アンドリュー・ホーキンス
ロイヤルアスコット5日間開催の最後を飾る8つ目のG1、クイーンエリザベス2世ジュビリーステークス(6ハロン)は、各国の実績馬が激突する一戦となる。出走16頭はこれまで9か国で競走経験があり、7か国で勝利を挙げてきた。
日本馬はロイヤルアスコットで過去12頭が挑戦し、入着は2000年のキングズスタンドSで2着に入ったアグネスワールドの1例のみ。今回、海外遠征に定評ある堀宣行調教師が管理するサトノレーヴが自身初のロイヤルアスコット参戦を果たす。同馬はG1・高松宮記念を制し、前走シャティンでは世界最強スプリンターと称されるカーインライジングの2着だった。
ライバルはワスナンレーシングが新たに購入したラザット。同馬は今年屈指のハイレベル戦ゴールデンイーグルで2着後、距離延長にも挑戦してきたが、管理するジェローム・レイニエ調教師は「直線コースのスプリントがベスト」と判断。欧州の次代を担う快速馬として、その地位を証明する舞台となる。
その他、エイダン・オブライエン厩舎で2走目を迎える注目の豪州産牡馬・ストームボーイ、コモンウェルスカップ覇者のイニシェリンなどが出走。イニシェリンはラザットがゴールデンイーグルで敗れた相手、レイクフォレストを昨年のコモンウェルスCで破っている。
イチオシ推奨馬: チェシャムS・トレアンモア(5番)
デイヴィッド・モーガン
世界を飛び回るジョッキー、ジョアン・モレイラはこの週末も多忙を極める。土曜にサトノレーヴで挑む後、深夜のヒースロー発便でリオデジャネイロへ飛び、G1・ブラジル大賞でオバタイェに騎乗する予定だ。1年前に感動的な勝利を飾ったコンビだけに、再び胸が熱くなるレースとなるだろう。もし“マジックマン”がサトノレーヴで日本馬初のロイヤルアスコット勝利を挙げれば、感動は一層深まる。
ゴドルフィンは今週、オムブズマンとトロールマンでG1を連勝して絶好調。G2・ハードウィックステークスではレベルズロマンスが強敵として立ちはだかる。意外にも、このベテランは昨年のG1・キングジョージ6世&クイーンエリザベスSで3着に入った1度しかアスコットを走ったことがない。
初戦で強烈な印象を残したフランケル産駒のトレアンモアは、将来のゴドルフィンを背負う存在になり得る。200万ユーロで取引された同馬が、リステッドのチェシャムステークスで期待を集める。
G3・ジャージーステークスはかつて開催初日に行われていたが、今では下から4番目のレースに移動した。3歳戦だけに春のクラシック組が顔をそろえ、今年も例外ではない。クールモアのコマンチブレイブは愛2000ギニーの5着馬で、その前走では後の仏ギニー馬アンリマティスの2着。アンリマティスは今週火曜のセントジェームズパレスSで愛2000ギニー勝ち馬フィールドオブゴールドの2着だった。
マーベルマンは前走で後の愛2000ギニー2着馬を相手に2着、サラセンはG3・グリーナムSで仏2000ギニー2着馬の2着だった。そして無敗馬のレムーズも要注意だ。
イチオシ推奨馬: ハードウィックS・レベルスロマンス(9番)
ジャック・ダウリング
週の最後の突撃戦となるのは、27頭が6ハロンの直線を一気に駆け下る、この開催で最も長い歴史を誇るハンデ戦、ウォーキンガムステークスだ。
1813年に創設された名物スプリント戦では、今週のハンデ戦で見られた流れが再現されるかが試される。ウィリアム・ハガス厩舎のモアサンダーがスタンド側有利とされる23番ゲートから発走し、断然人気に推されているためだ。
今週は、ロイヤルハントカップを制したマイクラウドとバッキンガムパレスステークスを勝ったネヴァーソーブレイヴが、それぞれハンデをはるかに上回る力を示しており、モアサンダーも同様の快勝を遂げる最有力候補となっている。
ネヴァーソーブレイヴと同様に、モアサンダーももともとはサー・マイケル・スタウト厩舎に所属していたが、スタウト師の引退に伴いシーズン開始時にアンドリュー・ボールディング厩舎へ転厩した。
しかし、モアサンダーがレーティング98にまで上昇した点は特筆に値する。なぜならスタウト厩舎時代は9ハロンと10ハロンのレースのみを使われていたからだ。ボールディング厩舎に移籍後、ナイトオブサンダー産駒の同馬はニューマーケットで2度6ハロン戦に出走し、スプリント戦で才能を開花させた。
もっとも、ロイヤルアスコットのハンデ戦で常に言えるように、大挙出走するメンバーと、ハンデが恵まれたライバルたちの存在が、モアサンダーの前に極めて手強い壁として立ちはだかる可能性は高い。
イチオシ推奨馬: QE2世ジュビリーS・サトノレーヴ(11番)
ロイヤルアスコット最終日は現地時間の土曜日・午後2:30に開幕する。