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日本で数々の記録を打ち立ててきたクリストフ・ルメール騎手は、フランスで輝かしいG1勝利を重ねた後、2015年からJRAの所属騎手として日本に戦いの場を移した。以来、彼は世界屈指のトップジョッキーとして不動の地位を確立している。フランス、日本、イギリス、アメリカ、オーストラリア、香港と、6か国でG1を制した実績は、まさに時代を代表する名手の証だ。

ルメールの強みは、馬への深い愛情と優れた感性に裏打ちされた騎乗技術にある。

馬の動きを直感的に読み取り、絶妙な手綱さばきとバランス感覚でリズムを伝える。また、レース展開を読む戦術眼と瞬時の判断力にも優れ、先行・差しどちらの形でも完璧なタイミングで仕掛けることができる。ゴール前の接戦で勝負を分ける強さも、彼が世界的名手と称される理由のひとつだ。

Urban Chic wins Kikuka Sho

クリストフ・ルメールこと、本名クリストフ=パトリス・ルメールは1979年5月、シャンティイ近郊で生まれた。パリ北部に位置するシャンティイは、同国を代表する競馬の街として知られている。

父のパトリス・ルメールはパリ地区のトップ障害騎手であり、アンドレ・ファーブルのもとで手綱を取り、通算500勝以上を挙げた名手だった。ルメールは10歳までシャンティイで育ち、父と同じく障害騎手になることを望んでいたが、父が騎手を引退したのを機に一家はフランス南西部へ移り住み、その後は競馬からやや距離を置くようになった。

しかし、15歳のときに再び競馬への関心が芽生えた。騎手学校に進むのではなく通常の教育課程を修了することを選び、その後アマチュア騎手として競馬キャリアをスタートさせた。そして1999年、19歳でファーブル厩舎からプロ騎手としてデビューした。

初めて日本で短期免許を取得したのは2002年12月から翌年3月2日までの3か月間、その間に15勝を挙げた。2005年のG1・有馬記念ではハーツクライを勝利に導き、さらに2006年のG1・ドバイシーマクラシックも制して、日本競馬との絆を強固なものにした。

フランスに戻り、フリーの騎手として活動したルメールは、2003年のジャンプラ賞でヴェスポンに騎乗してキャリア初のG1制覇を達成。その後の2年間は名牝と謳われるディヴァインプロポーションズの主戦騎手として大きな注目を浴び、さらに2011年にはドゥーナデンでメルボルンカップを制し、急遽の代打騎乗ながら世界的な脚光を浴びた。

Christophe Lemaire and the Aga Khan VI

ルメールはアガ・カーン殿下の契約騎手を4年間務めたが、その契約は2013年末で更新されなかった。

2014年にかけてフランスでの大レース騎乗の機会が減少するなか、彼は日本で築いていた足場に軸足を移し、社台ファームの吉田照哉氏の強力な支援を受けることとなった。

2015年2月には、同じく外国出身騎手のミルコ・デムーロとともに、日本中央競馬会(JRA)の通年騎手免許試験に合格し、日本人以外での史上初の通年騎手として歴史を作った。両者はそれぞれ日本を拠点とすることを決意し、ルメールは妻のバーバラや2人の子どもとともに京都へ移住。その後の彼のキャリアは、さらなる高みへと上り詰めていくことになる。

ルメールの日本での初騎乗は、2002年12月7日の中京競馬場・第2レースだった。2歳新馬戦で、瀬戸口勉厩舎のクラシカルヴォーグに騎乗し、15頭立ての12着に終わった。この馬は中央競馬所属時に通算8戦したが、10着以内に入ったのはわずか1度だけだった。

ルメールの日本での初勝利は、その翌日、2002年12月8日の中京競馬場で挙げている。浅見秀一厩舎のヤマニンロータスに騎乗し、2歳未勝利戦(第2レース)を勝利した。ルメールがこの牝馬に騎乗したのはこの1度きりであるが、中央競馬所属時の全16戦のキャリアにおいてもこの勝利が唯一のものだった。

Durezza and Christophe Lemaire win G1 Kikuka Sho

ルメールの偉業は数え始めればきりがない。2017年には日本人以外として初めてJRAのリーディングジョッキーに輝き、2018年には武豊騎手が持つ年間最多勝記録を更新して215勝という新たな基準を打ち立てた。また、2016年11月6日には、武豊のJRA記録に並ぶ1日8勝を達成している。

しかし、最大の偉業を挙げるとすれば、異国の地でキャリアを築き直し、単なる一流騎手の域を超えて、歴史的名騎手の地位を確立したことだ。JRAリーディングを通算7回獲得し、日本競馬史に名を残す名馬たちに騎乗し、日本の調教師やファンからも絶大な尊敬を集めた。また競馬界の枠を超えた名声を得て、相応の富を築き上げてもいる。

Christophe Lemaire celebrating his Shuka Show win aboard Cervinia

イクイノックスが現れる以前であれば、その答えはアーモンドアイだっただろう。彼女とのコンビで牝馬三冠、ジャパンカップ2勝、メイダン競馬場でのドバイシーマクラシックを含むG1・9勝を挙げたからだ。

だが、国際競馬統括機関連盟(IFHA)のランキングで『ワールドベストホース』の称号を手にしたイクイノックスが現れてからは、ルメールが騎乗した最も有名馬としてイクイノックスを推す声も多くなっている。

Christophe Lemaire and Equinox win the Japan Cup in 2023

ルメールにとって記憶に残る勝利と言えば、2023年のドバイシーマクラシックは有名だ。世界的な注目度を伴ったこの一戦で、イクイノックスを先頭に立たせ、確信に近い自信に満ちた騎乗でレースを完全に支配した姿は、世界中の競馬ファンの記憶に深く刻まれている。

ただし、その評価を争うものとして挙げられるのが、ドゥーナデンとコンビを組んだ2011年メルボルンカップの一戦だ。ゴール前で渾身の末脚を繰り出し、ハナ差で勝利をもぎ取ったあの名騎乗も忘れがたい。

クリストフ・ルメールは、競馬への愛情を競馬場の外でもさまざまな活動を通じて表現している。

自身のファッションブランド『C L by C』を立ち上げ、競馬界の英雄たちから着想を得た “ストリート・ジョッキー・スタイル” のアパレルを展開。また、ヒップホップアルバム『The Winner’s Circle』を共同制作し、西海岸のラッパー、ヤング・グリッティをはじめとするアーティストたちが参加。その中のシングル曲『Let’s Ride』も発表している。

Christophe Lemaire with Frank Nitty and Greg Conley at the Breeders' Cup meeting

John Stewart & Christophe Lemaire

Horse Racing’s New Ideas Meet Same Old Resistance

【與時並進】賽馬新思維與舊阻力

「古い価値観に負けず」ルメール騎手と馬主のスチュワート氏が取り組む、新たな試み

Star jockey Christophe Lemaire and outspoken American owner John Stewart have both put their own money behind efforts to promote horse racing despite the detractors.

星級騎師李慕華(Christophe Lemaire)和敢言的美國馬主John Stewart自資推廣賽馬。

トップジョッキーのクリストフ・ルメール騎手と、馬主のジョン・スチュワート氏。2人に共通するのは、批判を物ともせず、自費を投じた新たな試みで競馬界を変えようとしている点だ。

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Christophe Lemaire with Frank Nitty and Greg Conley at the Breeders' Cup meeting

Lemaire’s ‘Street Jockey’ Vibe Is Connecting Hip-Hop And Horse Racing

ルメール騎手の「ストリートジョッキー」スタイル、ヒップホップと競馬の架け橋に

The champion rider is backing a new single by Yung Gritty, with an album to follow that will feature artists from hip-hop’s legendary West Coast and East Coast ‘bloodlines’.

日本のチャンピオンジョッキー、ルメール騎手がヤング・グリティの新曲を全面バックアップ。その後にリリースされるアルバムには、ウエストコーストとイーストコーストからヒップホップ界の伝説的な『血統』を受け継ぐアーティストが参加する予定だ。

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Christophe Lemaire after Cervinia's Shuka Sho victory

Dubai To Sydney, Christophe Lemaire Is Taking His Opportunities

【全新體驗】李慕華正把握由杜拜到悉尼的策騎機會

ドバイから再び海外へ、クリストフ・ルメール騎手が45歳でシドニー初参戦

Japan’s champion jockey will ride in Sydney for the first time on April 12 and tells Idol Horse he is at the stage of his career where exciting new experiences become even more important.

日本冠軍騎師李慕華將於 4 月 12 日初次於悉尼上陣,他向《Idol Horse》表示,他現正處於新體驗變得重要的階段。

4月12日、クリストフ・ルメール騎手がシドニー初騎乗の日を迎える。Idol Horseの取材に対し、この年齢を迎えた今こそ、新しい経験が大事だと語ってくれた。

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The Aga Khan IV

Aga Khan’s “Charisma” And “Aura” Will Be Missed: Lemaire

【德範長存】李慕華懷念阿加汗魅力和靈氣

「威厳、カリスマ、そしてオーラ」アガ・カーン殿下が逝去、ルメール騎手が惜別の思いを語る

One of racing’s biggest owners and a hugely influential breeder, the Aga Khan passed away in Lisbon at age 88 and has left a massive legacy.

阿加汗四世(Aga Khan)是賽馬界大馬主之一,也是極具影響力的育馬者。他日前於里斯本辭世,享年 88 歲,並留下豐厚歷史遺産。

競馬界屈指のオーナーであり、影響力の大きいブリーダーでもあったアガ・カーン殿下がリスボンで88歳で逝去。その功績は計り知れないものだ。

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世界のスタージョッキーたち

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