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クリスチャン・デムーロ騎手は、日曜日のG1・有馬記念で雪辱を期す一戦に臨む。

一年前、レガレイラが制した年末のグランプリ。イタリア出身の名手は、シャフリヤールで勝ち馬にハナ差及ばずゴールしたことで「もしも」の悔いに苛まれることになった。

その後、シャフリヤールは種牡馬入りしたが、レガレイラは4歳となって戻ってきた。いまやキャリア最高の状態にあるように見える、デムーロは、出走する3歳勢では最有力の存在と目されるミュージアムマイルを相棒に、レガレイラへ挑む準備を進めている。

ミュージアムマイルは昨年4月、中山の2000mで行われた牡馬クラシックの初戦、G1・皐月賞を制し、クロワデュノールとマスカレードボールに先着した。その後、ダービーでは2400mへ距離を延ばし、1着2着がそのライバルだったなかで、同馬は6着に終わった。

シーズン後半戦の初戦、G2・セントライト記念を勝つと、さらに2000mのG1・天皇賞(秋)では、マスカレードボールの2着に入った。

ダービーがミュージアムマイルにとって最長距離の経験であり、また、戦績のなかで唯一の“傷”でもある以上、有馬記念の2500mをこなせるのかという懸念が生まれるのは当然だ。だが、2200mのセントライト記念での勝利と、日曜の舞台が、デムーロに一定の自信を与えている。

「中山ならこなせると思います。小回りコースですから。だから問題はないと思います。距離の不安は常につきまといますが、このコースならやれると信じています」

そして、マスカレードボールが先月のG1・ジャパンカップで、フランスの王者カランダガンに僅差まで迫って内容を裏づけたことで、デムーロは3歳世代のレベルは高いと考えている。

「(世代の)レベルは本当に、本当に高いと思います。前走では、マスカレードボールから1馬身差ほどしかありませんでした。そのマスカレードボールは、世界最強の馬を相手にジャパンカップでアタマ差の2着でした」

Mickael Barzalona and Calandagan winning the 2025 Japan Cup
CALANDAGAN, MICKAEL BARZALONA / G1 Japan Cup // Tokyo Racecourse /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

今年、デムーロは日本での短期免許を再び取得すると、ここまで31勝の大活躍。1週前のG1・香港マイルではソウルラッシュで2着に入り、その流れで先週はカヴァレリッツォでG1・朝日杯フューチュリティステークスを制した。

「いいレースをしたいと思います。去年はシャフリヤールで勝ち馬に僅差で及ばず、悔しい結果だったので、今年はリベンジできればと思っています」

ただし、ミュージアムマイルにとって簡単な仕事ではない。レガレイラはG2・オールカマー、そしてG1・エリザベス女王杯の勝利を経て、明らかにピークの状態でこのレースへ向かうように見える。彼女は、有馬記念の出走馬を決めるファン投票で612,771票を集め、圧倒的な1位となった。

そして、このレースで牝馬として史上初となる連覇を成し遂げるべく、歴史の壁に挑戦する。

有馬記念のメンバーには、2024年のG1・東京優駿勝ち馬ダノンデサイルも名を連ねる見込みだ。彼は昨年、有馬記念で3着に入り、春にG1・ドバイシーマクラシックを制して以降は、日本の古馬路線を牽引する“スター”になるかに見えた。

8月、ヨーク競馬場へのG1・英インターナショナルステークスでは不本意な結果に終わったが、復帰戦のジャパンカップで3着に入った。その一戦で状態がきっちり整ったはずで、日曜の試練へ向けても、仕上がりはちょうど良いところに来ているだろう。

今週末の日本で行われるG1は、有馬記念だけではない。土曜の中山では、JRAの2歳三大競走の最後を飾るホープフルステークスが組まれ、月曜の大井では、地方競馬が誇る年末の大一番、東京大賞典を開催する。

ホープフルステークスは、スター候補を多く送り出してきた。2年前のレガレイラ、昨年のクロワデュノール、そしてもちろん2019年の三冠馬コントレイルが、その代表例だ。今年の2000m戦も、同じようにスターとなる可能性を秘めた若駒が揃っている。

吉岡辰弥調教師は、先週末のG1・朝日杯フューチュリティステークスをカヴァレリッツォで制したばかりで、今週は、すでに前走でG3・京都2歳ステークスを勝って距離実績を示しているジャスティンビスタを送り出す構えだ。

ホープフルステークスが現行の形で再スタートした2014年以降、同一年にこの2レースを制した調教師はただ1人。9年前の藤沢和雄だけである。

Team Cavallerizzo pose for a photo after winning the Asahi Hai Futurity Stakes
TEAM CAVALLERIZZO / G1 Asahi Hai Futurity Stakes // Hanshin /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

須貝尚介調教師が管理するショウナンガルフは、昨夏の新馬戦での7馬身差勝ちと、9月のG3・札幌2歳ステークス勝利を背景に、人気が確実だ。

さらに、中内田充正が管理するアンドゥーリルもいる。前走は、同じく1800mで行われたリステッドのアイビーステークスを勝ってきた馬だ。そして友道康夫が管理するラヴェニューは、デビュー戦で5馬身差の圧勝を見せ、強烈な勝ちっぷりだった。

一方、大井のダートでは、クリストフ・ルメールが、JBCクラシック覇者ミッキーファイトに騎乗し、東京大賞典へ向かう見込みだ。

このレースでは、3歳馬同士の再戦、すなわちジャパンダートクラシックで1着・2着だったナルカミとナチュラルライズの再対決も実現するかもしれない。ナルカミは、G1・チャンピオンズカップで13着に敗れた後、名誉挽回の一戦に臨む。

2013年12月22日、ハリウッドパーク競馬場は閉場前最後の開催日を迎えた。

1938年に開場したこの競馬場で、歴史に名を残す最後の勝ち馬となったのは、ウラジミール・セリン調教師が手がけ、コーリー・ナカタニが騎乗したウッドマンズラック。写真判定の接戦をわずかに制し、最後の勝ち馬としてその名を刻んだ。

2016年12月25日、クリスマスの日は、G1・有馬記念でのスリリングな激戦という贈り物をもたらした。キタサンブラック、ゴールドアクター、そして最後に差し切ったサトノダイヤモンドによる三つ巴の戦いだ。

中山の大観衆が耳をつんざくような歓声を生み出すなか、クリストフ・ルメールは直線の半ば過ぎでサトノダイヤモンドを奮い立たせ、クビ差で勝利。名伯楽・池江泰寿に、この年末のグランプリでの“史上最多”となる4勝目をもたらした。

2022年12月26日、ファントゥドリームがサンタアニタのG1・ラブレアステークスを制し、ボブ・バファート調教師にこのレースでの記録を更新する9勝目を与えた。3歳牝馬限定の7ハロン戦である同レースで、バファートが初勝利を挙げたのは、そこから30年前の1992年12月27日。当時はG3として行われ、アーチズオブゴールドで勝っている。

そして2021年12月26日、あのフライトラインがサンタアニタのマリブステークスでG1初出走を果たした日だった。

彼は11馬身半差で圧勝し、その後も、どの馬も近づけないまま、3戦をさらに勝ち切っていく。彗星の如く短い6戦無敗のキャリアは、2022年11月のG1・BCクラシック制覇で幕を下ろした。

元トップジョッキーで、香港競馬のエキスパートでもあるシェーン・ダイ元騎手がIdol Horseに寄せた週間コラムでは、ザック・パートン騎手とジェームズ・マクドナルド騎手という歴史的名手2人を比較し、もし両者が香港のリーディング争いで真正面からぶつかったら、どんな戦いになるのかを考察する。

松山弘平のここ数年の安定感は、今季のJRA騎手リーディングで3位へと押し上げる原動力となった。Idol Horseの上保周平記者が、今年G1・2勝の松山騎手に話を聞き、馬を最優先にする哲学と謙虚さが、今季の躍進を支えていることを掘り下げる。

来週月曜、大井競馬場を代表するの一戦が行われるのを前に、Idol Horseが昨年掲載した、大井の達城龍次の紹介を再掲載。当時は黒と桃色のギザギザ柄の勝負服を使っていたが、現在は淡いグレーと白のデザインへと替えている。

クレパスキュラーは、これまでの2戦で高い素質を示している。最近の勝利は、先週末に中山でクリストフ・ルメール騎手を背に、ひいらぎ賞を2馬身半差で勝ったものだった。

そのパフォーマンスは、この馬の資質を浮き彫りにすると同時に、気性面の課題も示した。ルメールは、馬に落ち着きと集中を求めながら手を焼く場面もあったが、いったん行かせると切れ味は強烈で、最終的には大きなリードを残して勝利を収めた。

その後、栗田徹調教師は、リオンディーズ産駒の「ポテンシャルはものすごい」と語りつつも、「課題が多い」とも述べ、「自分をコントロールできなくなる瞬間がある」と指摘した。

新馬戦でクレパスキュラーに騎乗して勝利へ導いたレイチェル・キング騎手と、ルメールの両者は口を揃えて、折り合い面を課題に挙げる。ルメールはひいらぎ賞の後、「引っかかっても伸びているし、強い馬です」と語った。

クレパスキュラーが自分のパワーをコントロールできるようになれば、来年のクラシックへ向けた一線級の存在になっていくかもしれない。

Crepuscular winning at Nakayama under Christophe Lemaire
CREPUSCULAR, CHRISTOPHE LEMAIRE / Hiiragi Sho // Nakayama /// 2025 //// Photo by @JunKeiba3F

ホープフルステークス
中山競馬場、12月27日

ホープフルステークスは2014年に現行の名称と条件となって以降、2歳2000m戦として、のちの三冠馬コントレイルをはじめ、ダービー馬のレイデオロとクロワデュノール、皐月賞馬のサートゥルナーリア、そして現役のスター牝馬・レガレイラといった勝ち馬を送り出してきた。

サートゥルナーリアは先週のG1・朝日杯フューチュリティステークス勝ち馬カヴァレリッツォの父でもあり、今週も同産駒のアンドゥーリルとジャスティンビスタが出走する見込みだ。さらに、無敗のショウナンガルフやラヴェニューも顔を揃える。

有馬記念
中山競馬場、12月28日

昨年の勝ち馬レガレイラは、連勝を伸ばして“3連勝”で年末のグランプリを締めくくることを狙うとともに、牝馬として史上初となる有馬記念連覇に挑む。

相手には、G1・皐月賞馬ミュージアムマイルという3歳勢の有力馬に加え、今季のG1・ドバイシーマクラシック勝ち馬・ダノンデサイルが控える。ダノンデサイルは昨年のG1・東京優駿を制した4歳牡馬でもあり、同世代牡馬の“代表”としてこの一戦に臨む。

東京大賞典
大井競馬場、12月29日

有馬記念の翌日、注目は地方競馬の年末フィナーレ、G1・東京大賞典へと移る。昨年の覇者フォーエバーヤングをはじめ、東京大賞典4勝のオメガパフューム、そしてG1・ドバイワールドカップも制したウシュバテソーロといった歴代の名馬が名を連ねてきた。

今年はJpn1・JBCクラシックを制したミッキーファイトが中心の一角となり、強力な顔触れの中で戦うことになる。さらに、3歳勢のナルカミやナチュラルライズも虎視眈々と狙っている。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

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