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今どきの一流騎手が、世界中を飛び回るのは珍しくない。トム・マーカンド騎手は今年最初の2ヶ月で、4万マイル(6.4万キロ)の距離を移動したという。しかし、自ら操縦して空を飛ぶ騎手はそうはいない。

マイケル・ディー騎手は、日本での2ヶ月間の短期騎乗をあと1週間ほどで終えるが、もちろん、彼が操縦するのは帰国に使うような大型旅客機ではない。

ディー騎手が操るのは、もっと小さく、機動力に優れた乗り物、ヘリコプターだ。

「ヘリの免許は取ってから1年半になります」とディー騎手。Idol Horseの取材に対し、「もともと興味があって、どうやって始まったのかはっきりとは覚えていないですが、ずっと惹かれていたんです」と経緯を語った。

その興味のきっかけは、ニュージーランドからメルボルンに移り住んだ頃に訪れたスプリング・カーニバル。競馬場を離着陸するヘリを目にした瞬間、心に火がついた。

「競馬場にヘリが飛んできて、また飛び去っていくのを見て、『うわぁ、すごいな。自分もあれを飛ばせたら最高だな』と思いました。でも、その時はまさか自分が操縦できるようになるなんて、夢にも思いませんでした」

しかし、思い切って調べてみると、その夢は現実になり得ると知った。

「ちょうどその頃、友人が固定翼機の免許を取っていて、同じ飛行場で飛行機の訓練をしていたんです。彼がヘリの学校があることを教えてくれて、体験飛行に行ってみたんです。その体験がきっかけで本格的な訓練に進むことになりました」

とはいえ、免許取得は想像よりも時間がかかったという。

「もっと簡単で早く取れると思っていたんですが、実際には毎週の騎乗があるのでなかなか時間が取れず、思った以上に時間がかかりました。でも、最終的には無事に取得できました」

29歳のディー騎手は、これまでに8,000レース以上に騎乗し、勝利数は900を超える。G1・コーフィールドカップ、ブルーダイヤモンドステークス、ヴィクトリアダービー、オーストラリアンギニーなどのビッグレースも制覇。オーストラリア、ニュージーランドに加え、香港、日本でも騎乗経験を積んできた。

それでも、ヘリの操縦はまた別の興奮があるという。

「ヘリを飛ばすのは、確かにスリルがあります。たとえば初めてランボルギーニやフェラーリを運転するような感覚ですね。クルマから降りた瞬間の、あの高揚感に似ています」

「友人を乗せて遊覧飛行を終えると、『すごいね!』と驚かれます。その瞬間、『やってよかったな』と心から思えます。それができるということ自体が、僕にとっては大きな喜びなんですよ」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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