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ドバイの痛手は、香港競馬への追い風になりそうだ。

米国・イスラエルとイランの紛争が今もなお中東を混乱させるなか、水曜に関西空港からドバイへ向けて機体塗装のない航空機が飛び立った時点で、日本からドバイへ向かう馬は3頭にまで減っていた。

その3頭が出発したのは、翌週土曜のドバイワールドカップ開催で予定していたレースを取りやめた日本馬3頭が、数日前にドバイから帰国した直後だった。なお、ネッタイヤライは直前で回避となり、オーナー側は理由として紛争を挙げている。

一方、香港ジョッキークラブ(HKJC)は今週、4月26日にシャティン競馬場で行われるG1・3競走の登録馬を発表した。その中には、ドバイターフから矛先を変えた日本のトップホース、ミュージアムマイルも含まれている。

UAEは火曜に空域閉鎖を解除したが、主要航空各社はなお運航停止を続けており、エイダン・オブライエン調教師のバリードイル勢を含め、海外馬がなお現地入りできるかには疑問が残る。

レース後に予定されていたポップスターのパフォーマンスも中止となった。ドバイレーシングクラブは水曜、「現在の地域的な渡航混乱の影響により、残念ながらジェイソン・デルーロはドバイワールドカップでのパフォーマンスを行えなくなりました」と発表している。

ただ、G1・ドバイワールドカップは開催される公算が大きい。同じ声明では、次のように述べられている。「このイベントの30周年にあたる節目の夜、メイダン競馬場で皆さまをお迎えできることを楽しみにしています」

今年の開催は国際色こそ薄まるが、最大の注目は世界最強のダート馬、フォーエバーヤングだ。すでにドバイ入りしている前年王者で、米国調教馬・カタール所有のヒットショーが主な相手となる。

さらにドバイ側は、先週日曜にサンクルーで追い切られた芝の世界最強馬、カランダガンが、予定通りフランスから遠征してG1・ドバイシーマクラシックに向かうことにも期待を残している。一方、ドバイを代表するチームであるゴドルフィンは、一線級のオンブズマンとレベルスロマンスを送り込む。

カランダガンにはクイーンエリザベス2世カップの登録もある。だが、HKJCの国際競走の予備登録には、毎年のように実際には出走しない馬も含まれており、この騸馬もドバイへ向かうならその一頭と見ていいだろう。

Rebel's Romance wins the G1 Dubai Sheema Classic at Meydan in 2025
REBEL’S ROMANCE, WILLIAM BUICK / G1 Dubai Sheema Classic // Meydan /// 2025 //// Photo by Neville Hopwood

湾岸諸国では、連日の攻撃に底流の不安を抱えながらも、日常生活はある程度の平静を保って続いている。

ドバイレーシングクラブは、この紛争の期間中も競馬開催を続けてきた。発端は2月28日、イランによる報復のドローンとミサイルの波状攻撃がUAEのパトリオット防空システムによって撃ち落とされた時だった。当時のメイダンはスーパーサタデー開催の最中であり、ドバイ首長にしてゴドルフィン創設者のモハメド殿下も競馬場にいた。

隣国のカタールとバーレーンは一時開催を中断したが、ともに先週末に再開した。だが金曜にはバーレーンで、イランによる新たな攻撃を知らせる警報が鳴り、開催途中で約30分間の中断を余儀なくされた。

ドバイでも、首長国に向けてドローンとミサイルが発射され、メイダン開催は序盤で中断が入り、参加者は屋内へ避難させられた。

ドバイの関係者によれば、火曜には大きな爆発音が響き、防空システムが飛来する脅威を迎撃するなかで、壁や窓が揺れたという。

水曜にアルジャジーラが公表した最新の数字によれば、紛争開始以降の死傷者は、UAEで死者8人・負傷者157人、バーレーンで死者2人・数十人が負傷、カタールで負傷者16人・死者なし、サウジアラビアで死者2人・負傷者12人となっている。

一方、イラン側のデータでは、同国の死者は1444人、負傷者は1万8551人に上る。

ドバイへ向かった日本馬3頭のうちの1頭が、UAEダービーを目指すゴドルフィンのパイロマンサーだ。

ただ、日本のオーナーや調教師の間で紛争への懸念が広がったことで、G1・有馬記念馬のミュージアムマイルは、いまや香港のG1・クイーンエリザベス2世カップに向かう公算が大きい。

同レースには日本から26頭が登録しており、ドバイでの出走候補だったマスカレードボールに加え、ドバイ回避後はG1・大阪杯が第一候補となっているダノンデサイルも名を連ねる。

G1・チャンピオンズマイルに登録した日本馬11頭の中には、ドバイワールドカップ出走を予定していたが、今週日本へ戻ったルクソールカフェも含まれている。一方、香港チャンピオンズデーにも登録しているガイアフォースとルガルは、パイロマンサーと同じ便でドバイへ向かった栗東所属の2頭だ。

主役はフォーエバーヤングだが、日本勢の脇を固める顔ぶれはごくわずかになった。いま願われるのは、全馬・全関係者が無事にレースを終え、そろって帰路につくことだ。

競馬史に残る名牝セプターは、1902年3月18日、その年の初戦で敗れた。

異例のクラシック前哨戦として、ドンカスター競馬場のリンカーンハンデキャップに91ポンド(約41.3kg)を背負って出走したが、見習い騎手の拙い騎乗もあって、1歳上のセントマクローにハナ差で敗れている。

だがその年、セプターは英2000ギニー、英1000ギニー、英オークス、セントレジャー、セントジェームズパレスステークス、ナッソーステークスを制覇した。なお、オークスを勝つ2日前には、英ダービーで4着に入り、その10日前には蹄を打撲していたという。

米競馬殿堂入りの名手、ビル・シューメーカー騎手は、1949年3月19日、米カリフォルニア州のゴールデンゲートフィールズ競馬場で初騎乗を迎えた。ワクサハチーに騎乗し、8頭立ての5着だった。

豪州の伝説的名馬ファーラップは、1932年3月20日、メキシコのアグアカリエンテハンデキャップで北米唯一の出走にして最後のレースを制した。その翌月、このオーストラリアの英雄は不可解な状況のなかで命を落とした。

それから37年後の1969年3月20日、ダイアン・クランプ騎手はフロリダ州ガルフストリームパーク競馬場で初勝利を挙げた。彼女が北米で女性として初めて正式な競馬開催に騎乗してから、わずか数週間後のことだった。

今週末のゴールデンスリッパー制覇を狙うフィリップ・ストークス師について、アダム・ペンギリー記者が特集を寄稿。読み応え十分だ。オーストラリアの辺境の地での生い立ち、日本でタイキシャトルを育てた経験、ビル・モット師から学んだことまで、その歩みをたどる。

今週末は香港ダービーが開催される。HKJCが、高レーティングの既走輸入馬を購入する馬主への新たな優遇策を発表したいま、昨年同時期にジョン・ムーア師とキャスパー・ファウンズ師が、香港ダービーの出走馬の質と構成について語った特集をあらためて読み返したい。

今週のIdol Thoughtsでは、逃げ馬に乗る技術、ペースと馬場傾向を読む重要性、そして香港ダービーの逃げ馬と目されるナンバーズに騎乗するデレク・リョン騎手について、元騎手のシェーン・ダイ氏が自身の経験を元に解説する。

香港ダービーの週は、この地域とつながりの深かった二つのダービー、マカオダービーとシンガポールダービーがすでに消えたことも思い起こさせる。

マイケル・コックス記者は、シンガポールターフクラブが幕を閉じ、競馬が止まる前のクランジ最後のダービーを現地からリポートした。

3月14日のコロニアルダウンズ競馬場で未勝利戦を勝ち上がったエズムは、時計も優秀で、後続を大きく突き放す勝ち方だった。

シャドウェルがキーンランド・ノベンバーセールで48万5000ドルで落札したこの馬は、2月7日のガルフストリームパーク競馬場で行われた1400mの3歳未勝利戦でも先行力は見せていたが、最後は失速して10頭立て9着に敗れていた。

その経験は明らかに糧になっており、2戦目のエズムは大きく良化した。ブラッド・コックス厩舎の牡馬は今回も先行力を見せ、今度はフラヴィアン・プラ騎手を背に、そのまま後続を突き放して19馬身半差で圧勝。ダート1マイルを1分34秒23で走破した。

初戦から2戦目で見せたこれだけの良化ぶりに加え、半兄がG1・3勝馬のビーチパトロールという血統背景を踏まえれば、エズムが今後さらに上級条件へ進んでいくことは十分に期待できる。

ゴールデンスリッパーデー
ローズヒル(オーストラリア)、3月21日

アナベル&ロブ・アーチボルド厩舎の牝馬、G2・リースリングステークスを制したシャヤンが、豪州最大の2歳戦である第70回G1・ゴールデンスリッパーの前売り1番人気に浮上した。

対するのは、ランドウィック競馬場のG2・トッドマンステークスを制したビョルン・ベイカー厩舎の無敗馬パラドキシウムとなりそうだ。ベイカー厩舎には、デビュー2連勝を経てG2・スカイラインステークスで4着だったウォーウーヴンもいる。

さらなる有力な牝馬として、前走G1・ブルーダイヤモンドステークスを勝ったクリントン・マクドナルド厩舎のストライサンドが挙がる。

この日のカードにはG1が5競走組まれており、他にはランヴェットステークス、ローズヒルギニー、ジョージライダーステークス、ザギャラクシーなどが並ぶ。

ドバイワールドカップデー
メイダン(ドバイ)、3月28日

ブリーダーズカップクラシック勝ち馬で、サウジカップ2勝馬でもあるフォーエバーヤングが、G1・ドバイワールドカップの主役だ。地域情勢が緊迫するなかでも、開催は行われる見通しとなっている。

矢作芳人厩舎の5歳馬は、昨年このレースでヒットショーの3着に粘っており、そのヒットショーは今週すでにドバイ入りした。

この日のカードには、G1・アルクオーツスプリント、G1・ドバイゴールデンシャヒーン、G1・ドバイターフ、そして昨年の世界最強馬・カランダガンが出走する見込みのG1・ドバイシーマクラシックが組まれている。

オーストラリアンカップデー
フレミントン(オーストラリア)、3月28日

G2・ブレーミーステークス、G2・ピーターヤングステークスと連勝してきたバードマンは、G1・オーストラリアカップの有力候補と目されている。

対抗には、近年G1・オールスターマイルを2勝したトムキトゥン、そして大逃げ牝馬として知られるプライドオブジェニがいる。2000mで争われるこのレースは、マカイビーディーヴァ、ロンロ、ボーンクラッシャー、ダルシファイといった名馬たちが勝ち馬に名を連ねてきた。

タンクレッドステークスデー
ローズヒル(オーストラリア)、3月28日

この日の中心はG1・タンクレッドステークスだが、カードにはオークスへ向かう重要な前哨戦のG1・ヴァイナリースタッドステークスも組まれている。

さらに、有望なPP(既走輸入馬)を探す香港バイヤーが大注目のレース、G2・タロックステークスも行われる。

タンクレッドステークスには、昨年の勝ち馬であり、2023年にはG1・ランヴェットステークスとG1・クイーンエリザベスステークスも制した英国遠征馬のドバイオナーが出走する見込みだ。

元アイルランド所属のヴォーバンも、前走のG3勝利で弾みを付けて挑んでくる可能性があり、ほかの有力候補にはサーデリウスとアエリアナがいる。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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