香港競馬の中距離路線から、数年ぶりにロマンチックウォリアーという巨大な壁が消えた。
その影響はすでにシャティンの各厩舎へ広がっている。2000m路線の頂点に生じた大きな空白を前に、調教師たちは管理馬をどの距離に使うか見直している。
一方、近年になく混戦模様となりそうな香港マイルには、多くの有力馬が照準を合わせている。
シーズンの主要前哨戦が迫るなか、Idol Horseは香港国際競走への参戦が期待される6頭の調教師を取材。各馬の復帰時期、鞍上、そして今季の見通しを聞いた。
ヴォイッジバブル
レーティング:128
調教師:リッキー・イウ
次走:G2・シャティントロフィー(1600m・10月19日)
年齢:8歳
鞍上:ジェリー・チャウ
ヴォイッジバブルは、香港競馬の栄誉のほとんど手にしてきた。香港ダービー制覇、香港三冠、香港マイル2勝は、輝かしい実績の中でもとりわけ目を引く。
ただし、リッキー・イウ厩舎の看板馬もすでにベテランの域に入り、昨年12月のG1・香港マイルを最後に4戦勝ち星から遠ざかっている。
それでも、この馬の最大の持ち味がタフさであることに変わりはない。夏の休養で英気を養い、再び大きなシーズンへ臨む準備は整ったかもしれない。2シーズン前のように5勝、2着2回という快進撃を再現するのは難しいかもしれないが、過去4シーズンはいずれもシャティンの主要競走を少なくとも一つ制してきた。
ロマンチックウォリアーが去った今、さらに勲章を加える可能性は残されている。ひと叩きして良くなるタイプのヴォイッジバブルは、過去2シーズンと同じくG2・シャティントロフィーから始動する。
リッキー・イウ調教師:「すでに本格的な調教を積んでおり、ここまで一度もつまずくことなく順調です。10月19日に実戦へ戻る予定です」

マイウィッシュ
レーティング:124
調教師:マーク・ニューナム
次走:G2・シャティントロフィー(1600m・10月19日)
年齢:6歳
鞍上:ヒュー・ボウマン
復帰を目前に控えるマイウィッシュは、香港マイル路線の最有力候補に挙げられる。昨季は初戦から2連勝し、2戦目にはシャティントロフィーを制した。今季はそのレースが始動戦として予定されている。
強烈な末脚を武器とするマーク・ニューナム厩舎のマイラーは、昨季中にもG1初制覇を果たすと期待されたが、シーズン半ばに5連敗。それでも4月の前走、G1・チャンピオンズマイルでついに大仕事をやってのけた。
シャティントロフィーは長年、香港のマイラーや中長距離馬が初戦に選ぶ舞台となっており、同じニューナム厩舎の香港ダービー馬、インビンシブルアイビスも出走を予定している。
ヒュー・ボウマン騎手は厩舎の2頭から騎乗馬を選べる立場だが、負傷の状況が話を複雑にしている。
それでもニューナム調教師は、始動戦でボウマンがマイウィッシュに騎乗し、そのまま香港国際競走までコンビを継続すると見込んでいる。もっとも、鞍上について大きな懸念は抱いていないようだ。
マーク・ニューナム調教師:「馬の状態が良ければ、腕のいい騎手を確保するのは難しくありません。逆に、それほど調子が良くなければ、誰が乗っても大きくは変わらないでしょう」

ギャラクシーパッチ
レーティング:120
調教師:ブレット・クロフォード
次走:G3・セレブレイションカップ(1400m・9月27日)、またはG2・シャティントロフィー(1600m・10月19日)
年齢:7歳
鞍上:カリス・ティータン
ギャラクシーパッチは、香港でも特に評価の難しい馬の一頭だ。ただ、昨季最終戦の走りを見る限り、戦略の変更が、この馬の力を引き出す鍵になるかもしれない。
約2年前、当時ピエール・ン厩舎に所属していた騙馬のギャラクシーパッチは、休み明けのシャティントロフィーを制して重賞3連勝を達成し、その高い能力を示していた。G1制覇も時間の問題と思われた。
しかし、その瞬間はまだ訪れていない。昨季のG2・ジョッキークラブマイルではマイウィッシュを退けるなど、ギャラクシーパッチは一流の能力を垣間見せる一方、大舞台で期待を裏切る傾向もある。
それでも昨季終盤にブレット・クロフォード厩舎へ移ると、希望が再び膨らんだ。
1400mのG3・プレミアカップ(ハンデ戦)では大きな斤量差がありながら、後方から猛然と追い込み、リトルパラダイスに僅差の2着と迫った。クロフォード調教師は始動戦でも同じ条件を選び、同距離のG3・セレブレイションカップへ向かう可能性がある。
ブレット・クロフォード調教師:「土曜日にハッピーバレーでバリアトライアルに出走します。その内容次第では、月末の1400m戦に使う可能性が十分あります」
「ただ、華奢な馬なので、トライアル後の状態に大きく左右されます。出走が早すぎると判断すれば、10月まで待つこともできます」
「すでに実績のある馬ですし、転厩初戦は非常に素晴らしい走りだったと思います。従化トレセンでの休養を満喫したようで、以前よりたくましくなって戻ってきました。能力があることは分かっています。あとは、その力をすべて発揮するだけですから、とても楽しみにしています」
「ティータンには引き続き乗ってもらいます。これまで何度も騎乗していますし、この馬の力をうまく引き出してくれています」

インビンシブルアイビス
レーティング:112
調教師:マーク・ニューナム
次走:G3・セレブレーションカップ(1400m・9月27日)
年齢:5歳
鞍上:ルーク・フェラリス
香港ダービー馬が翌シーズンに初めて姿を見せるときは、いつも期待が高まる。インビンシブルアイビスも例外ではない。ロマンチックウォリアーの引退により、その座を引き継ぐ大きなチャンスが生まれた。
4歳シーズンは9戦5勝を挙げ、最後はG1・チャンピオンズマイルで勝ち馬から1馬身差の4着と健闘。インビンシブルアイビスがその最有力候補と目されるのも当然だろう。
ニューナム調教師としては、この騙馬をシーズン前半はマイル路線で走らせ、その後に再び2000mへ距離を延ばす考えを示している。マイルで思うような結果が出なければ、ロマンチックウォリアーが去った中距離路線への転向は、確かに魅力的な選択肢となる。
シャティン競馬場で行われたインビンシブルアイビスの直近のバリアトライアルの内容にも、トレーナーは満足している様子だった。
マーク・ニューナム調教師:「良いトライアルだったと思います。いい伸びを見せ、動きも良かったです。トライアルを終えた直後はかなり息が上がっていましたが、すぐに回復しました。これで27日のレースに向けて、ちょうどいい仕上がりになるでしょう」
「12月の香港国際競走までに3戦を使う予定です。現段階では香港マイルに向かう可能性が最も高いですが、2戦ほど使った段階で2000mのほうが合いそうなら、そちらを選ぶこともできます」

リトルパラダイス
レーティング:109
調教師:ジミー・ティン
次走:G3・セレブレーションカップ(1400m・9月27日)
年齢:5歳
鞍上:ザック・パートン
リトルパラダイスは今年2月の香港クラシックマイルで鮮やかな勝利を収めた。道中は理想的な展開に恵まれ、乱れたペースから鋭い末脚を繰り出しライバルたちを一蹴した。
しかし、その後の香港クラシックカップ、香港ダービー、チャンピオンズマイルでは同じ走りを再現できず、いずれも大敗。疑念は深まった。
そこで終わっていたなら、ジミー・ティン厩舎の騙馬がこのリストに入ることはなかった。だが、そうはならなかった。昨季最終戦のG3・プレミアカップ(ハンデ戦)を制し、将来性豊かなマイラーであることを改めて示したのだ。
確かに、クビ差の2着に入ったギャラクシーパッチより、15ポンド(約6.8kg)軽い斤量で走っていた。それでも、相手より若く経験も浅い馬の走りとしては、G1級の可能性を改めて感じさせる内容だった。夏の休養を経て成長したリトルパラダイスは、今季のマイル路線の主役へと飛躍できるだろうか。
ジミー・ティン調教師:「馬の状態は悪くありません。まだ万全ではありませんが、シーズン序盤ですし、バリアトライアルの内容は良かったです」
「以前より少し落ち着きが出てきました。それは1600mを走るうえでプラスになるでしょう。オフシーズンは放牧に出し、気分よく過ごさせました。目標は香港マイルで、ザック(パートン騎手)に乗ってもらえればと思っています」

ナンバーズ
レーティング:108
調教師:フランキー・ロー
次走:G3・レディースパース(ハンデ・1800m・11月8日)
年齢:5歳
鞍上:デレク・リョン
ロマンチックウォリアーの引退による恩恵を最も受けられそうな馬を一頭挙げるなら、ナンバーズだろう。
フランキー・ロー厩舎の同馬は、期待十分の香港初シーズンを終えたばかり。層が際立って薄い香港の2000mから2400m路線をけん引する存在として、申し分のない資質を備えている。
そのシーズンは香港ダービーで2着に入り、さらに距離が延びたG1・チャンピオンズ&チャターカップでは、不運もありながらロマンチックウォリアーに僅差の2着と迫った。
ナンバーズは11月上旬、歴史あるG3・レディースパース(ハンデ戦)から始動する予定だ。その後、ロー師と馬主らは12月の香港国際競走でどちらへ進むかを見極める。
2000mの香港カップか、2400mの香港ヴァーズか。いずれを選んでも、ロマンチックウォリアーが去ったからといって、G1の大舞台で楽な戦いが待っているわけではないことを、ロー調教師は理解している。
フランキー・ロー調教師:「ロマンチックウォリアーがいなくなれば、海外から香港国際競走へ来る馬はもっと増えるでしょう。ですから、どちらの路線のほうが少しでも戦いやすいか、考えなければなりません」
