香港のブリトニー・ウォン(ポニー・ウォン / 黃寶妮)騎手に会うと、まず印象に残るのはその握手だ。力強く、自信に満ちていて、彼女が言葉を発する前に多くを物語る。
シャティン競馬場での朝の調教を終え、緑のシマノ製ロードバイクにもたれながら、彼女は香港での暮らしをIdol Horseに率直に語る。弱肉強食の香港競馬で過ごした最初の13か月は険しい道程だったが、26歳の見習い騎手は、ようやく自分のリズムとスタイル、そして自信をつかみつつある。
最近は迷いが薄れ、手応えを感じているという。
「ようやくコツがつかめてきました」
「外にザック・パートン騎手、内にカリス・ティータン騎手という並びだと、どうしてもゴール前では自分の判断を疑ってしまいかちなんです」
「でも、私は自分のやるべきことに集中しています。リズムを保ち、冷静さを失わないようにして、届くなら届く。少なくとも最善は尽くしたと分かります」
そのリズムは、日曜のシャティン開催で存分に示された。クラス2のパナソニックカップで人気薄のサガシアスライフに騎乗し、ウォンは香港での自身最大の勝利を収めた。
この日は後方待機から鋭い末脚を繰り出し、クビ差で差し切っての勝利。これまで香港で挙げた22勝のうち、20勝は道中3番手以内の好位に付けた先行競馬だったが、ウォンは新たな勝ちパターンに手応えを口にする。
「クラス2で勝利を挙げられたのは素晴らしいですし、いつもと違う勝ちパターンで結果を出せたのが特にうれしいです」
「ゴールでは接戦だと気づきませんでした。ラスト100mでこの馬がすべてを出し切っているのを感じて、楽に届くと思っていたからです」
この勝利で、彼女は香港で初の『トロフィーレース』を手にした。
「香港で最初にもらったトロフィーが炊飯器型なんて、最高ですね」と笑みを見せた。

ウォンは昨シーズンの開幕時、母国での騎手免許を取得した。オーストラリア(通算50勝)とニュージーランドでの修行経験を経て香港に復帰し、香港ジョッキークラブ(HKJC)ではケイ・チョン氏(2015年9月デビュー、2018年1月に正式引退)以来の女性見習い騎手となった。
デビューが決まってデヴィッド・ホール厩舎に弟子入りすると、シャティンの舞台で世界的名手たちと直面する現実が、これまでとはまったくの別物であることをすぐに思い知った。
「オーストラリアでは、まずは馬が楽に走れる位置で落ち着かせることを重視していました。ですが、香港では序盤のポジション争いが熾烈です。最初の200mが勝負なんです」
「その意味でとても競争が激しく、位置取りに苦労する場面もありました。今はコツが掴めてきました。より良いポジションを見つけて、できるだけ早くリラックスさせることを心がけています」
香港での初年度は210回の騎乗で18勝、うちシャティンのダートでは8勝を挙げた。2025/26年シーズンは開幕からの14開催で、5勝を積み上げている。
勝率は10%弱。今季はすでに10厩舎から声がかかっており、7ポンド(約3.2kg)減量の見習いとして順調に歩を進める。一方で彼女は、“弱気”との戦いと、その支えになっている人々について率直に語る。
競馬学校の指導教官主任で、香港競馬の元名騎手でもあるフェリックス・コーツィー氏、HKJCの指導教官であるエイミー・チャン氏は心の拠り所だ。パーソナルトレーナーのオレグ・ジャヴォロンコフ氏、そして検量室の同僚たちも助言を惜しまない。
「自信を失ったときはフェリックスやエイミーとよく話します。二人はいつも、その疑念から立ち直らせてくれるんです」
「世界でもトップクラスに競争が激しい香港競馬で、世界のトップ騎手たちを相手に、私はちゃんと勝っている。常にそう思い出させてくれます」
「ヒュー・ボウマン騎手もとても助けてくれます。私のボス(ホール師)の馬によく乗っていますので、彼からよく助言をもらいます。ザック(パートン)も時々ボスの馬に調教に乗るので、彼にも相談できます」
「オレグとは少なくとも半年前から一緒にやっていて、私たちの体力も精神力も強くするために全力を尽くしてくれています。自分を疑わないことも教えてくれます。彼は私の強さを信じてくれていて、あとはそれをレースで引き出すだけなんです」

時には、自分の騎乗を厳しくも繊細な目で見直すことも、彼女の自信を支えている。
「勝てないときはつらいです。でもリプレイを見れば、どれだけ上達したかが分かります。それはいつも大きな励みになります。結局、自信喪失という問題に戻ってくるからです」
「見直して改善点が見つかれば、さらに良くなれると信じられます。それが私を前へ進ませてくれるんです」
その自信は、今週末のハッピーバレー競馬場での初騎乗で極めて重要となる。彼女は1年以上、シャティン競馬場のみで騎乗してきたが、ようやくこの市街地コースでの騎乗が認められた。
ハッピーバレーは世界でも比類ない。鋭く連続するコーナー、序盤のポジション取り、ライバルとの接近戦は判断とタイミング、そして信頼を試す大舞台だ。ブラジルの名手、ジョアン・モレイラ騎手でさえ手強いコースだと語ったことがある。
「本当に楽しみです。オーストラリアでもタイトなコースはいくつか経験しています。大きなステップアップとは言いませんが、間違いなく適応すべきもう一段上のレースです」
「まだ7ポンドの減量がありますし、直線は短くコーナーは鋭い。うまくいけば勝ち星を挙げられるはずです」

ハッピーバレーという新たな挑戦に加え、英国トップの女性騎手が間もなく到着するという好機も訪れる。11月上旬からはホリー・ドイル騎手が短期契約で香港入りし、シャティン競馬場の新装された女性騎手用ルームでは、ウォンは“ただ一人の女性騎手”ではなくなる。
ドイルの話題になると、ウォンの頬は自然とゆるむ。
「本当にワクワクしています。昨年、ホリーが数日だけ来たとき、私はたくさん質問しましたが、彼女はいつも助けてくれました」
「人柄、技術、強さ、すべてが素晴らしいです。私が見習うべき最高の手本です。今回は7週間の滞在なので、待ちきれません」
ウォンは馬とともに育ったわけではない。だが、学校の試験後にHKJCの騎手育成プログラムに参加し、競馬というスポーツに魅了された彼女は、日々の旅路を一歩ずつ受け止めている。
あの力強い握手は飾りではない。新たな挑戦と新たな仲間を前に、ブリトニー・ウォン騎手の手応えは、確実に強さを増している。
 
                                             
     
     
                                     
                                                                             
                                                                            