カーインライジングのジ・エベレスト連覇に向けた戦いが、金曜日のシャティン競馬場で本格的に始まった。
香港の短距離王者はバリアトライアルを楽々と9馬身差で制したが、ザック・パートン騎手の胸には、1年前にも悩まされたのと同じ懸念が残った。手前を替えなかったのだ。
競馬に詳しくない方のために説明すると、馬の「手前」とは、ギャロップの各完歩でどちらの前脚が先に地面を捉え、より前へ伸びるかを示すもの。つまり、馬がどちらの脚を先に出して走っているかということだ。
馬は通常、バランスを取るためコーナーでは内側の脚を手前にし、最後の直線へ向いてから反対の脚へ切り替える。そうすることで、まだ疲れていない筋肉を使ってラストスパートを繰り出せる。
手前を替えられない馬は、コーナーから直線に入ったときの手前のままゴールを目指すことになる。その結果、ストライドが短くなったり、追われた際に内外へもたれたりして、カーインライジングの無類の強さを支えてきた爆発的な加速力が鈍る可能性がある。
「今回も以前と同じ走りでした」とパートンはIdol Horseの取材に答えた。
「走り出してリズムに乗ってからも、今回も手前を替えようとする様子があまり見られませんでした。少しもどかしいですね。ただ実戦の感覚を取り戻しさえすればいいのかは、これから分かるでしょう」
「ただ、こればかりは本当にもどかしいです。昨年はジ・エベレスト以降、あれほど良かったのですから」
「いつも手前を替え、自分が何をすべきか完璧に理解していて、実に見事でした。それだけに、今朝また同じような走りをしたのは本当に歯がゆいです」
カーインライジングは9月6日のシーズン開幕日に行われる、今年からG3に昇格した香港特区行政長官盃で復帰する予定で、トップハンデの135ポンド(約61.2kg)を背負う見込みとなっている。
今回はオールウェザー1050mのバリアトライアルで6番ゲートから発馬すると、たちまち主導権を握り、後続を大きく引き離した。
着差は決定的だったものの、トライアルの走破時計は前年より遅かった。昨年は14馬身1/4差で制し、時計は59秒26をマーク。今年は雨の影響でぬかるんだ馬場となり、1分1秒65を要した。
出走後の取材でパートンは、「レース勘が鈍っているのは分かっていました。まだ少し体ができておらず、動きにもいくらか鈍さがありました」と述べた。
「それでも内容はまずまずでした。馬場の一番良い部分を走れましたからね。外よりも内ラチ沿いの方がずっと良かったので、かなり走りやすいところを通れた面はありました」
パートンは昨年の同じバリアトライアル後にも、よく似た懸念を口にしていた。カーインライジングは逆手前のままコーナーを回り、直線でも手前を替えなかったが、それ以外の点では鞍上を満足させていた。
「つまり昨シーズンは、シーズンが進むにつれてどんどん良くなり、その一因が手前を替えるようになったことでした」とパートンは説明した。
「疲れていない方の脚に切り替えたとき、あの馬は爆発的な走りを見せ、難なく相手を退けていました」
「これほど高いレベルで走り、誰もが大きな期待を寄せる馬なのですから、きちんと手前を替えなければなりません」
デヴィッド・ヘイズ調教師は、10月のジ・エベレスト連覇へ向けて調整を進めるカーインライジングについて、「長期休養明けなら予想どおりですが、いい意味でしっかりと息が上がっていました」と述べた。
ヘイズ師によると、今後は8月30日(日)にシャティン競馬場で行われる香港ジョッキークラブのプレシーズンカーニバルで、もう一度バリアトライアルに臨む。
その後、ジ・エベレストまでの調整過程は昨年と同じにするが、今年シドニーでバリアトライアルへ出る際には、昨年ほど馬をフレッシュな状態にし過ぎない考えだ。
「初めての海外遠征を前に、前哨戦をコースレコードに迫るほどの素晴らしい時計で勝ちました。『よし、狙いどおりの状態に仕上がった』と思ったので、それほど強い調教を課しませんでした」とヘイズ師は振り返った。
「実際には、あまりに順調に仕上がり過ぎて、少し元気があり余った状態でシドニーへ到着しました」
「バリアトライアルでは少し元気が良過ぎて、始まる前にも多少落ち着きを欠きました。そのため今年はゆっくり長めに乗る調教をもう少し増やし、速い調教の内容にも少し手を加えて、シドニーでのバリアトライアル時に昨年ほどフレッシュにならないようにします」
「今年はおそらく、トライアルに向けてもう少し入念に仕上げることになるでしょう。単純に、昨年のような騒ぎはもう避けたいからです。すべて順調だったのに、バリアトライアルで勝てなかったというだけで大騒ぎになりましたから」
金曜日に行われたバリアトライアルは、10月にロイヤルランドウィック競馬場で行われるジ・エベレストを軸とした戦いに向けた、静かな第一歩だった。その後は11月に香港ジョッキークラブの中国本土拠点である従化競馬場でレースに出走し、G1・香港スプリント3連覇を目指すとみられる。
先ごろ6歳になったカーインライジングは、香港記録の20連勝を引っ提げて新シーズンを迎える。それまでサイレントウィットネスが長く保持していた記録を塗り替え、2年以上にわたって無敗を続けてきた。この快進撃により、ロンジン・ワールドベストレースホースランキングの首位に立ち、世界最高レーティングのスプリンターとなっている。