土曜日、ジ・エベレスト当日のランドウィック競馬場は、王者の勝利を祝う一日になるはずだった。しかし、テンプテッドがカーインライジングの1000日間に及ぶ君臨に終止符を打った。世界最高のレーティングを持つ香港の王者は11番ゲートから外を回らされ、テンプテッドにアタマ差で退けられた。
圧倒的な1番人気に支持された騸馬のカーインライジングは、ザック・パートン騎手を背に猛追したものの、キアロン・マー調教師が管理する牝馬、テンプテッドを差し切ることは叶わず。チャド・スコフィールド騎手と理想的なレース運びを見せたテンプテッドが、総賞金2000万豪ドル(約22億円)の短距離戦でカーインライジングの連覇を阻んだ。
予想外の出来事は、ゲートが開く前から始まっていた。馬場は予想以上に乾き、第6レース終了後には、馬場発表が「Soft 5(重馬場)」へ引き上げられた。そしてレースが始まると、カーインライジングは11番ゲートからハナを奪えるほどの出脚がつかなかった。
一方、テンプテッドは1番ゲートから好スタートを切り、誰もが予想していたよりも前の位置につけた。
テンプテッドのスコフィールド騎手が事前にどのような展開を想定していたにせよ、テンプテッドがカーインライジングより前で運ぶ形は、思い描いたシナリオの範疇を超えるものだっただろう。そしてそれは、レースを分析していた誰にとっても同じだった。
パートンはコーナーでもカーインライジングを内へ入れられず、終始外を回らされ続けた。ゴール手前ではカーインライジングが鋭く迫ったものの、スコフィールドはテンプテッドをゴールまで粘らせた。
カーインライジングのデヴィッド・ヘイズ調教師は、レースを次のように振り返った。
「1着馬と3着馬は理想的なレースができました。こちらは前に馬を置けず、6頭分も外を回る厳しいレースでしたが、よく頑張ってくれました。最後の伸びは素晴らしかったですが、結果は本当に残念です」

また、ヘイズ師は枠順の影響についても説明。当初は有利に働くと考えていた枠順が、カーインライジングにとって不利に作用したと話した。
「あの位置になるとは思っていませんでしたが、枠順が影響しました。11番ゲートが有利に働くこともありますが、今回はかなり外を回らされました。位置取りも予想より少し後ろになりました。強いて良い点を挙げるなら、ゴール板を過ぎた1完歩後には前に出ていました」
3着にはクリス・ウォーラー調教師が管理し、ジェームズ・マクドナルド騎手が騎乗したジョリースターが入った。2番人気からジ・エベレストを制したテンプテッドは、昨年のジ・エベレスト2着以降の戦績を6戦6勝とした。
「勝ち馬は本当に理想的なレースをしました。見事でしたし、この春は大活躍でした」とヘイズ師は勝者を称えた。
香港ジョッキークラブ(HKJC)のCEO、ウインフリート・エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は、この敗戦もまた競馬の一幕と受け止めていた。
「それが競馬です。カーインライジングは最高の走りができませんでした。勝ち馬には明らかにこのコースも馬場状態も合っていましたし、チャド・スコフィールド騎手の騎乗も見事でした」と話した。
エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏によると、香港の競馬ファンがジ・エベレスト1レースだけに投じた金額は1億1300万香港ドル(約22億円)に達し、海外馬券発売として過去最高を記録したという。カーインライジングが香港の馬券市場でいかに大きな存在となっているかを、改めて示す数字となった。
ジ・エベレストデーのランドウィック競馬場は、絶好の青空に恵まれた。オーストラリアの競馬ファンはカーインライジングのぬいぐるみを携え、おしゃれなネクタイや色鮮やかなスーツで、この日のために着飾っていた。
エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏は開催の盛り上がりにも言及。「いつも一つの手本となるイベントだと思います。競馬場を訪れる若い人たちに、競馬への新たな関心を持ってもらう機会になっていますし、素晴らしい雰囲気でした」とコメントした。
カーインライジングが前回敗れたのは、2024年1月21日だった。シャティン競馬場で行われたクラス3・ハンデ戦で、ジョン・サイズ調教師が管理し、ジェームズ・マクドナルド騎手が騎乗したヴンダバーにアタマ差で敗れた。
その後、昨年のジ・エベレスト制覇を含め、怒涛の21連勝を記録。ジ・エベレストの最多勝馬は、2017年と2018年のレースを連覇し、同レース唯一の2勝馬であるレッドゼル。カーインライジングが今年勝利すれば最多勝に並んだが、その記録はお預けとなった。
ヘイズ師は、カーインライジングがジ・エベレストに再挑戦する可能性を否定しなかった。
「シーズンはまだ始まったばかりですし、来年また戻ってくるかもしれません」
エンゲルブレヒト=ブレスゲス氏も同様に、3度目のジ・エベレスト挑戦を否定しなかった。カーインライジングの再挑戦についての可能性を尋ねられると、「駄目な理由がないですよね?」と答えた。