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香港の調教師リーディングを勝っても賞金は出ない。1セントもない。それでも、そこにあるのは純粋な誇りと名誉だ。この街の調教師は誰もが、その肩書きを実績として残したいし、あのボードに自分の名を刻みたいし、チャンピオンの肩書きも手にしたい。

そして、もうひとつ見落とされがちなことがある。リーディングは、最も強い馬を持つ厩舎が勝つとは限らないということだ。G1勝利もクラス5での勝利も、価値はまったく同じ1勝。オーストラリアなどと違い、香港の調教師には管理頭数の上限がある。つまり、厩舎の1頭1頭すべてが重要になる。厩舎の構成そのものがリーディング争いを左右し、今年のような大接戦なら、それが勝敗を左右する可能性がある。

残り開催は26。上位5人の差はわずか7勝だ。48勝でマーク・ニューナム調教師が首位、キャスパー・ファウンズ調教師が47勝でぴたりと続き、ダニー・シャム調教師、デヴィッド・ヘイズ調教師、フランシス・ルイ調教師も十分圏内にいる。ジョン・サイズ調教師は首位から13勝差の6番手だ。

では、サイズ師から見ていこう。

サイズ師に何ができるかは分かっている。現チャンピオンで、タイトルは13回。香港であれほど勝ち星を固め打ちできる調教師は他におらず、簡単には候補から外せない存在だ。ただ、ここからはニューナム師とファウンズ師の1勝に対し、自分は2勝ずつ積み上げるような競馬を続けなければならないかもしれない。残り26開催でそれを維持するのは、さすがに厳しい。しかも検疫を終えたばかりの新規入厩馬が7頭いて、おそらく今季中は走らない。レーティング80超の馬も9頭おり、使える番組は限られる。私はサイズ師を候補から外したい。

フランシス・ルイ師は41勝で、厩舎も好調だ。ただ、陣容が上級条件に偏りすぎている。レーティング80超が13頭では多すぎる。走れるレースが足りないからだ。レーティング81のホットディライトという楽しみな若駒はいるが、コパートナープランスやチェンチェングローリーのような馬たちは、毎回のように怪物級と当たるレーティング帯に留まっている。ルイ師も候補から外したい。

ダニー・シャム師は、追う立場の中では最もバランスの取れた陣容だ。これは見逃せない強みだ。67頭を抱え、新規入厩馬は1頭だけ。レーティング80超は5頭、クラス5は6頭。厩舎全体がしっかり動いていて、守備範囲も広い。もちろんロマンチックウォリアーもおり、あと2レースでは圧倒的人気になる可能性が高い。ただ、顔ぶれを見渡すと、終盤に2勝、3勝と立て続けに勝てそうな有望株が足りない気がする。本当にプレッシャーをかけるには、シーズン終盤に連勝を重ねる馬が何頭か必要だが、そこが見えてこない。

ヘイズ師はリーディングの勝ち方を知っている。過去に勝っているからだ。ただ、厩舎の顔ぶれを見る限り、すでに有力な手駒はあらかた使ってしまった印象がある。今季の出走頭数は全調教師で最多だが、終盤に浮上するために必要な有望な若駒がやや乏しい。巻き返すには1開催での固め打ちが何度か欲しいが、その絵が見えてこない。

Luke Ferraris, Mark Newnham and wife Donna celebrate My Wish's win
LUKE FERRARIS, MARK & DONNA NEWNHAM / Hong Kong Classic Mile // Sha Tin /// 2025 //// Photo by HKJC
Joao Moreira and Caspar Fownes celebrate a Happy Valley four-timer
JOAO MOREIRA, CASPAR FOWNES, RONAN FOWNES / Happy Valley // 2026 /// Photo by HKJC

そうなると残るのはニューナム師とファウンズ師だ。両者とも素晴らしいシーズンを送ってきた。そして、ここは言い切っていい。リーディング争いは実質この2人になるだろう。

鍵になるのは、どちらの厩舎も上位層ではなく下支えの部分だ。そして、そこではファウンズ師に分があると私は見ている。

クラス5は、香港で最もレーティングの低い馬たちのクラスで、40以下が対象になる。勝っても名誉が伴うレースではない。だが、残り26開催ではそこでの一戦一戦が重みを帯びてくる。今季のクラス5では、ファウンズ師の方がニューナム師より強い。クラス5の勝利数はファウンズ師が10、ニューナム師は3だ。シーズン終盤はクラス5戦の数も増える。次の15開催にはクラス5戦が19レース組まれている。リーディング争いにおいて、G1とまったく同じ価値を持つ19回のチャンスだ。

ファウンズ厩舎にはクラス5の馬が6頭いて、そのすべてに勝機がありそうだ。しかも何頭かは、そのクラスでもう一度勝てる余地まである。対してニューナム厩舎でレーティング40以下は3頭しかおらず、1度勝てばすぐクラスを卒業する可能性が高い。残り2か月の時点で、これは構造上かなり大きな差だ。

しかもファウンズ師の厩舎は71頭で、ニューナム師の66頭より5頭多い。この5頭差は大きい。

ニューナム師も見事な仕事をしてきたが、彼が持つ唯一の明確な強みは転厩馬だ。そこが最大の拠り所になる。エースはすでに勝利しており、さらに2勝上積みできるかもしれない。エースウォーは2戦2勝で、もう2勝あっても不思議ではない。エースパワーはまだ未勝利だが、勝てる力はある。そしてクラス5のソアリングブロンコも、すでに1勝しており、もう一度勝てる可能性がある。もしこの4頭の転厩馬から6勝をひねり出せれば、それは十分あり得る話であり、ニューナム師にも優勝の目が出てくる。

では、リーディング獲得のためのラインはどこか。今年は例年より少ない勝利数になるはずだ。上位勢に勝ち星が偏ったリーディング争いだからである。過去10年でタイトル獲得に必要だった最少勝利数は67、最多は2016/17シーズンにサイズ師が打ち立てた94勝。私は68勝で足りると見る。今この時点で、残り26開催で20勝できると言われれば、ニューナム師はそれで十分と見るだろう。

ニューナム師自身、このタイトル争いは最終開催までもつれると言っている。もしそうなった場合、現時点で彼にはひとつ有利な材料がある。2着数がファウンズ師の32回に対して36回で、同勝利数の場合の第1優先項目になる。さらに3着数も40回対30回で上回っており、第2優先項目でも優位だ。

この争いはどちらに転ぶか分からない。それでも、もし今日この時点でオッズが出るなら、本命はファウンズ師になるだろう。まず厩舎の主戦にジョアン・モレイラ騎手がいて、すでにその効果も出ている。だがそれ以上に、クラス5の手駒が多いことが大きい。私はそこが効いてくると思う。

これこそ香港競馬の素晴らしさのひとつだ。主力馬たちがシーズンを終えたあとでも、なお見どころは尽きない。そして今年は、7月15日のハッピーバレー競馬場での最終開催まで、調教師リーディング争いが私たちを楽しませてくれそうだ。

このタイトルに賞金はない。そして最後に勝敗を分けるのは、香港で最も目立たない馬たち、つまりクラス5にいる馬たちなのかもしれない。

シェーン・ダイ、Idol Horseのコラムニスト。 オーストラリアとニュージーランドで競馬殿堂入りを果たし、1989年のメルボルンカップ(タウリフィック)、1995年のコックスプレート(オクタゴナル)では名勝負を演じた、G1・通算93勝の元レジェンドジョッキー。また、香港競馬では8年間騎乗し、通算で382勝を挙げている。

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