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1か月前まで時計を巻き戻そう。8月初旬、欧州が熱波に見舞われるなか、その名にふさわしいサンゴッデスがエイダン・オブライエン調教師に今年15勝目のG1タイトルをもたらした。バリードイルの名伯楽は、まさに破竹の勢いだった。

メディアの関心は、オブライエン師が年間G1最多勝記録の28勝を更新する「かどうか」ではなく、記録をどこまで伸ばすかに移っていた。

しかし、競馬というスポーツでは、何ひとつ当然と思ってはならない。それから欧州では14のG1が行われたが、オブライエン師は今も15勝のまま。圧倒的な強さを見せていた3歳勢も精彩を欠いている。

サンゴッデスがG1・フェニックスステークスを制して以降、オブライエン師のバリードイル勢には二つの大きな波乱があった。仏二冠牝馬のダイヤモンドネックレスは前走のドーヴィルで無敗記録が途切れ、クラシックを制した牡馬のコンスティテューションリバーは、ヨークのG1・英インターナショナルステークスで3着に敗れた。

当時、コンスティテューションリバーは欧州最強の3歳馬と称されていた。その一戦で同馬を破ったジャドモントの自家生産馬、アイテムは今、自らがその評価に値すると力強く訴えている。両馬がG1・愛チャンピオンステークスで再び顔を合わせる今週末、実に興味深い対決となる。

アイテムの鞍上を務めるコリン・キーン騎手は、「ヨーク(英インターナショナルS)でのコンスティテューションリバーは、いろいろとうまくいかなかったのだと思います」とIdol Horseに答えた。

「おそらくライアン(ムーア騎手)が望んだ以上にいいスタートを切り、コースを横切る道路に差しかかったところでスイッチが入ってしまいました。道中の大半を必要以上に高いギアで走っていたので、今度はすべてをうまくこなせるようにしてくるはずです」

「もちろんコンスティテューションリバーは非常に強い馬ですし、ヨーク以前にはそれを証明していました」

「ただ、アイテムが期待を裏切ったのは一度だけです。エプソムの英ダービーで馬場がかなり悪化した時でした。それ以外は勝ち続け、レースを重ねるごとに成長していますから、これからもその流れを続けてくれればと思います」

Item winning the 2026 G1 Juddmonte International Stakes
ITEM, COLIN KEANE (L); ALMAQAM, KIERAN SHOEMARK / G1 Juddmonte International Stakes // York /// 2026 //// Photo by Alan Crowhurst (Getty Images)

オブライエン師は、もちろん違う結果を願っているだろう。アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンドと、土曜にドンカスターで行われるG1・英セントレジャーは、例年バリードイル勢が好成績を挙げる舞台だ。アイルランドのチャンピオントレーナーであるオブライエン師としては、秋へ向けて弾みをつけたいところである。

コンスティテューションリバーが雪辱を果たせば、オブライエン師にとって大きな意味を持つ勝利となり、主力3歳勢の思わぬ失速に歯止めをかけるきっかけにもなるかもしれない。

夏の終盤に入ってからは、英ダービー馬のクリスマスデーがG2・グレートヴォルティジュールステークスで敗れ、G1・愛2000ギニーを制したグスタードがG1・ムーランドロンシャン賞で完敗。愛ダービー馬のベンヴェヌートチェッリーニも、G2・ニエル賞で大敗を喫している。

同じ土曜日、クリスマスデーは、ドンカスターのG1・英セントレジャーで名誉挽回を狙う。また、オブライエン厩舎からは英1000ギニー馬のトゥルーラブと、愛1000ギニー馬のプリサイスが、レパーズタウンのG1・メイトロンステークスに出走する。

オブライエン師が大レースで勝利から遠ざかる一方、キーン騎手とアイテムを管理するアンドリュー・ボールディング調教師は、8月に大きな実りを得た。プリサイスを下し、G1・ロートシルト賞を制したブルーボルトも絶好調。メイトロンステークスでは手ごわい相手となる。

前述のキーン騎手は、「ブルーボルトはとても力強く、馬格にも恵まれています。牝馬というより牡馬のように見えるほどです」と、ジャドモントの4歳牝馬について話した。

「スタートが良く、楽に追走でき、巡航速度も速いうえ、そこからさらに脚を伸ばせます。今年はほとんど非の打ちどころがありません」

「ここ2走は、追われると少し左へ寄るところがありました。その点、左回りのレパーズタウンはとても合うと思いますし、いい枠を引いてほしいですね」

「ただ、エイダン(オブライエン調教師)は牝馬2頭を出走させるようです。トゥルーラブは、ここで前哨戦を勝った時の内容が明らかに素晴らしいものでした」

コンスティテューションリバーは、リステッド・ディーステークス、仏ダービー、エクリプスステークスと無敗で勝ち進んだ。同世代の水準が例年ほど高くないと見られる年にあって、当初は、シーズンを通して王者の称号を手にできる唯一のクラシック牡馬と目されていた。

アイテムは唯一の敗戦となった英ダービーから立ち直り、今ではクラシック勝ち馬たちを上回るほど成長しているように映る。いずれにせよ、今年の欧州3歳牡馬世代の水準は、良くても例年並みといったところだ。

「シーズンを通して、どの馬にも好不調の波があったのだと思います。ただ、自分の馬について言えば、英ダービーにははっきりした敗因がありましたし、それ以外は毎回きちんと力を出しています」とキーンは言う。

一方、オブライエン師には今後も欧州で狙えるG1が32あり、そのうち8競走が今週末に行われる。さらに、これまで好成績を残してきたブリーダーズカップや香港国際競走をはじめ、世界各地にも大舞台が待っている。

名門厩舎には記録更新の可能性がまだ残されている。今週末に3歳勢が不振から脱すれば、再び軌道に乗ることは間違いないだろう。

1853年9月13日、ジョン・スコット調教師が管理するウェストオーストラリアンがドンカスターのセントレジャーを制し、英国初の三冠馬となった。同馬は2000ギニーと英ダービーを勝った後、セントレジャーにも挑んだ史上2頭目の馬だった。1843年に最初に挑戦したコザーストーンは敗れている。

2001年9月8日には、ファンタスティックライトとガリレオがG1・アイリッシュチャンピオンステークスの激戦で火花を散らした。

クールモアが擁する英ダービー、愛ダービー馬のガリレオは、アスコットのG1・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでゴドルフィンのファンタスティックライトを2馬身差で下していた。

しかしレパーズタウンでは、古馬のファンタスティックライトが雪辱を果たした。フランキー・デットーリ騎手が見事な手綱さばきを披露し、5歳の同馬が3歳のガリレオをアタマ差で退けた。

アメリカのG3・デルマージュベナイルターフステークスは、これまでにも実力馬を送り出してきたが、スターと呼べる馬はまだ出ていない。

マッキノンとダディーディーティーは、このマイル戦を勝った後にG1・ブリーダーズカップ・ジュベナイルターフで好走し、ボウイズヒーローは後にG1を2勝した。しかし大半の勝ち馬は、そのまま表舞台から姿を消している。

それでも、今年のオブザーブドの勝ち方には、大いに目を引くものがあった。

鹿毛牡馬のオブザーブドは、フアン・ヘルナンデス騎手を背に後方2頭の一角を追走した。直線入り口で差を詰めて外へ持ち出すと、手前を替えて鋭く加速し、先頭へ。ゴール間際でもう一度手前を替え、3/4馬身という着差が示す以上に余力がある印象を残した。

1か月前にローカル開催のインディアナポリスで挙げた未勝利戦勝ちから、大きく前進する内容だった。

オブザーブドを管理するジョナサン・トーマス調教師は、かつてトッド・プレッチャー調教師の助手を務めた人物である。名門のロークビーファームで、黄金時代を知る最後の名ホースマンたちに囲まれて育ち、すでにG1トレーナーとして実績も残している。

父にケンタッキーダービー馬マンダルーンを持つ同馬は、昨年のキーンランドセプテンバーセールで24万米ドル(約3700万円)で落札された。母は未出走で、過去に二度セリに上場され、いずれもごく安値で取引された。

しかし、オブザーブドの牝系には特別なものがある。ジャドモントファームの血だ。

2代母のジャイブは英国のG1・フィリーズマイルで2着に入り、G1・英1000ギニーでは中団で入線した。3代母は、ほかならぬ名繁殖牝馬のスライトリーデンジャラスである。その産駒には欧州最優秀マイラーのウォーニング、英ダービー馬コマンダーインチーフ、愛ダービー2着のディプロイ、G1馬ヤシュマクなどがおり、重賞・リステッド競走で3着以内に入った馬は8頭に上る。

オブザーブドは、まだ完成途上にある。この一流の血を受け継いでいるなら、今後さらに大きく成長する余地があるはずだ。

OBSERVED, JUAN HERNANDEZ / G3 Del Mar Juvenile Turf Stakes // Del Mar /// 2026 //// Video by Del Mar Racing

マカイビーディーヴァステークスデー
フレミントン(オーストラリア)、9月12日

フレミントンの春シーズンは、同競馬場で今年最初のG1となる芝1600mのマカイビーディーヴァステークスを迎え、いよいよ本格化する。

9歳のミスターブライトサイドは、2週前のコーフィールドのG1・メムジーステークスで始動して2着に入り、このレース4連覇に挑む。しかし、今年の豪州秋シーズンにG1・ランドウィックギニーとG1・ドンカスターマイルを制した実力牝馬のシーザアリバイが立ちはだかり、厳しい戦いとなる。

現在G1・コックスプレートの前売り1番人気となっているサーデリウスも出走し、普段ミスターブライトサイドの鞍上を務めるクレイグ・ウィリアムズ騎手が騎乗する。

アイリッシュ・チャンピオンズ・ウィークエンド
レパーズタウン・カラ(アイルランド)、9月12・13日

レパーズタウンとカラで2日間にわたりG1が7競走行われる今週末は、見逃せない開催となる。

土曜日にはアイテムとコンスティテューションリバーが対戦するG1・愛チャンピオンステークスに加え、牝馬限定のマイルG1・メイトロンステークスも行われ、昨年の勝ち馬フォールンエンジェルが今年飛躍したブルーボルトを相手に連覇を狙う。

また、今年からG1に昇格した2歳馬の9ハロン戦、G1・ゴールデンフリースステークスも行われる。

日曜日にはアイルランド最高峰の短距離戦、G1・フライングファイブステークスが行われるほか、G1・愛セントレジャーでは長距離王者のスカンジナビアが断然の1番人気となる見込みだ。2歳牡馬のトップクラスはG1・ヴィンセントオブライエンナショナルステークスへ、2歳牝馬のトップクラスはG1・モイグレアスタッドステークスへ向かう。

英セントレジャーデー
ドンカスター(イギリス)、9月12日

4日間にわたるドンカスター開催の頂点に位置するのが、1776年創設で世界最古のクラシック、G1・英セントレジャーである。

昨年はスカンジナビアが快勝し、エイダン・オブライエン厩舎が3連覇を達成した。今回は英ダービー馬のクリスマスデーを送り込み、同師は通算10勝目を目指す。ただし、英ダービー馬による英セントレジャー制覇は、1987年のリファレンスポイントを最後に途絶えている。

女性騎手がこのレースを勝ったこともまだなく、サフィー・オズボーン騎手はジョセフ・オブライエン厩舎のハイウェイマンで歴史的快挙に挑む。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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