ダリズは日曜のG1・凱旋門賞で、牡馬として48年間誰も成し遂げていないことに挑む。
それは凱旋門賞の連覇だ。実現すれば、アガ・カーン・スタッドの自家生産馬は、凱旋門賞を連覇した数少ない名馬の一頭となる。だが、そもそも異例ずくめなのが、ダリズという馬だ。
昨年、アガ・カーンの象徴である緑の勝負服に凱旋門賞の栄冠をもたらした時、故アガ・カーン殿下の所有馬を長年見てきた人なら、これで競走生活は終わりだと考えたはずだ。
父にシーザスターズを持つ3歳牡馬なら、直ちに種牡馬入りするのが当然と思われた。
そうしない理由があるだろうか。この勝負服で凱旋門賞を制しながら、3歳限りで引退しなかった牡馬を挙げてみてほしい。1頭もいないのだ。シンダー、ダラカニ、さらには牝馬のザルカヴァやアキーダまで、4歳でも走ってどれほどの馬になり得たかを世界に示すことなく、いずれも繁殖入りした。
しかし、ダリズは違った。ザラ・アガ・カーン王女と、フランシス=アンリ・グラファール調教師、レーシングマネージャーのネモネ・ルース氏らのチームは、それまでの流れを変える新たな視点を持っていた。
「私たちにとって新たな挑戦です。凱旋門賞を数日後に控え、ダリズとこうして臨めること自体、私たちには初めての経験です」と、レーシングマネージャーのルース氏は語った。
「現役を続けるべきだと全員の意見が一致しました。満場一致で、決断は比較的容易でした」
「もともと大柄で、遅生まれでもあり、昨年いっぱいをかけてようやく十分に成熟したと感じていました。ですから、急いで種牡馬入りさせるのは惜しいと思ったのです」
昨年、英オークス馬ミニーホークをアタマ差で退け、2頭が後続を大きく引き離して凱旋門賞を制したダリズ。そのシーズンは開幕4連勝で始まり、その後は厳しい経験を積む時期に入った。
ヨークのG1・英インターナショナルステークスで敗れ、プランスドランジュ賞では当時の日本の3歳スター、クロワデュノールにわずかアタマ差で屈した。重い馬場での凱旋門賞制覇は、ダリズが晩成型でスタミナに秀でたフランス調教馬だという見方に、合致しているように映った。
同馬を管理するグラファール師は、「ダリズは良馬場の2000mが合い、強烈な瞬発力を持つ馬だと思っています。2400mの重い馬場で凱旋門賞を勝てたのは、この馬が非常に強いからに他なりません」と説明する。
ルース氏個人としては、4歳になったダリズにそうした別の面を示す機会を与えたのは正しい判断だったと考えている。
「良い決断でした。ダリズが重い馬場の2400mだけの馬ではないことを、皆さんに見てもらえたと思います」
「2000m、さらにはもう少し短い距離でもG1を勝てる力があります。素晴らしい瞬発力があり、どんな馬場にも対応できます」

ダリズの今年の種牡馬入りが見送られたことは、生産界にとっては損失でも、競馬ファンとグラファール厩舎にとっては大きな恩恵となった。春には2100mと1850mで見事な勝利を2つ挙げ、真の王者へ育ちつつあることを示した。
だが、4歳馬としてのダリズを鍛え上げる取り組みは、冬に始まっていた。グラファール師はそこで、難しい決断を迫られた。
「冬の間に気性の強さがかなり前面に出てきたため、朝の調教で騎乗する担当者を替えるという難しい決断をしました」とグラファール師は説明する。
「ダリズをあまり好き勝手にさせない、非常に経験豊富な乗り手に任せました。ダリズの意識を調教へ向けさせることが、とても重要だったと思います」
その役目を託されたのがジャン=フィリップ・ブレスラー調教助手だ。グラファール師とは、アラン・ドロワイエデュプレ厩舎で働いていた時代からの知り合いである。
ブレスラー助手は昨年、長年にわたり競馬へ尽くしてきた功績により、フランスのゴドルフィン・スタッド&ステーブル・スタッフ・アワードで「競馬への献身」部門を受賞した。
グラファール師は、担当助手の変更という決断について、「不安はありました。冬場は調教のペースを落とさなければならず、その分、馬が力を持て余して気持ちを高ぶらせることもあるので、難しい時期です。それでも、手に負えなくなるとは一度も思いませんでした」と振り返る。
「ただ、ご想像の通り、これまで良い仕事をしてきた調教助手を担当馬から外すのは、辛く、難しい決断でした。その担当者と凱旋門賞を勝ったばかりだったのですから」
しかし、成長と成熟の途上にあり、ホルモンと力がみなぎる扱いの難しい牡馬には、冷静な判断力と熟練した技術が必要だった。
「彼は素晴らしいスタッフで、騎乗技術が高く、経験も豊富です。馬をたしなめるべき時には、そうしなければなりません。特にこういうタイプの馬ではそうですし、彼はその扱い方を知っています。このような馬には重要なことです。担当を替えると、すぐに流れが変わりました」
春先にG1・ガネー賞とG1・アガカーン4世賞を勝ち、ロイヤルアスコット開催のG1・プリンスオブウェールズステークスに向けて期待が高まったが、ダリズは3着に終わり、その期待に応えられなかった。
その後は休養を挟み、復帰戦となったG2・フォワ賞を好内容で勝利。凱旋門賞へ向けて上々の前哨戦となった。
牡馬による凱旋門賞連覇は、1978年にレスター・ピゴット騎手を背に成し遂げたアレッジドが最後だ。その前となると、リボーが勝利した1956年までさかのぼる。1951年のタンティエーム、1922年に連覇を果たしたクサールを含め、達成馬はこの4頭しかいない。まさに名馬だけが並ぶ顔ぶれだ。
アレッジド以降も、実力ある牡馬が何頭も挑み、敗れてきた。ワークフォースは2011年の連覇挑戦で12着。ハリケーンランは2006年3着、バゴは2005年3着、モンジューでさえ2000年は4着だった。エリシオは1997年の2勝目を狙って6着、カーネギーは1995年に6着に終わっている。
ルース氏は前々走の敗北について、「アスコットでは能力を出し切れませんでしたが、その理由は分かっています」と説明する。
「当日は本来の状態ではなかったにもかかわらず、まずまずの走りをしてくれました。私たちはダリズを王者だと思っていますが、まずは日曜の大一番を乗り越えなければなりません」
アガ・カーン・スタッドは成長著しい3歳馬、ヴァランディールも出走させる。グラファール師によれば、ダリズは朝の調教で目立つ動きを見せたり、良さを表に出したりするタイプではない。それでも火曜朝、シャンティイの調教場で先導役の馬を含む4頭の隊列に加わり、好調ぶりを示した。
「今朝の調教は順調でした。ダリズは最後方に控え、ミカエル・バルザローナ騎手を背に、実に良い手応えで伸びてきました」とグラファール師は語った。
「ミカエルも非常に満足しており、ダリズは今朝、活気にあふれ、走る意欲も十分だったと報告してくれました。調教後の息遣いもいつも通りでした。今朝の動きにはとても満足しています」
「馬体の迫力が際立つ馬で、トモが非常に強く、力があります。そこから強い加速力を生み出せます。だからこそ、状態が整い、流れやペースなどすべてがかみ合えば、おそらく私がこれまで手がけた中で最も強い馬になるのではないかと思っています」
凱旋門賞後のダリズの予定は、その後数日のうちに決まる。ルース氏は具体的な言及を避けたが、凱旋門賞後にも「海外で」走る選択肢があると明かした。
そうなれば、ブリーダーズカップとジャパンカップが本格的な検討対象となり、香港カップも選択肢に入るかもしれない。同馬の母馬、ダルヤカナの最大の勝利は、シャティン競馬場のG1・香港ヴァーズだった。
調教助手のブレスラー氏は当初、10月1日に引退する予定だった。しかし、凱旋門賞後まで延期した。
「ダリズが現役を続ける限り、自分も残ると言っていたと思います。ですから、ダリズが現役生活を終える時に、彼もキャリアを終えることになります」とルース氏は言う。
ダリズのファンがさらにもう1年の現役続行まで願うのは、望み過ぎかもしれない。だが、日曜に勝ち、最後に欧州から遠く離れた地でもう一戦して締めくくるなら、トップクラスの牡馬ができるだけ長く現役を続けることを必要としている競馬界にとって、これ以上ない贈り物となるだろう。