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ミシェル・ペイン騎手が女性として初めてメルボルンカップを制し、オーストラリアで広く名を知られる存在になったあの日から、もう10年の歳月が経つ。

土曜日、ハーフユアーズのジェイミー・メルハム(旧姓:ジェイミー・カー)騎手がその足跡をたどり、女性として初のコーフィールドカップ制覇を成し遂げた。

もっとも、ペインがメルボルンカップで騎乗した優勝馬のプリンスオブペンザンスは単勝101倍の大穴で、彼女の衝撃的な金字塔そのものがニュースの主役となり、後に映画化にまで至った。

一方、メルハムの勝利は趣が異なる。ハーフユアーズは圧倒的1番人気で、メルハムの勝利は大方の予想通りだった。彼女は計り知れない重圧の中、トニー&カルヴィン・マカヴォイ厩舎のステイヤーを、落ち着いた見事な騎乗で勝利に導いたのだ。

149回目を迎えたこのレースで、メルハムが女性として初の優勝者となったことは確かに一つの物語だ。だが、それが物語の中心ではなかった。そして今回が彼女にとって最大の勝利だったとしても、これは通算18回目のG1勝利に過ぎない。

29歳のメルハムは、南オーストラリア州のリーディングを3度、メルボルンのリーディングを1度獲得し、ヴォイッジバブル、ネイチャーストリップ、ザーキ、ブロードサイディングといった馬でビッグレースを制してきた輝かしいキャリアの、新たな章を記したにすぎない。

競馬は、男女が同じ舞台で互角に競い合うことのできる数少ないスポーツの一つだ(もっとも、フランスと日本では女性騎手に減量が与えられているが)。しかし、このスポーツの歴史の大半において、計量室は主に男性の領域だった。

その状況はいま、ゆっくりと変わりつつある。

オーストラリアでは、全国にいる約250人の見習騎手のうち、ほぼ8割が女性だ。ペイン、メルハム、レイチェル・キング、アンジェラ・ジョーンズ、クレア・リンドップ、キャシー・オハラ、リンダ・ミーチら、先輩女性騎手の活躍が原動力となっている。

長らく先行してきたニュージーランドでは、見習騎手の男女比はほぼ均等だ。

世界の多くの地域はそこまでの水準に達していないが(アイルランド32%、イギリス31%、南アフリカ15%)、女性は急速な勢いで存在感を高めている。障害のレイチェル・ブラックモア、平地のホリー・ドイル、ヘイリー・ターナー、レイチェル・ヴェニカーといったスターは、その先導役だ。

次なる舞台はアジアだ。将来の女性スター輩出という点ではまだ遅れを取っているが、男女が互角に戦う次の場所として浮上している。

今年初め、レイチェル・キング騎手はコスタノヴァでフェブラリーステークスを制し、JRAの舞台で平地G1を勝った女性騎手として初の快挙を達成した。

RACHEL KING, COSTA NOVA / G1 February Stakes // Tokyo /// 2025 //// Photo by @s1nihs

それに先立つ1年前には、サフィー・オズボーン騎手がドバイ・メイダンで節目となる勝利を挙げ、さらにその後、父の厩舎が管理するハートオブオナーがG2・UAEダービーでハナ差の2着に健闘。ドバイワールドカップデーで女性として初勝利を挙げる機会に、あと一歩まで近付いた。

ドイルは今冬、日本での重なる騎乗経験を経て、11月5日から香港で腕試しを行う予定だ。ドイルは短期免許で香港の騎手陣に加わる外国人女性としては、史上2人目となる。最初の例はカナダのエマ=ジェーン・ウィルソンで、約18年前の2か月間、香港で騎乗した。

この10年、短期参戦を除けば、香港で継続的に存在感を示した女性騎手は、見習騎手のブリトニー・ウォンとケイ・チョンに限られる。

競馬産業の未来はアジアにかかっている。だからこそ、この地域で女性の成功が当たり前になることは重要だ。競馬は究極的には実力主義で、メルハムのような女性騎手が十分に渡り合えることをすでに証明している。

Idol Horse reporter Andrew Hawkins

Hawk Eye View、Idol Horseの国際担当記者、アンドリュー・ホーキンスが世界の競馬を紹介する週刊コラム。Hawk Eye Viewは毎週金曜日、香港のザ・スタンダード紙で連載中。

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