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60日間で64000キロ、国際派ジョッキー・マーカンド騎手の驚異的なスケジュール

世界を飛び回るトップジョッキー、トム・マーカンド騎手は今日も多忙な日程を送っているが、現代の騎手にとってはこれが普通だと本人は語る。

60日間で64000キロ、国際派ジョッキー・マーカンド騎手の驚異的なスケジュール

世界を飛び回るトップジョッキー、トム・マーカンド騎手は今日も多忙な日程を送っているが、現代の騎手にとってはこれが普通だと本人は語る。

2025年、世界的のトップジョッキーの追っかけをするなら、事前にしっかり計画を立て、柔軟に動けるようにしておくことだ。彼らは常に、異なる時間帯の地域へと飛び立っている可能性が高い。

ライアン・ムーア、ジェームズ・マクドナルド、レイチェル・キング、そしてトム・マーカンドのような一流騎手は、サウジアラビア、シャティン、サンダウンパークなど、世界各地の大舞台で騎乗するために迷うことなく縦横無尽に世界中を飛び回っている。

しかし、リヤドの計量室の外でIdol Horseに話すマーカンドによれば、それこそが国際舞台でトップに立ち続けるために必要なことだという。

「世界中で騎乗する姿を見せることは、ジョッキーにとって本当に重要なんです」とマーカンドは語る。「もちろん、スケジュールの調整はかなり大変ですが、僕は世界の大舞台で競うことが本当に好きですし、チャンスが来たら逃さずに乗るだけです」

イギリス出身だが、オーストラリアでの印象的な活躍から『オージー・トム』の愛称で親しまれる26歳のマーカンドは、リヤドで土曜日の2レースに騎乗するため現地入りした。そのうちの1戦はハンデ戦、もう1戦はG2・1351ターフスプリントでの単勝21倍の伏兵馬だった。

サウジアラビアへのフライトは、バーレーンでの騎乗からわずか24時間後、さらにその72時間前には香港・ハッピーバレー競馬場での水曜夜の最終レースを勝利したばかりだった。

4日間で3ヶ国を渡り歩き、3便のフライトを乗り継ぎ、3つの競馬場で騎乗する。そんな生活はトム・マーカンドのような騎手にとってはもはや日常の一部だ。彼が若い頃から憧れたのは、世界を飛び回る名手、ライアン・ムーアの存在だった。

「僕はライアン・ムーアが世界中を旅しながら騎乗する姿を見て育ちましたし、その影響で自分も同じようにやりたいと思うようになったんです」とマーカンド。「誰しもキャリアのスタート時に目標とする人物がいるものです。僕は幸運にも世界中で騎乗する機会を与えられました」

「今年に入ってからすでにインド、ドバイ、サウジアラビア、バーレーン、日本、イギリス、カタール、香港と渡り歩いてきました。こうやって並べてみると、本当に忙しく動いているなと実感しますね」

Globetrotting jockey Tom Marquand
TOM MARQUAND / Ascot // 2024 /// Photo by Adam Davy
Tom Marquand aboard Addeybb at Randwick
TOM MARQUAND, ADDEYBB / G1 Queen Elizabeth Stakes // Randwick /// 2021 //// Photo by Hanna Lassen

日曜日のクラシックカップでディヴァーノに騎乗するため、シャティン競馬場へ向かうマーカンドが香港国際空港に降り立つ頃には、彼はすでに2025年の最初の2ヶ月間で8カ国を巡り、累計4万マイル(約64000キロ)以上の距離を飛んだことになる。

世界の大舞台でコンスタントに結果を残す秘訣はあるのか? 2024年のロンジン・ワールドベストジョッキーランキングで10位に入ったマーカンドは「特別なコツなんてありませんよ」と笑う。リヤドの計量室で言葉を交わしたほかの世界的ジョッキーたちと同様に、彼もまた純粋な競争心と『勝ちたい』という強い意志に突き動かされている。

「やはり睡眠は一番の問題ですね。でも僕は幸いなことに飛行機の中でしっかり眠れるタイプなので、その点ではかなり助かっています」とマーカンドは語る。

「僕にとっては、とにかく忙しく動き続けることが大事なんです。飛行機を降りたらすぐにジムに行くとか、何かしら体を動かすことでリズムを保てるんですよ」

サウジカップで繰り広げられたフォーエバーヤングとロマンチックウォリアーの激闘が大きな注目を集めた週末。その裏では、世界のトップジョッキーたちがキングアブドゥルアジーズ競馬場に集結し、レースが終わるや否や、次なる舞台へと飛び立っていった。

たとえば、ロマンチックウォリアーを勝利まであと一歩のところへ導いたジェームズ・マクドナルドは、リヤドでの激闘からわずか14時間後、すでに香港へ飛びシャティン競馬場でヴォイッジバブルをG1制覇へと導いていた。

レイチェル・キングにとって、リヤドでのインターナショナルジョッキーズチャレンジで総合2位となった金曜のレースから、JRAでコスタノヴァをG1制覇に導くまでの時間はわずか48時間足らずだった。彼女は日本のJRAでG1を制した初の女性騎手となった。

Rachel King riding at Riyadh
RACHEL KING, NASSER ALMUHAMADIA / Saudi IJC // King Abdulaziz Racecourse, Riyadh /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

同じような旅程をこなしたのが、G1・凱旋門賞を2度制したクリスチャン・デムーロだ。彼はリヤドで純血アラブによる賞金150万米ドルのレースを勝利した翌日には、フランスのカーニュシュルメール競馬場でメイドンを制し、ウイナーズサークルに立っていた。

「競馬は多様な選択肢が広がる世界です」とマーカンドは語る。「もし望めば、ホリー(ドイル)と僕は明日にでも世界の10ヶ国くらいに拠点を移して騎乗できるかもしれません。それは、これまで世界各国での経験を積んできたからこそ可能になることです」

「すべては繋がっていて、こうやってアジア、ヨーロッパ、中東の大舞台を転戦していれば、いつかどこかで新しいチャンスの扉が開くかもしれません。そのときに、精神的にもキャリア的にも、それをつかめる状態であることが重要なんです」

「とはいえ、僕はこうした遠征を楽しんでいるし、国際舞台で競い合うことが大好きですが、やはり心のどこかでは、地元イギリスの平地競走シーズンにしっかりと戻ることを常に考えています」

ジャック・ダウリング、Idol Horseのレーシングジャーナリスト。2012年、グッドウッド競馬場で行われたサセックスステークスでフランケルが圧勝する姿を見て以来、競馬に情熱を注いできた。イギリス、アメリカ、フランスの競馬を取材した後、2023年に香港へ移る。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、レーシング・ポスト、PA Mediaなどでの執筆経験がある

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