンブルステークス、コーフィールドカップ、マッキノンステークス、メルボルンカップを勝った。いずれも乾いた速い馬場での勝利だった。

カーインライジングの主要なライバルであるテンプテッドは道悪が得意だ。先週のバリアトライアル後にも述べたように、カーインライジングも道悪を得意とするかどうか、私は確信が持てない。ひどい道悪でレースを走ったことは一度もない。

デヴィッド・ヘイズ調教師は月曜、同馬を購入する前に、オーストラリアのかなり深い道悪でバリアトライアルを勝つ姿を見たと話した。「バリアトライアルにすぎませんでしたが、私にはかなり良く見えました」と語っている。

ヘイズ師は、競馬界でも指折りの楽観主義者だ。それは競馬にとって素晴らしいことだ。しかし、バリアトライアルとレースは違う。ヘイズ師でさえ、道悪になれば自信は薄れると認めている。

道悪で2、3馬身差をつけて勝っても、私は驚かない。それほど強い馬だからだ。テンプテッドに負けても、やはり驚かない。

Zac Purton and David Hayes at Randwick for Ka Ying Rising's trial
ZAC PURTON (L), DAVID HAYES / Randwick // 2026 /// Photo by HKJC

シーザアリバイに騎乗したノレン騎手に落ち度はない

先週末のG1・マイトアンドパワーステークスで、シーザアリバイに騎乗したルーク・ノレン騎手の乗り方への批判は、非常に不当だと思う。批判している人たちは、大レースでどう乗るべきかを分かっていない。

6頭立てで、メンバーを見る限りペースはそれほど上がりそうになかった。シーザアリバイはマイルから初めて2000mへ距離を延ばすところで、その点は騎手の頭の片隅にある。

少頭数なら、負かすべき相手に集中すればいい。その相手が1頭いるとすれば、バードマンだった。ノレンはその後ろにつけた。

ランドレジェンドとキングスウッドが前で抜け出しても、行かせておけばいい。いずれ止まると考えるからだ。区間タイムを見れば、飛ばしすぎていると思えるペースだった。過去の走りにも、そのまま粘り込めると思わせるものはなかった。

2024年のG1・クイーンエリザベスステークスで、プライドオブジェニが大きく引き離したのに、誰も追いかけなかったケースとは違う。あのときは騎手たちに責任がある。過去の走りから、そのまま押し切る可能性があると分かっていたからだ。あれはまったく愚かな判断だった。しかし、今回は違う。

ランドレジェンドのペースは、コースレコードを更新するほど速かった。200mごとのラップで7区間連続して12秒を切り、残り1000mの地点で、シーザアリバイは約2秒、およそ11馬身後ろにいた。シーザアリバイは最後の1000mを57.74秒、最後の600mを35.34秒で走り、アタマ差で敗れた。

ノレンがもっと前につけて先頭の2頭を追いかけていたら、あれほどの末脚は使えなかったかもしれないし、相当に厳しい競馬になっていただろう。ノレンにはまったく落ち度がなかった。落ち度があれば、私はもちろん指摘する。

LAND LEGEND, SHEZA ALIBI / G1 Might And Power Stakes // Caulfield /// 2026 //// Video by @7horseracing (X)

私が疑問に思うのは、そもそもなぜこのレースに出走したのかということだ。

今春の最大の目標は、10月31日にランドウィックの1500mで行われる、賞金総額1000万豪ドル(約11億円)のゴールデンイーグルだ。ピーター・ムーディー調教師は、マイルから2000mへ距離を延ばした。

そして今度は、3週間後に1500mへ戻さなければならない。私は調教師ではないが、理想的な調整過程ではないことは誰でも分かるだろう。

陣営が、ペースが上がらず楽な競馬になると考えていたのは明らかだ。それが裏目に出た。ムーディー師自身も「おそらく、私が望んでいた以上に厳しい競馬になりました」と話している。

ゴールデンイーグルの前売りでは、今も2倍を切るオッズがついている。ベストの走りを再現すれば勝つだろう。それほどの馬だ。しかし、先週土曜のレースで多少は消耗したのだろうし、今は不安が残る。

多くの問いが待ち受けるシャティントロフィー

10月19日(月)のG2・シャティントロフィーは好メンバーがそろう一戦で、12月のG1・香港マイルへ向けた重要な前哨戦の1つだ。ただし、ハンデ戦であることを忘れてはいけない。香港国際競走当日は同斤量で戦うので、その違いを踏まえて今回の内容を評価する必要がある。

ヴォイッジバブルは、これまで5回の休み明け初戦で一度も勝っておらず、今回は135ポンド(約61.2kg)を背負う。ここでどんな走りをするか見てみたい。

マイウィッシュは過去2シーズン、いずれも休み明け初戦を勝っているが、今回は斤量が増えて131ポンド(約59.4kg)だ。昨年このレースを勝ったときは、最軽量の115ポンド(約52.2kg)だった。

2026年の香港ダービーを制したインビンシブルアイビスは、ここまで申し分のない走りを見せている。

休み明けのG3戦での勝利は好内容だった。マイルは合うし、後方で脚をためて追い込んでくるだろう。休み明け初戦は走っても、2戦目はそれほどでもない馬もいる。しかし、これまでの2シーズンを見ると、この馬の休み明け2戦目は初戦と同等か、それ以上の走りだった。

そして、スカイジュエリーはこのレースで大きな注目を集める一頭だ。

ハンデ上は本来より7ポンド(約3.2kg)重い斤量を背負うことになる。レーティングに基づけば108ポンド(約49kg)だが、実際には香港競馬の最低斤量である115ポンド(約52.2kg)を背負う。才能は非常に豊かだ。ようやく必要なレーティングに達し、今はこの路線の新たな顔となっている。

ここまで来るのには長い時間がかかった。昨シーズンの香港4歳クラシックシリーズでは有力候補の1頭だったが、アクシデントで出走がかなわなかった。それでも復帰後は、力強い走りを何度か見せている。

ここが試金石だ。115ポンド(約52.2kg)という軽斤量でも通用しないのなら、香港国際競走当日に同斤量で戦うのは厳しくなってくる

ヘリオスエクスプレスは、2024年に香港クラシックマイルを勝った距離、マイルに戻る点が興味深い。

先日の1400m戦は悪くなかったものの、素晴らしいというほどではなかった。ただ、135ポンド(約61.2kg)を背負い、インビンシブルアイビスより8ポンド(約3.6kg)重かった。2頭は今回は同斤量で再戦する。もともとバリアトライアルではあまり走らない馬なので、そこでの内容は気にしなくていい。

ストーミーグローブは、距離が短すぎた休み明けの1400m戦で非常に良い走りを見せた。マイルに延びるのはプラスだ。

多くの馬にチャンスがある好メンバーの一戦で、12月13日のG1・香港マイルで誰が有力候補になるのか、その勢力図が見えてくるだろう。

しかし、香港国際競走当日にこれらすべてを負かすかもしれない馬は、今、地元の馬房で休んでいる。ギャラクシーパッチだ。ブレット・クロフォード調教師は月曜の出走を見送り、11月22日のG2・ジョッキークラブマイルと、その後の12月の大目標に向けて、フレッシュな状態を保つことを選んだ。この判断が実を結ぶかもしれない。

シェーン・ダイ、Idol Horseのコラムニスト。 オーストラリアとニュージーランドで競馬殿堂入りを果たし、1989年のメルボルンカップ(タウリフィック)、1995年のコックスプレート(オクタゴナル)では名勝負を演じた、G1・通算93勝の元レジェンドジョッキー。また、香港競馬では8年間騎乗し、通算で382勝を挙げている。

シェーン・ダイの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録