今度のジャンタルマンタルは「一味違う」
ジャンタルマンタルは2024年、香港へ初遠征を果たしたものの、結果は惨敗。同年のG1・香港マイルで14頭中の13着に終わった。しかし陣営は、今回のチャンピオンズマイルへ向けた遠征は、当時とはまったく違う馬になっていると話す。
「前回は初めての香港で、ジャンタルマンタルも戸惑って少しストレスを感じていました。今回はとても落ち着いていて、リラックスしています」と、高野友和厩舎の調教助手を務める松井隆志氏はIdol Horseに語った。
松井助手は、前回の調整過程が理想的ではなかったことにも触れ、次のように説明する。
「当時、ジャンタルマンタルはこちらへ来る前に熱発して一戦使えなかったので、それでリズムが乱れたところがあったのだと思います。状態を上げるのにも苦労していました」
「ただ、今回はすべて順調に来ていますし、コンディション面で心配はありません」
前回の香港マイルでは、ジャンタルマンタルは前哨戦のG2・富士ステークスを回避しただけでなく、本番でも厳しい競馬になった。道中は前目で運びながら、外の3番手で壁を作れない形を強いられた。
もっとも、その後の実績は説明不要だ。ジャンタルマンタルはG1・安田記念を制し、富士ステークスではガイアフォースの2着、そしてG1・マイルチャンピオンシップを勝利。国内マイル路線の頂点に立つ存在となった。
「前回よりも、馬はずっと良くなっていると思います。すでに日本でG1を制覇し、日本のマイル王であることを証明しました。自信を持ってこのレースに向かえます」
「香港の皆さんには、ジャンタルマンタルのいちばん良い姿を見てもらえると思っています」

マスカレードボールに求められる「証明」の走り
マスカレードボールの『国際レーティング』は大きな話題になっている。しかし、本当に重要なのは、手塚貴久調教師が懸念を口にする条件下で、その数字に見合う走りを再現できるかどうかだ。
ロマンチックウォリアーが、何度も大舞台に姿を見せ、そのたび高い水準で走り続けて名声を築いてきたのに対し、マスカレードボールは、まったく異なる舞台で傑出したパフォーマンスをもう一度示すことが求められている。
マスカレードボールは緩急のついた、あるいは流れが落ち着く展開でも対応できるのか。遠征先の2000mでも同じ走りができるのか。
手塚師は日本メディアに対し、香港の湿度をマスカレードボール自身が「気にしている」とし、自身の目には「見た目にはあまり良く見えない」と話していた。ただし、状態そのものは上向いている。
手塚師はIdol Horseに「やっぱり香港に着いてから、2、3日はすごいナーバスでした」と明かした上で、「昨日あたり追い切りしたあとからだいぶリラックスして、カイ食いも戻って、ご飯も食べるようになりました」と、マスカレードボールの“環境適応”を明かした。
日曜日のG1・クイーンエリザベス2世カップでは、マスカレードボールは出走馬中の最高レーティングとなる128を持つ。
これは、11月のG1・ジャパンカップで2025年のワールドベストレースホース、カランダガンに僅差で敗れた内容によって得たものだ。ロマンチックウォリアーを3ポイント上回るその数字は、今回の一戦を、地元王者が香港で迎える最大級の試練と位置づける要因にもなっている。
また、マスカレードボールにとってQE2世カップは、昨年のG1・皐月賞(3着)以来となる右回りのレースでもある。鞍上のクリストフ・ルメール騎手はその点を懸念材料として挙げており、同馬について「競馬で左にもたれるところがある」と話している。
そうした不確定要素を抱えるマスカレードボールに対し、ロマンチックウォリアーは、どの大舞台でも安定して力を出し切ることが分かっている馬だ。
「まだまだ完璧ではないです。これからもっと強くなるかなと思うんで」と手塚師は言う。
「それは肉体的なことだけでなく、精神的にもっと良くなる余地はあると思います。レースを重ねるごとに少しずつ精神的に成長はしてるんですけど、まだパーフェクトではないんで、これからその辺が良くなればもっと強くなるかなと思います」

正念場のリトルパラダイス
リトルパラダイスは香港クラシックマイル制覇以来、やや輝きを失っている。ザック・パートン騎手は、チャンピオンズマイルでその答えを探しに行く。
今季序盤、香港のチャンピオンジョッキーであるパートン騎手は、ジミー・ティン厩舎の同馬に4戦騎乗し、3勝、3着1回の成績を残した。一方、4歳三冠シリーズ初戦の香港クラシックマイルでは、ピエール・ン厩舎のサゲイシャスライフへの騎乗を選択した。
リトルパラダイスはそのレースで、残り200mまで進路が開かなかったにもかかわらず、2馬身差で勝利。そこから一気に評価が高まった。
「クラシックマイルでは本当に素晴らしい内容だったと思います。とてもいい馬ですし、私がこの馬に乗らないと決めた時も、このシリーズの中で最終的には一番いい4歳馬になるだろうとは言っていました」とパートン騎手は振り返る。
「ただ、1600mをこなせるとは思っていませんでしたし、2000mはかなり無理だろうと見ていました。ダービーへ向かう他の馬たちのことも考えて、別の道を選んだんです」
「いずれにしても、彼はクラシックマイルを勝ち、私は勝てませんでした。つまり、私はチャンスを逃したわけですし、彼はかなり強い勝ち方をしました。ただ、その後は少し流れがかみ合いませんでした。出遅れて、レースの流れも向かず、少し平凡にも見えました」
リトルパラダイスは、出遅れて位置を悪くした香港クラシックカップで8着。香港ダービーでも発馬がひと息で、距離をこなせず9着に終わった。
「1マイルを超える距離は、明らかに長すぎました。ただ、今回は1マイルに戻り、古馬を相手にします。それもまた別の課題です」
「4歳馬はこのレースで良い成績を残していません。それだけに、再びこの馬に乗って、前回騎乗した時からどれだけ成長しているのか、どんな手応えを感じられるのかを確かめるのを楽しみにしています」
「このレベルの相手に1マイルで通用するのか。それとも、この後は別の道へ進むべきなのか。今回は、この馬自身の現在地を示す機会になります」
ラッキースワイネスが安田記念へ?
鄭一家は、ラッキースワイネスが今後再び日本へ向かうチャンスをつかむことを願っている。
ただし、その前に、スプリンターからマイラーへ転じた同馬が日曜のチャンピオンズマイルで、安田記念制覇の夢をつなぐに足る走りを見せられるかを見極めたい考えだ。
木曜朝の枠順抽選で、馬主の鄭裕偉(チェン・ユワイ)氏はIdol Horseにこう語った。
「安田記念は、私たちにとって勝ちたい夢のレースです。18年前にそのレースへ行き、それが私たちの夢になりました。出走できることを願っています」
その夢は2008年にさかのぼる。鄭氏は父の鄭明亮(チェン・ミンリョン)氏、そして一族の友人である馬主仲間の黃玉麟(ウォン・ユクルン)氏とともに安田記念を現地で観戦した。黃氏のアルマダは当時、日本の年度代表馬に2度輝いたウオッカの2着に入った。
ラッキースワイネスは昨年、中山競馬場で行われたG1・スプリンターズステークス(1200m)に出走して11着。日本挑戦という夢へ向けて一歩を踏み出していた。
「ラッキースワイネスは今、とても良い状態です。日曜にいい走りをしてほしいと思っています。まだ騎手とは話していませんが、彼はハナにも行けますし、流れに乗ることも、その後ろで運ぶこともできます。そうした自在性があります」
「日曜のレースが終わってから、日本行きについて話し合うことになります」

2頭が「無事に出走」へ前身
リッキー・イウ厩舎のチャンピオンズマイル勢には、木曜朝に追い風が吹いた。ヴォイッジバブルとサンライトパワーが、日曜のG1への出走を認められた。
事前の獣医検査で、ヴォイッジバブルの左前肢と、サンライトパワーの右前肢に見られた肘の腫れはいずれも改善が確認された。
ただし、両馬は出走へ向け、土曜にあらためてレース前の獣医検査を受ける必要がある。
イウ師は、両馬とも獣医師の管理のもとで状態が良くなっているとの見方に同意したうえで、木曜朝にジェリー・チョウ騎手を背に追い切ったヴォイッジバブルの動きに満足していると話した。
サンライトパワーは金曜朝に最終追い切りを行う予定で、イーサン・ブラウン騎手が騎乗する。