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ヨーク競馬場のG1・英インターナショナルステークスは、オンブズマンとコンスティテューションリバーの一騎打ちになるはずだった。ところが、今夏に破竹の勢いを見せるアンドリュー・ボールディング厩舎が、この歴史あるネーヴスミアの地へ乗り込み、そのまま主役の2頭をまとめてのみ込んだ。

アイテムがゴール寸前の猛追でアルマカムを退け、それまで英国とアイルランドの看板を背負ってきた2頭が3、4着に終わったことで、キングスクレアを拠点とするボールディング師は、英国の大レースをわずか数週間のうちに2勝した。先月のG1・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでカルパナが厩舎にもたらした勝利に、さらなる重みを加える結果だ。ブルーボルトが英仏海峡をまたいで挙げた二つのG1勝利も忘れてはならない。

歴史あるキングスクレア厩舎は常に大きな存在感を放ってきた。それでも、ボールディング師が指揮を執って23年を経た今なお、同厩舎は成長を続けている。

以前から安定した成績を残してきたが、新型コロナウイルスのパンデミック以降は年間成績が着実に上向き、昨年は自己最多の192勝を挙げ、獲得賞金も720万ポンド(約15.5億円)に達した。

今では、大レースで結果を残しながら、年間の勝利数も伸ばしている。ボールディング師が2003年に調教師免許を引き継いでから2019年までのG1勝利は9勝だったが、2020年以降はさらに16勝を積み上げ、そのうち4勝が今年のものだ。そして今、キングスクレアに初めて英インターナショナルステークスの勝利がもたらされた。

アイテムの次走はまだ決まっていない。ただし、レース後のヨークのパドックではJRA関係者の姿が目立った。東京へ遠征し、英インターナショナルステークスに続いてジャパンカップも制すれば最大500万米ドル(約7.9億円)のボーナスが用意されており、選択肢の一つになる可能性はある。

ボールディング師は明言を避けた。アイテムが年内にたどる道筋は、ジャドモント陣営が決めることになる。ただ今回、ヨークの芝10ハロンで3勝目を挙げたアイテムについて、凱旋門賞とジャパンカップの距離である12ハロンも「何の問題もない」と確信していた。

もっとも、アイテムは危うくヨーク入りできないところだった。

フランケル産駒のアイテムが、ジャドモントの主戦を務めるコリン・キーン騎手を背にアタマ差で勝利し、鞍を外すために引き揚げてきた後、ボールディング師は「実は、ここへ来るまで順調だったわけではありません。出走馬確定の頃まではすべて順調でしたが、その頃に蹄にちょっとした問題が起きました」と明かした。

名門厩舎を率い、現代の一大勢力へと押し上げているボールディング師だが、アイテムの勝利はチームの功績だと述べた。

同師は「装蹄師のベン」「獣医のサイモン」「バズ」をはじめ、「問題を解決するために時間外まで働いてくれた」スタッフの名を挙げた。アイテムは出走馬として確定していたものの、月曜日の確定時点では、実際に出走できる可能性よりも回避する可能性の方が高いと思われたという。

「蹄に小さな血豆のようなものが見つかりました」とボールディング師は説明した。

「それがつぶれるとすぐに痛みはなくなり、問題もありませんでしたが、スタッフは本当に懸命にこの馬をケアしてくれました。最後の48時間を除けばすべて予定通りで、今朝、軽く走らせた時の様子を見て、問題がないと100%確信できました」

「ただ、通常とは違う調整になりました。普段なら出走馬は前夜にこちらへ到着しますが、この馬は今朝、夜明けに出発しなければなりませんでした。その前に皆に早起きしてもらい、軽く走る様子を見てもらって、本当に大丈夫だと確かめたのです。心からほっとしています」

その判断が下されたのは午前5時。それから間もなく、アイテムの担当厩務員、バリー・ルイス氏(愛称バズ)は馬運車のハンドルを握り、約180マイル(約290キロ)の道のりをヨークへ向けて走り出した。

ボールディング師はIdol Horseに「バズは昨夜遅くまで厩舎で作業し、そのうえ馬運車をここまで運転してきました。本当によく働いてくれましたし、この勝利はバズにこそふさわしいものです」と話した。

「毎日アイテムに乗り、この馬を支えるうえで大きな力になってくれています」

キングスクレアを出発してから10時間以上が経った頃、ルイス氏はレース後の表彰でカミラ王妃と対面し、記念品を受け取っていた。その後は混雑するパドックへと急ぎ、人の間を縫うようにして愛馬のもとへ戻っていった。

道中では「バリー」「バリー、やったな」「よくやった、バズ」と、次々に声が飛んだ。

「5時半に出ました。ええ、馬運車を運転したのは私です」とルイス氏はIdol Horseに答え、柵をくぐってレース後の待機馬房へ歩き続けた。

アイテムは5月、このヨーク競馬場でG2・ダンテステークスを勝ち、英ダービーの有力候補となった。道悪の英ダービーは合わず、クリスマスデーが勝った一戦で9着に敗れた。そのクリスマスデーは、この日のアイテムの競走の直前に行われたG2・グレートヴォルティジュールステークスで敗れていた。

しかしアイテムは先月、ここネーヴスミアのヨーク競馬場で、今回と同じコースと距離のG2・ヨークステークスを力強く制し、なお頂点に立てるだけの力があると思わせていた。この日の走りが、それを証明した。

「厩舎の人気者ですね」とルイス氏は話した。「まさにレジェンドです。厩舎ではかなり活発ですが、とても真面目で扱いやすい馬です。ただ、かなり行きたがるところがあるので、調教で動き過ぎないよう抑えるのが一番難しいですね」

「でも、この馬は調教が本当に大好きなんです。それがレースでの強さにも表れているんだと思います。今日の走りには大満足です。夢みたいですよ。本当に信じられません」

Item, Colin Keane and Barry Lewis after winning the Juddmonte
COLIN KEANE, ITEM, BARRY LEWIS / G1 Juddmonte International Stakes // York /// 2026 //// Photo by Chris Jackson (Getty Images)

そう言い終えると、ルイス氏は愛馬のもとへ戻った。ほどなく再びキングスクレアまでの長い帰路に就く。そこでは、ボールディング師の亡き父、イアン・ボールディング氏が、英ダービー、キングジョージ、凱旋門賞を制した名馬ミルリーフとともに、自らの足跡を残した。

ボールディング家が来る以前にも、この厩舎はクラシック勝ち馬を送り出している。名調教師のジョン・ポーター氏はこの地で、競馬史に名を刻む不滅の名馬であり、19世紀最高の競走馬と評されたオーモンドを手がけた。

キングスクレアにとって初の英インターナショナルステークス制覇が、ジャドモントの自家生産馬によって成し遂げられたことは、ボールディング師の成功を物語っている。より多くの馬と新たな有力馬主を厩舎へ迎え入れただけでなく、大舞台で結果も出してきたからだ。

「そもそも、こうした馬たちを預けてもらえたことが本当に幸運でした。これほどの馬たちを任されていれば、好成績を挙げられた調教師はほかにいくらでもいたと思います」とボールディング師は述べた。

「ですから、すべてが私たちの力によるものだと言うつもりはありません。それでも素晴らしい道のりでしたし、ジャドモントは仕事を共にするうえで最高のチームの一つです」

「本当に手厚く支えてくれて、的確な助言をしてくれます。彼らと仕事ができることを、本当にうれしく思います」

一方、写真判定の末に敗れたアルマカム陣営は、キアラン・シューマーク騎手もエド・ウォーカー調教師も落胆を隠せなかった。

「英インターナショナルステークスで写真判定の末に敗れるのは、さすがにこたえます」とウォーカー師は話した。

「こういうレースに挑めるだけでも夢のようです。勝つとなれば、なおさらです。ですが今回は、本当にあと一歩まで勝利に迫りました。次のチャンスを探さなければなりません」

「厩舎のスタッフはゲート対策に素晴らしい仕事をしてくれました。少しゲート練習を行い、素早く飛び出して早く走りに集中できるよう、目隠しも使いました。キアランも完璧に乗り、仕掛けるべき時に仕掛けてくれました。それだけに、つらいです」

ヨークのスタンドにいた多くの観客と同じく、シューマークもアルマカムが先頭に立った時点で勝利をつかんだと思った。「倒すべき馬には先着したと思ったのですが、ゴール寸前で差されました」と振り返った。

倒すべき相手とは、仏ダービーとエクリプスステークスを制したコンスティテューションリバーだった。パドックでは見栄えがせず、ライアン・ムーア騎手がまたがると気合が入り過ぎ、レース序盤では行きたがった。

大きく注目されたもう一頭のライバルである昨年の勝ち馬、オンブズマンはパドックで盛んに尾を振って落ち着きを欠き、ウィリアム・ビュイック騎手を背に最後方まで下がった。追い上げるには前との差が開き過ぎ、最後まで届かなかった。

その2頭を送り出した陣営を率いるのは、英国とアイルランドを代表する名調教師、ジョン・ゴスデン師とエイダン・オブライエン師だ。馬主も世界的なオーナーブリーダーであるゴドルフィンとクールモアである。

だがキングスクレアにも、同じく名高いオーナーブリーダーのジャドモントがついている。今では「110人」のスタッフを雇い、「約250頭」を擁する厩舎を率いるボールディング師は、世界最高峰の一角として、その存在感をいっそう強めている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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