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ジョアン・モレイラ騎手はIdol Horseの取材に対し、香港ジョッキークラブが申請を認めれば、キャスパー・ファウンズ厩舎の所属騎手として短期免許で騎乗する意向を明らかにした。また、股関節への新たな幹細胞治療により、「ここ3年間で最も体調が良い」と語った。

ブラジル出身のモレイラは、香港での9年間で4度リーディングジョッキーに輝き、“マジックマン” の愛称でファンを魅了した。しかし2022年11月、股関節の深刻な痛みと精神的ストレスを理由に、香港の通年免許を返上し、故郷のクリチバへと帰郷することとなった。

その後はブラジルを拠点に、世界各国のビッグレースで騎乗。香港にも短期参戦し、4月の香港チャンピオンズデーではファウンズ厩舎のファミリージュエルでクラス3を制するなど、直近2鞍ではいずれも勝利を挙げている。

現在42歳のモレイラは先週末から日本で短期免許を取得し、21鞍で6勝を挙げてG3・チャレンジカップを制覇。9月28日には中山競馬場で行われるG1・スプリンターズステークスで日本最強スプリンター、サトノレーヴに騎乗予定だ。さらに12月のG1・香港スプリントでも、香港滞在中のまま、同馬と再タッグを組む可能性がある。

Idol Horseは今週月曜日、ファウンズ師がモレイラを今年後半戦の短期主戦騎手として起用するため、香港ジョッキークラブ(HKJC)の幹部に非公式に打診したと報じた。

クラブはまだ正式な申請を受理していないが、ファウンズ師は火曜日に「数日以内に申請書を提出するつもりです」と語り、クラブ側からも前向きな反応があったことを示唆した。

モレイラはIdol Horseに対し「キャスパーのために短期間香港に戻って騎乗できるのは嬉しいです。勝ち星をたくさん挙げたいですね」 と語り、香港で通年免許を取るつもりはないことを強調した。

「故郷ブラジルこそ、私が望んでいた場所であり、幸せを感じられる場所です。海外で騎乗するチャンスは今もありますが、拠点はあくまでブラジルに置きたいと思っています。現状にはまったく不満はありません」

「香港では短期間ですが、キャスパーと厩舎の預けるオーナーたちのために全力を尽くすつもりです。今も良い騎乗ができていますし、勝率も非常に高い。香港は競争が激しいと分かっていますが、股関節への新しい治療を受けていて、怪我を抱え始めて以来、これほど良い状態はありません」

モレイラは、短期復帰について以前からファウンズ師と話し合っていたが、まずはブラジルのペランダ家が所有するリオ・イグアス牧場との契約を優先する必要があったという。

10月18日には、ガベア競馬場で行われるG1・ラテンアメリカ大賞で同牧場の馬に騎乗する予定だ。

「それが終われば、約60日間は離れても問題ありません。というのも、その間は私を必要とする大きなレースがないからです」

「香港に行くことでキャスパーの願いを叶えられるし、自分自身も思い出深い香港で、友人たちの前で再び騎乗できるという夢を実現できます」

4月のチャンピオンズデーで香港を訪れた際、モレイラはファウンズ師と会話を交わし、香港ジョッキークラブ幹部にも短期免許での復帰について軽く触れていたという。

「キャスパーはずっと前から、少しの期間でも香港に戻って彼の馬に乗ってほしいと言っていました。でも私は『ぜひ乗りたいが、時期が来たら』と答えていました。なぜならペランダ家との契約があり、彼らは私にとてもよくしてくれているからです」

モレイラはわずか2週間前にも、リオ・イグアス牧場のスタードイグアスでG1・イピランガ大賞を制覇したばかりだ。

「オーナーは約300頭もの競走馬を所有していて、主要なレースでは私を頼りにしています。私が彼らと交わした契約は、もし私が誰かと専属契約を結ぶ場合でも、好きな時に自由に別の場所へ行って騎乗できるようにするというものです。ありがたいことに、彼らはその願いを尊重してくれました」

「この3年間、香港を離れて以降は世界各地で騎乗し、ブラジル国外で多くの時間を過ごしてきました。香港を離れる時、怪我の状態から現役生活が長くは続かないかもしれないと感じていたので、残された時間で自由に世界を回りたいと考えていたんです」

モレイラが香港を離れた当初は、騎手人生が終わりに近づいていると感じていた。しかし再生療法により、キャリアは延命された。近年までは多血小板血漿(PRP)治療を繰り返し受け、血液を採取して血漿中の血小板を濃縮し、患部に注入して意図的に炎症を起こし、自然治癒力を促す痛みを伴う処置を行っていた。

だが、その効果が持続する期間は徐々に短くなっていったという。そこでモレイラは、自身の骨髄から細胞を採取・濃縮し、股関節に注入する侵襲性の高い幹細胞治療に切り替えた。

「これまで受けてきた治療の中で、ここまで効果があったものはありません。PRPは最初こそ6~8か月は効いていましたが、繰り返すたびにその効果の持続期間が短くなっていったのです。今回の治療は、これまでよりもはるかに良い結果が出ています」

「どれほど続くかは分かりませんが、できるだけ長くこの状態が保てることを願っています」

モレイラが短期免許で香港に復帰すれば、シャティンやハッピーバレーに再び “マジックマン” の妙技が戻ってくる。香港ファンにとって、この数週間は何よりも待ち望んだ時間となるだろう。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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