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土曜日、中山競馬場で行われた皐月賞。松山弘平騎手が、ロブチェンをレコードタイムでの逃げ切り勝ちに導き、2週連続となるG1制覇を成し遂げた。想定外のハイペースに加え、レース中には落鉄というアクシデントもあったが、リアライズシリウスを3/4馬身差で抑え込む逃走劇を完遂。次走には、5月31日の日本ダービーを見据えている。

松山にとって、それは7日前と同じジェスチャーだった。右手の人差し指を1本、高く掲げるポーズ。先週、阪神競馬場の桜花賞をスターアニスで制した松山騎手は、日曜日の中山競馬場でまたもや、ロブチェンとともに皐月賞のタイトルを手にした。

ロブチェンとの圧倒的な逃走劇の後、松山は記者団を前に「まずは1冠目ということで、このポーズをさせていただきました」とその意図を説明。

これで牡馬・牝馬クラシックの初戦を共に制したことになるが、高々と掲げられたその指は、今週も変わることはなかった。

ロブチェンは、前走のG3・共同通信杯で敗れたリアライズシリウスを3/4馬身差で下し、2度目のG1制覇を成し遂げた。勝ちタイムの1分56秒5は、これまでのコースレコードを0.1秒更新する破格の時計。さらにレース後には、右後肢の落鉄が判明していた。

松山の取った戦法は“勝利の決定打”に見えたが、それは事前に計画されたものではなかったという。

日曜日、シャティン競馬場で予定されているクイーンエリザベス2世カップに遠征するジョバンニに帯同して香港へ向かった杉山晴紀調教師に代わり、中山競馬場で取材に応じた調教助手の瀬間駿太郎助手は、「逃げることまでは想定していなかったのですが」と舞台裏を明かす。

「レースの流れの中で松山騎手がベストなポジションということで、逃げという戦法を選んでくれたのだと思います」

松山自身の考えも同様だった。「全く想定していませんでした。今日の競馬の流れとして、ある程度流れに乗った中で競馬をしたいと思っていて、スタートをしっかり決めようと思っていました。逃げることはあまり考えていませんでしたが、他の馬との兼ね合いでこの形になりました」

瀬間助手は全体のペースについて「1000m通過がちょっと速いかな」と感じたが、3コーナーから4コーナーの勝負所を迎えてもなお、馬の勢いが衰えることはなかった。

「そこから先は不安というよりは、『ここからどういう脚を使ってくれるんだろう』と楽しみにしながら直線まで見ていました」

一方、松山にはハイペースの自覚はなかった。「道中はそれほど速いとは感じませんでした。結果的にレコードだったので速かったのだと思いますが、それくらい馬がいいフットワークで伸び伸びと走れていたのかなと思います」

「急かして急かしてという感じではなかったので、あまり速いという感覚はありませんでした」

4コーナーを回り直線に向いた際、リアライズシリウスに並びかけられる場面もあった。「4コーナーから直線に向いた時に、一度2着馬に出られそうになるのですが、しぶとさもあるので、最後まで諦めずに『何とかしのいでくれ』という気持ちで追っていました」

そして最後の一押しで突き放した瞬間、見守っていた瀬間助手の心に確信が生まれた。

「やはり前半1000mが少し速いかなというペースに見えたので、そのペースで逃げているにも関わらず、もう一押し使って突き放して勝っているのを見て、やはり強いな、能力があるなというふうに思いました」

Kohei Matsuyama and Lovcen
KOHEI MATSUYAMA, LOVCEN / G1 Satsuki Sho // Nakayama /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

杉山晴紀厩舎にとっても待望の牡馬クラシックタイトルであり、瀬間助手が「やっと勝てたかなという感じで、安心する気持ちが一番強いです」と話した声には、まさに安堵がにじんでいた。

松山の指が指し示す次の舞台はどこか。その答えはすでに決まっている。

「クラシック三冠の1つ目を獲らせてもらったので、やはり目標はダービーということになると思います」

菊花賞(3000m)と天皇賞・春(3200m)を制した父ワールドプレミアを背景に、瀬間助手と「血統的にも長い距離を勝っていますので、この馬もぜひ適応して、また次も強い競馬を見せてほしいなと思います」と分析する。

松山の見立ても同じ方向を向いていた。「コーナー4つの2000mは現時点で一番いい条件だと思います。皐月賞から少し距離が伸びても大丈夫だと思います」

ただし、レコード決着の反動を警戒する姿勢も覗かせる。「まずはレース直後ですので馬が無事であってほしいですし、レコードタイムという速い時計で走っていますので、しっかりケアして無事にダービーに向かえたらと思います」

この馬が持つ自在性への信頼も、松山の言葉から伝わってくる。

「今日はハナに行く競馬になりましたが、ホープフルSでは差してくる競馬もできました。どんな競馬もできるので、馬とのコンタクトやリズムを大事にしたいです。まだまだ伸びしろもあり、楽しみです」

一週間で二つのクラシック一冠目を制した松山騎手。その指が次に宙を指す時、その舞台は5月の東京・府中であるはずだ。

上保周平、Idol Horseのジャーナリスト。日本、海外問わず競馬に情熱を注いでいる。これまでにシンガポール、香港、そして日本の競馬場を訪れた経験を持っている。

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