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ホリー・ドイル騎手は積極果敢な騎乗が持ち味の軽量ジョッキーで、強い闘志と、トップジョッキーに不可欠なタイミングとペース判断の巧みさを兼ね備えている。

2023年のG1・カドラン賞では、長年のパートナーであるトゥルーシャンを先行させ、馬をリラックスさせながらエネルギーを温存。ロンシャンの直線入口前でスパートし、逃げ切り勝ちを収めるなど、先行馬を自在に操る技術は圧巻だ。

また、戦術の幅広さもドイルの大きな武器だ。2023年のG1・キングズスタンドSではブラッドセルを好位から進めてスプリント王者に導き、2022年のG1・ナッソーSではナシュワで最後方から豪快に差し切るなど、あらゆる展開に対応して結果を出してきた。

ホリー・ドイルは競馬一家に生まれ、幼少期から馬とともに育った。父マークは元見習い騎手、母キャロラインは純血アラブ種のレースに騎乗していた経験を持つ。

イングランド西部のヘレフォードシャーで生まれ育ち、地元のポニークラブに所属。9歳からポニー競馬に参加し、16歳でデヴィッド・エヴァンス厩舎にアマチュアとして所属した。

その後、リチャード・ハノン厩舎で見習い騎手として頭角を現す。このキャリアのスタートは、ライアン・ムーア騎手と同じ道でもある。

Jockey Hollie Doyle

ホリー・ドイルといえば、名ステイヤーのトゥルーシャンとのコンビが有名だ。

アラン・キング厩舎の管理馬であるトゥルーシャンとは、30戦中20戦で騎乗し、10勝を挙げている。初の大勝利は2020年のG2・英チャンピオンズロングディスタンスカップ。その後、このレースを通算3勝、さらにG1・グッドウッドカップ、G1・カドラン賞を2勝、G2・ドンカスターカップなど、長距離路線を席巻した。

中でも2022年6月、ニューカッスル競馬場で行われた伝統のノーサンバーランドプレートは名レースだ。

トップハンデの148ポンド(約67kg)を背負ったトゥルーシャンを先行させ、ドイルは堂々と抜け出した。2着馬とは28ポンド(約12.7kg)もの斤量差がありながら、半馬身差で勝利した。

Hollie Doyle and Trueshan win Northumberland Plate

「初制覇」は忘れられない思い出だと言われるが、ドイルにとっても、初G1勝利となったグレンシールとの一戦は決して忘れられないだろう。しかし、最も記憶に残る騎乗を一つ挙げるなら、ナシュワで制した2022年のG1・仏オークス(ディアヌ賞)だ。

大舞台でもまったく気負うことなく、持ち味を存分に発揮したドイルは、ナシュワを完璧に導いた。良からやや重の馬場で最内を避け、前目でレースを進めると、残り400m付近で一気に仕掛けて先頭へ。猛追するラパリジェンヌを抑え、短首差でゴールインした。

この勝利は、女性騎手として史上初めてフランスのクラシック競走を制するという歴史的快挙となった。

Hollie Doyle and Nashwa

ホリー・ドイルの最大の功績は、女性騎手への偏見や先入観を打ち破り、「女性騎手」という枠を超えて、世界的なトップジョッキーの一人として認められたことだ。

もちろん、その道は先駆者たちの努力によって切り開かれた。ゲイ・ケルウェイ、エマ・オゴーマン、アレックス・グリーヴス、リサ・スミス、ヘイリー・ターナー、エイミー・ライアン、ジョセフィーヌ・ゴードンなど、数々の女性騎手たちが築いてきた土台の上にドイルは立っている。

2019年には、女性騎手として英国年間最多勝利記録となる116勝を樹立。現在はG1レースの常連となり、欧州各国はもちろん、サウジアラビア、日本、香港など世界各地で勝利を重ねる国際派スターとなった。

Jockey Hollie Doyle wins in Hong Kong

ホリー・ドイルの夫は、同じく世界的トップジョッキーのトム・マーカンド騎手だ。2人は14歳のときに出会い、2022年3月にヘレフォードシャーで結婚した。

ちなみに、ドイルがマーカンドと一緒に騎乗していたレースで初めて勝利を挙げたのは、2016年9月19日、レスター競馬場でのクラス6の低級戦だった。ドイルはリチャード・ハノン厩舎のウォーキングインリズムで勝ち、マーカンドはジャストファブで大きく離された3着に敗れている。

世界のスタージョッキーたち

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