アルリファーは今秋、パリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞に挑戦する。鞍上には武豊騎手が起用されると報じられており、日本の競馬ファンも声援を送っている。

主なライバルとしては、注目を集める仏ダービー馬のルックドヴェガ、トップクラスの3歳牝馬であるオペラシンガー、日本から遠征するシンエンペラー、そして8月18日のG1・ジャンロマネ賞への出走を控える地元フランスのマルキーズドセヴィニエといった有力馬が挙げられる。

また、バリードイルのスター3歳馬シティオブトロイも登録している。この馬はアルリファーが2着に敗れたG1・エクリプスステークスの勝ち馬だ。

凱旋門賞の夢

先週末のG1・ベルリン大賞での圧勝は、凱旋門賞を見据えて2400mへの距離延長に挑戦した陣営の期待に応える勝利だった。この順調な滑り出しを受けて、ジョセフ・オブライエン調教師はこの距離でもトップクラスの馬になれると自信を深めている。

アルリファーはスピードに恵まれたウートンバセットの産駒である一方で、母系からはスタミナを受け継いでいる。3代母には名牝のマイエマを持ち、その半兄にはヨーロッパのチャンピオンステイヤーであるクラシッククリシェがいる。

ドイツでの5馬身差快勝は、武豊騎手の凱旋門賞制覇の夢を応援する共同オーナー、松島正昭氏にとっては嬉しい結果だった。このレースの直前にアルリファー・シンジケートから所有権の一部を購入し、共同馬主の一人に名を連ねている。

松島オーナーは以前から「武豊騎手の夢は私の夢」と語っており、オブライエン家やクールモアのパートナーたちもその思いを理解している。

グレーに格子模様で知られる松島オーナーの勝負服は、ヨーロッパではお馴染みの存在となっている。ここ5年ほど、クールモアとの共同所有という形で複数頭走らせており、その中でもG1馬のジャパンやブルームは有名だ。キーファーズ名義で走らせている日本では、日本ダービーと有馬記念を勝ったドウデュースが代表馬となっている。

Broome wins Dubai Gold Cup at Meydan
BROOME, RYAN MOORE / G2 Dubai Gold Cup // Meydan /// 2023 //// Photo by Christopher Pike
Do Deuce wins G1 Arima Kinen
DO DEUCE, YUTAKA TAKE / G1 Arima Kinen // Nakayama /// 2023 //// Photo by Shuhei Okada

彼がこれほど有名な馬主になった理由といえば、やはり伝説的な存在である武豊騎手との友情が挙げられる。武豊騎手は日本競馬の顔であり、日本史上最高の騎手として知られている。馬主になった理由も、武豊騎手から馬券に大金をつぎ込むなら馬を買えば良いのにと勧められたことがきっかけだったと、松島オーナーは明かしている。

セレクトセールで初めて購入した馬はミコラソンという馬で、馬主としての初勝利は2015年11月にラルクが勝った京都競馬場のレースだった。

なお、後に一口馬主クラブの『インゼル』を設立しているが、これはドイツ語で『島』を意味する言葉が由来となっている。キーファーズはドイツ語で『松』を意味するので、この2つを合わせると名字の『松島』が完成する。

66歳の松島オーナーは、長年の友人である武豊騎手の凱旋門賞制覇という夢を全力で応援すると表明している。日本の騎手、調教師、そして競走馬は何十年にも渡って挑戦し続けているが、未だかつてこの壁を乗り越えた者はいない。過去には、エルコンドルパサー、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴルといった日本馬があと一歩のところまで迫っている。

武豊騎手は1994年のホワイトマズルが初挑戦だったが、6着に敗れた際の騎乗はイギリスで猛批判を浴びた。これまでの10回の挑戦での最高着順は、後に失格となったディープインパクトでの3着を除けば、2001年のサガシティでの3着が最高となっている。

過去4回は2018年のクリンチャーが17着、2019年のソフトライトが6着、いずれも松島オーナーの所有馬となる2021年のブルームが11着、2022年のドウデュースは19着に終わっている。

Do Deuce G1 Prix de l'Arc de Triomphe
DO DEUCE, YUTAKA TAKE / G1 Prix de l’Arc de Triomphe // Longchamp /// 2022 //// Photo by Scoop Dyga

松島オーナーは自動車販売業を営むマツシマホールディングスを経営しており、武豊騎手と共同で『テイクフィジカルコンディショニングジム』を京都に設立している。

アルリファーが凱旋門賞に出走することになれば、武豊騎手は2歳シーズンにG1・ナショナルステークスを制した期待馬と初コンビを組むことになる。3歳時は怪我のため2走に留まったが、ドーヴィルのG2では前年凱旋門賞馬のエースインパクトを追い詰める2着に入っている。

今年はその輝きを徐々に取り戻しつつあり、4回の出走を経て成長し、トップレベルの競走馬に数えられるようになった。

ライバルの動向

凱旋門賞に向けてもう一頭調子を上げてきているのは、アンドレ・ファーブル厩舎の5歳馬、マルキーズドセヴィニエだ。フランスの名伯楽が育てたこの牝馬は、今シーズン3戦3勝の成績を残している。前走はG1・ロートシルト賞の連覇を達成し、日曜日にはドーヴィルのG1・ジャンロマネ賞でも連覇を目指す。

2100mを超える距離は未経験だが、オーナーのエドゥアール・ド・ロスチャイルド男爵は前走後のコメントで落ち着きが出てきたと語り、2400mへの距離延長にも耐えられると示唆している。今後の目標には凱旋門賞を見据えており、半兄のミアンドルはこの距離でG1を複数回勝っている。

ドーヴィル開催の先に目を向けると、イギリスではイボア・フェスティバルが開催される。ここでは、エイダン・オブライエン厩舎のシティオブトロイがG1・インターナショナルステークスに出走予定で、アルリファーにとってはライバル関係を占う一戦となる。なお、日本からはドゥレッツァも遠征する予定だ。

City Of Troy wins Eclipse Stakes
CITY OF TROY (L), AL RIFFA / G1 Eclipse Stakes // Sandown Park /// 2024 //// Photo by Alan Crowhurst

多くの評論家は、圧倒的な人気にも関わらずアルリファーを相手に1馬身差の苦戦を強いられた、エクリプスステークスでの勝利を懐疑的な目で見ている。しかし、層が薄い年が多いレースとはいえ、アルリファーはベルリン大賞で圧勝を見せた。特に、安定感のあるG3勝ち馬のベストオブリップスを10馬身突き放したパフォーマンスを見ると、その強さは確かなものであると考えられる。

一方、シティオブトロイの同厩馬であるオペラシンガーは、2週間前にグッドウッドでG1・ナッソーステークスを制している。G1・ヨークシャーオークスへの登録を残しているが、凱旋門賞を見据えてロンシャンのG1・ヴェルメイユ賞に向かう可能性はある。

しかし、武豊騎手と松島オーナーは衝撃のベルリン大賞を受けて、アルリファーが凱旋門賞の有力候補だと認識できただろう。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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