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G1・コックスプレートの勝ち方を知り尽くしており、優れた牝馬で勝つ術も心得ている男と言えば、誰だろうか。そう、ヒュー・ボウマン騎手だ。

何しろ、彼は豪州史上最高の名牝と謳われるウィンクスの相棒として、ムーニーバレー競馬場のコックスプレートで前人未到の4連覇へ導いたのだ。土曜日、ボウマンは自身の最軽量の体重まで絞り、アエリアナとコンビを組む。ウィンクスの4分の1でいい、名牝の走りを再現したいと期待を寄せている。

香港を拠点にするオーストラリア出身のボウマンは、クリス・ウォーラー厩舎のアエリアナに騎乗したことはないが、直近8戦中の7戦がG1という戦歴は注視してきた。

中でも、4月のG1・オーストラリアンダービーでの牡馬撃破、そして休み明け初戦となったG1・ウィンクスステークスでは、同厩のスター牝馬、ヴィアシスティーナに相手にクビ差の2着。強豪相手に光る成績を残している。

その後は、G1・マカイビーディーヴァステークスでミスターブライトサイドの2着、G1・ターンブルステークスではサーデリウスの5着に入っている。

ボウマンはIdol Horseの取材に、「直接私が関わっているわけではありませんが、これまでのキャリアには感銘を受けています」とコメント。「今季は勝ち切れていないとはいえ、各レースに多くの価値がある走りを見せていますし、このレースに勝機を持って臨めると思います」と期待を述べた。

シドニーで4度のリーディングに輝いた45歳のボウマンは、今季で香港拠点3年目に入る。コックスプレートでは、4歳牝馬の斤量は55.5kgに設定されており、普段の体重からさらに落とす必要がある。今季の最低騎乗体重は、先週日曜のシャティン開催での125ポンド(約56.7kg)だった。

「自分の最低体重に迫っていますが大丈夫です。ただ、努力は要ります。大仕事ですが、それは騎手の仕事です。当日までに何をするかというより、この一週間ほど取り組んできたプロセスこそが重要なのです。ここまで規則正しい生活を送ってきました」

「香港に戻ってから体重を元に戻すプログラムに取り組んでおり、今回はその目標体重へ押し下げるための “良薬” になるかもしれません」

「肝心なのは規律です。食事管理と運動、そして十分な休息。休息はとても重要ですが、人はしばしば見落とします」

アエリアナの主な相手は、昨年の勝ち馬であるヴィアシスティーナ、同厩馬のバッカルー、G1馬牝馬のトレジャーザモーメントのほか、アトリション、ネポティズム、アンティノ、グローブ、ライトインファントリーマンだ。

「また戻って来られるのは素晴らしい気分です」とボウマン。「ムーニーバレーへ行く機会は、豪州時代でさえ多くはありませんでしたから、実に特別です。クリス(ウォーラー師)のために騎乗できるのもまた格別です。とはいえ、果たすべき仕事があります」

Winx defeats Humidor in Cox Plate
HUMIDOR, BLAKE SHINN; WINX, HUGH BOWMAN / G1 Cox Plate // Moonee Valley /// 2017 //// Photo by Vince Caligiuri

ウィンクスに熱狂的な歓声を送ったムーニーバレーの大観衆からのどよめき、それを再び聞く瞬間も心待ちにしている。あの歴史に残る名牝について、ボウマンはこう語る。

「感情は毎回違いました。初回は、その後の連覇時ほどの期待ではありませんでしたし、今回は2015年にウィンクスが初めてコックスプレートに出走した時と似た心持ちで臨んでいると感じています」

「ウィンクスを誰かと比べるつもりはありませんが、このコックスプレートというレースはある種のオーラがあって、走るたびにワクワクします。それを有利に活かせれば良いですね」

「とはいえ、結局は競馬であり、実力馬が揃っています。私たちはロスのない走りを心がけ、アエリアナが私たちに勝利をもたらすだけの実力を発揮してくれることを願うだけです」

「私たちを誇りに思わせるレベルで走ってくれるといいですね。そして、それが勝利に足る走りであることを願っています」

先週のG1・秋華賞は、日本の二大スター、日本競馬界を象徴的存在の武豊騎手と、JRAで7度のリーディングを獲得しているクリストフ・ルメール騎手が、その巧みな腕を存分に見せつけた。

武豊騎手は56歳の経験と巧緻を凝らし、15.5倍のエリカエクスプレスで主導権を握った。道中でもう少し折り合っていれば、2着以上もあったかもしれない。対するルメールもまた名手であり、武の仕掛けを読み、エンブロイダリーを好位で運んで直線で鋭く伸ばし、勝利をつかんだ。

今週日曜はJRA最後のクラシック、G1・菊花賞。ルメールは一番人気を争うエネルジコに騎乗し、武は伸び盛りのマイユニバースと再びコンビを組む見込みだ。後者は実力馬ながら、二桁オッズが見込まれる。

もし、両者がゴール前で真っ向勝負に持ち込めば、京都のスタンドは間違いなく最大級の歓声に包まれるだろう。さらに付け加えると、武は1988年以来このレースで最多5勝を誇り、対するルメールは直近9回で4勝と肉薄。2023年・2024年を制して現在連覇中で、三連覇の偉業が懸かる。

Christophe celebrating his Kikuka Sho win aboard Urban Chic
CHRISTOPHE LEMAIRE, URBAN CHIC / G1 Kikuka Sho // Kyoto /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

もっとも、今年はクラシックホースのミュージアムマイルとクロワデュノールはいずれも不在で、クラシック最終戦の菊花賞は混戦ムードだ。中内田充正厩舎のエリキングは川田将雅騎手とコンビを組み、死角が少ない。

前哨戦のG2・神戸新聞杯を僅差で制し、2着のショウヘイとともに上位争いが見込まれている。

1923年10月20日、ベルモントパーク競馬場で、ケンタッキーダービー馬と英ダービー馬のマッチレースという史上初の対決が行われた。

英ダービー馬のパパイラスは、ニューマーケットにあるグリーンロッジ・ステーブルのバジル・ジャーヴィス厩舎から船で大西洋を渡り、デヴィッド・J・リアリー厩舎のゼヴと『インターナショナルスペシャル』と題したレースで対決した。

競馬場に集まった観衆は7万人。ラジオで生中継され、映像は映画館で配給された。泥で泥濘んだダートで行われたマッチレースは、ゼヴが5馬身差の圧勝を飾った。

2012年10月20日、フランケルがアスコットのG1・チャンピオンステークスでシリュスデゼーグルを退け、重馬場で14戦14勝の無敗のまま現役を退いた。

1996年10月26日、カナダ・トロントのウッドバイン競馬場で二つの『初』が記された。ブリーダーズカップが初めて米国外で開催され、さらにリドジュスティスがG1・BCスプリントを制覇。ジェニーン・サハディがブリーダーズカップ勝ち馬を送り出した史上初の女性調教師となった。

1941年10月26日、田中和一郎厩舎のセントライトが菊花賞を制し、日本初の三冠馬となった。父はイギリスの名馬、英2000ギニー馬のダイオライトという血統だった。

アダム・ペンギリー記者は今週、レーシングNSWの審問の結果、G1ジョッキーのジェームズ・イネス・ジュニア騎手に25年間の騎乗停止が科された一件をスクープした。

同騎手は、性的暴行および複数のハラスメント事案について、5人の被害者から申し立てを受けていた。

南米最大級のレース、ラテンアメリカ大賞で感動的な勝利を手にしたジョアン・モレイラ騎手に、Idol Horseがインタビュー。家族に起きた不幸、そして家族ぐるみの絆で掴んだ勝利について語った。

世界トップスプリンターが、世界の舞台で輝いた。カーインライジングのジ・エベレスト制覇を、アダム・ペンギリー記者がランドウィックからレポート。香港とオーストラリア、異なる競馬文化が世界規模で交差した馬券市場で起きた “妙味” とは?

香港のリーディングトレーナー、デヴィッド・ヒル元調教師が、脳腫瘍との闘病の末、先週末にテキサスの自宅で亡くなった。

ヒル氏はシンガポールでも手腕を振るい、インド・マドラスで複数回リーディングを獲得したが、香港初の海外G1遠征馬であり、香港三冠馬のリヴァーヴァードンを手掛けた人物として歴史に名を刻んでいる。

2024年6月にはデヴィッド・モーガン記者の取材に応じ、1992年にシカゴのG1・アーリントンミリオンに出走した際の思い出を語っていた。

ガイアフォースは日本競馬でも指折りの個性派で、パドックで静かに周回するタイプではない。一方、その能力は一級品で、6月のG1・安田記念ではジャンタルマンタルの2着と力量を示した。

芦毛の同馬は、土曜の東京で行われたG2・富士ステークスの前もややテンションの高い面を見せたが、レースでは力を発揮。横山武史騎手に導かれて好発から行き脚よく前へ取りつくと、その後は地力としぶとさでジャンタルマンタルの追撃を退け、3年ぶりの重賞制覇を果たした。

今年の中内田充正厩舎は、若駒の層が厚い。亡きリバティアイランドを三冠牝馬へ導いた指揮官は、エピッククイーンという素質十分の2歳牝馬を新たに送り出した。

栗毛牝馬のエピッククイーンは父にエピファネイア、母にコスモポリタンクイーンを持つ良血馬だ。祖母はG2・ランカシャーオークスを2度制したバーシバで、母の半姉にはG1・英インターナショナルステークスを制したアラビアンクイーンがいる。

同馬のオーナーは、日本馬初のBC制覇を挙げたラヴズオンリーユーを所有していた一口馬主のDMMドリームクラブ。同クラブの所有馬としては、中内田師が初めて手掛ける管理馬でもある。

先週土曜の東京の新馬戦に、川田将雅騎手を背に2.7倍の1番人気に推されて出走。好スタートからハナを切って主導権を握り、道中に幼さを見せる場面はありつつも、残り200mでゴーサインに応えて加速。ムチを使わず追われてそのまま押し切り、半馬身差の勝利を収めた。

🇦🇺 コックスプレートデー
ムーニーバレー競馬場、10月25日
G1・コックスプレート(IFHAレーティング10位タイ)

G1・マイトアンドパワーSを制したグローブが頓挫で出走を回避したため、現状のコックスプレート出走馬は8頭に絞られた。明確な逃げ馬と目されていたグローブが不在になることで、レース展開にも変化が見られるかもしれない。

昨年の豪年度代表馬、ヴィアシスティーナは今シーズンに入って精彩を欠いている。一方、同じユーロン所有馬のトレジャーザモーメントにも不安は残る。G1・C.F.オーアSは鮮やかに制したものの、その後軽度の疝痛に見舞われると、復帰後2戦はいずれも人気を裏切っている。

🇯🇵 菊花賞
京都競馬場、10月26日
G1・菊花賞

今季最後のクラシックレース、G1・菊花賞は混戦模様だ。皐月賞馬のミュージアムマイルとダービー馬クロワデュノールの不在は大きい。

二連覇中のクリストフ・ルメール騎手はエネルジコに騎乗し、2023年のドゥレッツァ、2024年のアーバンシックに続く菊花賞3連覇を狙う。 また、ベテランの国枝栄調教師は定年を前に、アマキヒで最後の牡馬クラシック制覇に挑む。

有力馬のエリキング、ショウヘイ、そしてレッドバンデも出走馬に名を連ね、京都3000mのスタミナ勝負に臨む。

🇦🇺 ヴィクトリアダービーデー
フレミントン競馬場、10月1日
G1・ヴィクトリアダービー

ヴィクトリアダービーデーは、3歳馬の持久力を試す2500m戦のヴィクトリアダービーの名に由来するが、フレミントンの『ストレートシックス』と呼ばれる直線コースで行われるG1・クールモアスタッドステークスは、いまやオーストラリア有数の種牡馬選定レースとして位置づけられている。

このレースを6度制覇のクリス・ウォーラー調教師は、G1・ゴールデンローズステークスを制したバイヴァクトを送り込む予定だ。

同じくゴドルフィンブルーを背負う、フリードマン厩舎のテンティリスがバイヴァクトの前に立ちはだかる。ストリートボス産駒の同馬は、コーフィールドカップ当日のリステッド・ゴシックステークスで豪快な差し脚で勝利しており、最大の強敵と目されている。

🇺🇸 ブリーダーズカップ
デルマー競馬場、11月2日
G1・ブリーダーズカップクラシック(IFHAレーティング5位タイ)
G1・ブリーダーズカップターフ(同15位)
G1・ブリーダーズカップマイル(同36位)

今年も2年連続でデルマーが舞台。ブリーダーズカップの2日目まで残り2週間となり、看板レースのG1・ブリーダーズカップクラシックには早くも熱気が高まっている。

日本の英雄、フォーエバーヤングは悲願達成なるか。世界を転戦してきた同馬は、昨年のクラシックでの惜敗、さらにその前のケンタッキーダービーの悔しさを胸に挑む。矢作芳人調教師は3週間前、船橋競馬場で前哨戦を勝利し、場内を大いに盛り上げた。

想定される主な相手は、昨年クラシックで先着を許したシエラレオーネとフィアースネス、そして2025年のG1・ケンタッキーダービーとベルモントステークスを制したソヴリンティだ。

G1・ブリーダーズカップクラシックは、総額3,000万米ドル超の賞金が懸けられた全14レースの中核を成す一戦。日本や欧州の挑戦馬が、地元アメリカの強豪に挑む構図となる。

🇯🇵 天皇賞秋
東京競馬場、11月2日
G1・天皇賞(秋)(IFHAレーティング25位)

日本の古馬2000m戦の最高峰。夏の各路線や宝塚記念を経た実力馬が集い、国内中距離のチャンピオン決定戦であると同時に、ジャパンカップへの重要な前哨戦でもある。

今年は、宝塚記念でG1初制覇を飾ったメイショウタバルに、皐月賞馬のミュージアムマイルと日本ダービー2着のマスカレードボールという精鋭3歳馬が挑む構図。なお、毎日王冠(G2)を制したレーベンスティールは回避が発表され、マイルチャンピオンシップへ向かう。

🇦🇺 メルボルンカップデー
フレミントン競馬場、11月4日

最有力候補のサーデリウスが獣医検査で不合格となり、やむなく出走を回避したことが大きな話題となっている中、メルボルンカップの出走予定24頭の顔ぶれが固まりつつある。

先週、Idol Horseが報じたように、ダミアン・レーン騎手はシュヴァリエローズに騎乗することが決定。また、サイモン&エド・クリスフォード厩舎のメイダーンには、アンドレア・アッゼニ騎手に代わってジェームズ・マクドナルド騎手が騎乗することが明らかになった。

メイダーンは、コーフィールドカップで印象的な走りを見せ、メルボルンカップに向けた評価を高めた1頭だ。ヴァリアントキング、プレサージュノクターン、そして勝ち馬のハーフユアーズらも、フレミントンへ向けて前哨戦で存在感を示した。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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