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父は7勝、娘はまだ未勝利…名伯楽がジンクス打破でコックスプレート初制覇へ、サーデリウスのウォーターハウス調教師に取材

父が歴代最多の7勝を挙げたコックスプレートで、ゲイ・ウォーターハウス調教師は初勝利を追い求めて30年になる。なぜ勝てないのか、本人にも答えはない。サーデリウスで臨む今回は、ここ10年以上で最大の好機となる可能性がある。

父は7勝、娘はまだ未勝利…名伯楽がジンクス打破でコックスプレート初制覇へ、サーデリウスのウォーターハウス調教師に取材

父が歴代最多の7勝を挙げたコックスプレートで、ゲイ・ウォーターハウス調教師は初勝利を追い求めて30年になる。なぜ勝てないのか、本人にも答えはない。サーデリウスで臨む今回は、ここ10年以上で最大の好機となる可能性がある。

ローリー・マキロイはついにマスターズを制し、美しく手入れされたオーガスタ・ナショナルの18番グリーンに膝をついて、子どものように泣いた。リオネル・メッシも、ほとんど生涯をかけて追い求めたワールドカップをアルゼンチン代表で勝ち取ったとき、同じように涙を流した。

あのロジャー・フェデラーでさえ、テニスの全仏オープンを制するまでには時間がかかった。その天才がパリのクレーコートでも頂点に届くのか、誰にも確信は持てなかった。

だが、女性調教師の前に立ちはだかる壁をいくつも打ち破り、これほど多くの勝ち馬を送り出してきたゲイ・ウォーターハウス調教師が、コックスプレートを一度も勝っていないとは、一体どういうことなのか。

オーストラリア競馬とニュージーランド競馬の馬齢重量戦の頂点に立つこのレースで、あの名伯楽は、なぜ一度も栄冠を手にできていないのか。Idol Horseにそう問われたウォーターハウス師は、肩をすくめて苦笑いする。

「理由は本当に分かりません。これまで手掛けてきたなかでも、指折りの名馬たちを出走させてきたのですが」

「今週末こそは、勝利をつかめればと思っています」

コックスプレート制覇は、ウォーターハウス師にとって幼い頃から身近なものだった。父のT.J.スミス調教師は、3連覇の名馬キングストンタウンを筆頭に、歴代最多の7勝を挙げた。父はたいていの土曜日、いくつものトロフィーを抱えて帰宅し、幼いウォーターハウス師は、その光景が当たり前なのだと思っていた。

父が手にした栄光の中でも、コックスプレートは、いつも特別なものだった。

コックスプレート制覇を目指し始めてから30年。ウォーターハウス師に再びチャンスが巡ってきた。当時世代屈指の3歳馬だったピエロを送り込んで以来、10年以上の時を経て訪れた最大の好機かもしれない。

ウォーターハウス師とコックスプレートの歴史が、2012年のモアジョイアスをめぐる大騒動で記憶されるとしたら、残念なことだろう。あの一件は、有名実業家のジョン・シングルトン氏との関係がこじれる発端となった。2人は後に友情を取り戻し、ある馬に「仲直りする」を意味する“キスアンドメイクアップ”と名付けている。

あの年、ウォーターハウス師はモアジョイアス陣営の代表として、コックスプレートの枠順を選ぶ役を任されていた。モアジョイアスは抽選で最初に名前を呼ばれ、すべての枠から自由に選べる立場だった。そして指揮官が選んだのは、14頭立ての11番枠だった。

「ゲイ(ウォーターハウス調教師)のことは大好きですが、これはまったく正気の沙汰ではありません」とシングルトン氏は当時、怒りをあらわにした。「コックスプレートではなく普通のレースだったら、出走を取り消し、調教師も解任していたでしょう」

「ゲイはあの枠を選ぶ必要などありませんでした。あまりにもばかげています。あれが良い枠だと思う人など、世界中どこにもいません」

枠順が災いし、コックスプレートで外を回らされたモアジョイアスは、皮肉にも11着に終わった。

翌年はフィオレンテが3着に入り、その10日後、ウォーターハウス師にメルボルンカップ初制覇をもたらした。しかし、それ以降、コックスプレートに有力馬を送り込む機会はほとんどなかった。

ウォーターハウス師が管理するサーデリウスは、土曜日に行われる賞金600万豪ドル(約6億6400万円)のコックスプレートで、1番人気を争っている。

今年の舞台は、熱狂に包まれる円形劇場のようなムーニーバレー競馬場ではない。本来の開催地が再開発工事中のため、代わりとしてフレミントン競馬場で開催される。

今年のコックスプレートは、そこに至るまでの雰囲気もどこか違う。出走候補馬が一般のファンの前で、ザ・バレーの独特な円形の小回りコースを駆ける恒例の公開調教イベント『ブレックファスト・ウィズ・ザベスト』も行われなかった。

メルボルンの各競馬クラブ間では政治的な駆け引きが盛んだ。その関係を知るには、フレミントンの限られた人だけが入れる役員用ラウンジに、ムーニーバレー側の誰が招かれ、誰が招かれないのかを見るのが、一番の手掛かりになるのかもしれない。

それでもウォーターハウス師が勝てば、今年はこのレースの歴史でも屈指の、記憶に残る一戦になるだろう。

Sir Delius and Craig Williams beat Autumn Glow and James McDonald in the G1 Doncaster Mile at Randwick
SIR DELIUS, CRAIG WILLIAMS, AUTUMN GLOW, JAMES McDONALD / G1 Queen Elizabeth Stakes // Randwick /// 2026 //// Photo by Jeremy Ng (Getty Images)
Horse trainer Gai Waterhouse
GAI WATERHOUSE / 2023 // Photo by Scott Barbour

すでに殿堂入りも果たしているウォーターハウス師は、エイドリアン・ボット調教師と共同でサーデリウスを管理している。ただ、この春のサーデリウスの調整に、ウォーターハウス師の手腕が色濃く表れていることは、疑いようがない。

「フレミントン競馬場で走った経験があり、G1でも勝っているというだけではありません。この馬は毎日フレミントンで調教されてきたことも、忘れないでください」

毎年多くの時間をメルボルンで過ごすウォーターハウス師は、「サーデリウスにとってはホームコースです」とコース相性への自信を語る。

「片時も目を離さずに見ています」

サーデリウスが、ロイヤルランドウィック競馬場で行われた総賞金500万豪ドル(約5億5300万円)のG1・クイーンエリザベスステークスで、オータムグローに土をつけてから半年がたつ。オータムグローが敗れたのは、今もその一度だけだ。

その勝利は、昨年のコックスプレートとメルボルンカップを欠場することになった一連の騒動の痛手を和らげた。

当時G1を連勝していたサーデリウスは、レーシング・ヴィクトリアが定める獣医検査と画像検査で、潜在的な問題が見つかったとして、出走を取り消されたのだ。厩舎は同馬が健康だと強く主張し、残りのシーズンはシドニーへ転戦することさえ検討したが、最終的には休養に入った。

サーデリウスを所有するニュージーランドの慈善家、サー・オーウェン・グレン氏は、愛馬がオータムグローを破った番狂わせの勝利に大いに心を動かされた。検量に戻ってくる同馬を迎える際には、車いすから立ち上がって拍手を送りそうになったほどだ。

今年、大きく輝くコックスプレートのトロフィーを持ち帰ることができれば、それ以上の喜びはないだろう。

「競馬をどれほど愛しているか、そのお手本のような方です」とウォーターハウス師は話す。「競馬に莫大なお金を投じてきた方で、サーデリウスは見事にその思いに応えています。これからも応え続けてくれるでしょう」

「今年のコックスプレートは層が非常に厚く、特に難しい一戦だと思います。キアロン(マー調教師)もクリス(ウォーラー調教師)も有力馬を何頭も送り込んできます」

「そして、3歳馬のウォーウーヴンは、非常に才能豊かな馬です。あの馬が最大の相手です。前走のコーフィールドギニーでは相手をまったく寄せつけず、鮮烈な勝ち方をしました。オーストラリア国内で一番の3歳馬です」

「私たちも出走し、できる限りの力を尽くさなければなりません」

ウォーターハウス師、ボット師の両名は、オーストラリア競馬の2大厩舎、クリス・ウォーラー調教師とキアロン・マー調教師には、少なくとも管理頭数の規模では太刀打ちできない。

ウォーラー師は、T.J.スミス元調教師の“コックスプレート7勝”という大記録に並ぶことを目指している。これまでウィンクスで4勝、引退したヴィアシスティーナで2勝を挙げており、今年はアエリアナとバードマンという、十分に勝利を狙える2頭を擁する。

ゲイの夫で、ブックメーカーを営むロビー・ウォーターハウス氏でさえ、サーデリウスの勝機にはやや慎重になっている。同馬は何か月もの間、コックスプレートの前売りで1番人気に立っていたが、Heavy 8(不良馬場)のターンブルステークスでは伸びあぐね、コスミッククルセーダーの4着に敗れた。

「直近2走には、それぞれ敗因を挙げられます」とロビー氏は話す。「6週間前は非常に自信がありましたが、今はその時ほどの自信はありません」

コックスプレートを勝とうが勝てまいが、この一戦だけでウォーターハウス師の功績が決まることはない。あまりにも長い間、あまりにも多くを成し遂げてきた。オーストラリアとニュージーランドの競馬番組のなかで、おそらく最も純粋に実力を問うレースとはいえ、その成績だけで記憶される存在ではない。

では、これから先、あと何度チャンスがあるのだろうか。

ロビー氏は笑う。「いや、まだ何年かはありますよ」

アダム・ペンギリー、ジャーナリスト。競馬を始めとする様々なスポーツで10年以上、速報ニュース、特集記事、コラム、分析、論説を執筆した実績を持つ。シドニー・モーニング・ヘラルドやイラワラ・マーキュリーなどの報道機関で勤務したほか、Sky RacingやSky Sports Radioのオンエアプレゼンターとしても活躍している。

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