賭けが当たることもあれば、外れることもある。そして賭けには失敗しても、思いがけず有利なカードが手元に転がり込むこともある。ジェリー・チャウ騎手は今、まさにそんな状況にいる。
8月8日にアスコット競馬場で行われるシャーガーカップの先には、9月6日に韓国のソウル競馬場で行われるコリアカップ開催が待っている。そこでチャウは、香港から遠征するビューティーウェイヴスとロマンチックトールに騎乗する。
チャウがこれまでのキャリアで挙げた最大の勝利は昨年、韓国で香港馬のセルフインプルーブメントに騎乗し、G3・コリアスプリントを制したことだ。今回も同じ騙馬への騎乗を依頼されていたかもしれない。だが、日本の大レースで勝つというもう一つの夢を追って別馬を選ぶ賭けに出たところ、それが裏目に出た。
「デニス・イップ調教師がファストネットワークを日本へ遠征させたがっていると知り、現地で騎乗する機会をいただけないかとお願いしました」
チャウはIdol Horseの取材に経緯を明かす。
チャウは1月、従化で行われたバリアトライアルでファストネットワークに騎乗しており、日本競馬特有の速い流れが、G1入着実績を持つ同馬に合うと感じていた。
しかし、ファストネットワークが中山競馬場で行われるG1・スプリンターズステークスへ向けた前哨戦として出走するG2・セントウルステークスは、韓国の大レースと同じ日に行われる。
「一方で、セルフインプルーブメントのオーナーであるウォン氏と、マンフレッド・マン調教師からは、同馬が再び韓国へ行くと聞いていました。それでも、私はどうしても日本で騎乗したかったので、行けるかどうか分かるまで少し待たせてほしいと伝えました」
「デニス(イップ調教師)から、ファストネットワークにはダミアン・レーン騎手を確保したと聞きました。日本競馬での実績が豊富な騎手が選ばれた形でした」
「その報告が入った時には、マン厩舎のセルフインプルーブメントに乗るにはもう遅く、騎乗依頼は別の騎手へ渡っていました。そこで、ほかの遠征馬であるビューティーウェイヴスとロマンチックトールへの騎乗をお願いしました」
日本の大レースで騎乗し、新たな経験を積む機会は逃した。それでも、チャウは結果には満足している。
「韓国へ行くのが本当に楽しみです。ビューティーウェイヴスには十分チャンスがあると思っています。香港のオールウェザーコースでは1度レースに出ていますし、そこでのバリアトライアルでも非常に良い走りを見せています。ダートには対応できると思います」
「ただ、シャティン競馬場のオールウェザーコースと韓国の砂コースでは、馬場の質に少し違いがあります。左回りにも対応しなければならないので、同馬にとっては大きな挑戦です。それでも能力はありますし、こなしてくれることを願っています」
「前回、香港のハッピーバレー競馬場でロマンチックトールに騎乗した際、いかにもステイヤーらしいタイプだと感じました。1800mなら問題ないと思うので、コリアカップにも対応できるはずです。砂への馬場替わりが良い刺激になり、序盤からもう少しスピードに乗って、そのまま最後まで脚を持続できるかもしれません」
トニー・クルーズ調教師が管理するビューティーウェイヴスは香港のG3勝ち馬で、名スプリンターのカーインライジングをはじめ、現地のトップスプリンターたちと度々対戦してきた。
一方、ダニー・シャム調教師が管理するロマンチックトールは5月、シャティンの2400mで行われたG3・クイーンマザーメモリアルカップハンデキャップを制した。2年前にはライアン・ムーア騎手を背に、英国のチェスター競馬場でリステッド・ディーステークスにも勝っている。


チャウは8月8日、シャーガーカップの騎手対抗戦でムーアら名騎手たちと競うことになる。大会史上初の香港選抜には、ヴィンセント・ホー騎手、ルーク・フェラリス騎手とともに名を連ねた。ムーアの英愛選抜入りは、開催週に入ってから決まった。
「出場騎手のリストをずっと確認していました。ライアン・ムーア騎手がシャーガーカップに加わることになり、とても嬉しいです」
「ディラン・ブラウン・マクモナグル騎手の参加も同様に嬉しいです。彼は数カ月間香港で騎乗していたので、同じ開催で何度も一緒になりました。非常に才能のある若手で、力強く、とても頭の良い騎手です。2人と競えることを本当に楽しみにしています」
チャウにとっては、今回が初めての英国訪問となる。すでにロンドンで数日を過ごし、ビッグベンや国会議事堂などを巡り、巨大観覧車のロンドン・アイにも乗った。その後はアスコット初騎乗へ向けて気持ちを整えるため、イタリアのナポリで数日間ゆったりと過ごした。英国へ戻り、木曜夕方にアスコットへ到着する予定だ。
「アスコットのレース映像をたくさん見ています。大きな競馬場で、香港とはまったく違いますし、レースの流れも異なります」
「この大会の出場騎手になれることは、私にとって本当に素晴らしいことです。まさか自分が香港選抜の一員に選ばれるとは思ってもいませんでした」
「今はヴィンセント、私、ルークの3人で出場できることに、とても興奮しています。主将のヴィンセント(ホー騎手)が、以前ここで騎乗した経験を共有しながら私とルーク(フェラリス騎手)をうまくまとめ、チームを良い結果につなげてくれると思います」
アスコットのシャーガーカップで勝利を挙げられれば、現在26歳のチャウにとって、この夏の大きな収穫となる。
チャウは見習騎手時代に旋風を巻き起こした後、リーディング中位で苦闘する時期も経験した。しかし、昨シーズンは再び上昇気流に乗り、48勝を挙げて騎手リーディング5位にランクイン。香港出身のトップ騎手に贈られるトニー・クルーズ賞も受賞した。
「韓国で初めて海外の重賞を勝てたことで、自信を持って香港へ戻ることができました。各調教師に騎乗機会をお願いすると、皆さんが快くチャンスを与えてくれました。14人の調教師の管理馬で勝つことができ、本当にうれしく思っています。シーズンはかなり順調に進みました」
「それまでに積んでいた海外経験のおかげで、落ち着いて騎乗できるようになり、自信も深まりました。私は馬に乗るのが本当に好きですし、馬と関わる仕事も大好きです。ですから、レースに乗るたび、何かを学んでいます」
結果として手元にそろったカードに、チャウは満足している。アスコットでの騎乗と再度の韓国遠征が、香港でも世界の舞台でも、騎手としてのさらなる成長につながると信じている。