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トム・マーカンド騎手は、土曜日にアスコット競馬場で行われるG1・チャンピオンステークスが、ゴドルフィンのオンブズマンとクールモアのドラクロワによる単純な「二頭立てのレース」であるという見方に異議を唱えている。

今シーズンの中距離路線を牽引したこの2頭は、英愛の3歳以上2000メートル路線の主要3レースを分け合って制しており、直接対戦成績は1勝1敗。オンブズマン不在のG1・愛チャンピオンステークスはドラクロワが制している。

マーカンドはもちろん、このレースが “二強態勢” の構図として語られる理由は理解している。「どちらも今年は走っていますし、この路線のトップホースですからね」と彼は語った。

しかし同時に、マーカンドはメディアがこのレースを「おそらく実際は二頭立てではないのに、一騎打ちの構図」に仕立て上げていると感じている。

報道陣は、英国のトップ厩舎であるジョン&タディ・ゴスデン陣営と、アイルランドのチャンピオントレーナー、エイダン・オブライエン師の激突、そしてゴドルフィンとクールモアという長年のライバル関係を物語の軸に据えているのだ。

「シンプルな二頭の争いというわけではないと思います」とマーカンドは指摘する。

「実に才能ある馬たちが揃っています。もし “ビッグ2” のどちらかがほんの一瞬でも隙を見せれば、そのチャンスを逃さない馬が必ずいます。それこそが、このレースを面白くしているんです」

それでも、マーカンドは「……まあ、そうならないでほしいですけどね」と笑う。「でも、これこそがトップクラスの英チャンピオンSですし、まさに誰もが見たいレースですよ」

メディアが見落としているのは、フランスから遠征してくるカランダガンだ。昨年の英チャンピオンSは2着と入り、今季はアスコットのG1・キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスを制覇。2400メートルから距離を短縮し、この一戦に臨む。 

なお、同一年にキングジョージと英チャンピオンSの二冠制覇を達成したのは、1972年のブリガディアジェラードただ一頭だ。

そしてマーカンドが騎乗するのは、ウィリアム・ハガス厩舎のエコノミクスだ。昨シーズン、G1・愛チャンピオンSまで3連勝を飾り、将来を嘱望された存在だった。

しかし彼は、昨年の英チャンピオンSで「きわめて重い馬場」の中、1番人気に推されながら6着に敗れて以来、レースに出走していない。そのレースで勝ったのは、今回も侮れないアンマートである。

エコノミクスは、ドバイオナーを含む2頭の僚馬とともに、2週前の土曜日にニューマーケット競馬場のローリーマイルコースで、テッド・ダーカン元騎手を背に追い切りを行った。その後、マーカンドが通常の調教で跨っている。

「先週木曜日に跨りましたが、素晴らしい感触でした」とマーカンドは手応えを語る。

「その前の土曜日に競馬場のコースで走っていたので、今回は通常の調教でした。仕上げ直しの途上なので、この調教で確認すべきだったのは、動きが良く、感触が良く、精神面でも良好ということで、無理に求めに行く必要はありませんでした」

「本当に素晴らしい感触でしたし、再びレースに出るのを楽しみにしています。復帰戦としては厳しい舞台ですが、これまでの実績からいっても、出走するだけの資格は十分にあります。彼が再びレースに戻るのが本当に楽しみです」

マーカンドは、“中1年” という実戦ブランクが理想からは遠いことをよく承知しているが、ハガス師が率いるサマーヴィル・ロッジのチーム全体が、この白面が特徴的なエコノミクスの仕上がり具合に満足していると語った。

「誰もが今の状態に満足しています。もし一人でも疑念を抱く者がいれば、出走させません。厳しい課題かと言われたら、間違いない。前哨戦が必要かと言われたら、間違いない。ただ一方で、美しい舞台で行われる素晴らしいレースですし、彼はG1馬ですからね」

「彼は非常に才能のある馬で、その力をそのまま維持していることを願っています。長期休養明けではそこは常に気がかりな点ですが、厩舎で乗った感触からは、その力をしっかり維持しているように感じました」

南米最大のレース、G1・ラテンアメリカ大賞が土曜日、リオデジャネイロのガベア競馬場で行われる。ブラジル勢の期待は、イーサリアムとジョアン・モレイラ騎手が騎乗するオバタイェに託された。

この持ち回り開催のレースがガベア競馬場で行われるのは今回で4度目。ブラジルから4頭、アルゼンチンから2頭、チリから3頭、ペルーから6頭、ウルグアイから1頭の計16頭が、2000mで南米王者の座を争う。

コスメ・モルガド・ネト調教師が管理するイーサリアムは、3月に行われたガベア競馬場のG1・ディアナ大賞で圧勝し、6月のG1・ブラジル大賞ではクビ差の3着と健闘した。陣営はただ一つ、雨を避けたいと願っている。

「この馬はおそらく、私たちがこれまで管理した中で最高の牝馬です。特に父にとっては」と語るのは、モルガド師の息子でアシスタントトレーナーの、ペドロ・モルガド助手だ。

「ブラジル最大のレースで見事な走りを見せてくれました。次は南米最大のレースに挑みます。牡馬と初めて対戦したG1・ブラジル大賞でも、非常に強い内容の3着でした。あの時は初めての2400m戦でしたが、この馬のベストは2000mだと考えています」

モルガド師が最大の脅威とみるのは、アルゼンチン代表のヴンドゥ、そして “ブラジル最強の古馬” こと、2024年のG1・ブラジル大賞覇者であるオバタイェだ。

馬主のカルロス・ドス・サントス氏の自家生産馬であるイーサリアムは、今回7番枠から発走する。スタートから50mほどにカーブが待ち受けていることも踏まえ、モルガド師は「良い枠」と見る。

「スタート後の最初のコーナーには注意が必要ですが、彼女は乗りやすい牝馬だと思います」

「ただし、雨は歓迎できません。良馬場向きです。初めて敗れたときも極端な重馬場でした。それでも私たちはこの馬を信頼しています。今回も素晴らしい走りを見せてくれるでしょう」

1970年10月17日、三冠馬ニジンスキーのシーズンは、ニューマーケット競馬場の英チャンピオンSで衝撃の結末を迎えた。

ヴィンセント・オブライエン厩舎のニジンスキーは、凱旋門賞で惜敗したわずか数週間後、単勝オッズ1.36倍の圧倒的支持を受けてこのレースに臨んだが、約15.3倍の伏兵だったロレンザッチオにまさかの惜敗。

ロレンザッチオが残り400mの段階で先頭に立って粘り込み、本調子を欠いたニジンスキーは首に泡汗を浮かべながらも届かず、3/4馬身差の2着に敗れた。

また、シカゴ郊外のアーリントンパーク競馬場は1927年10月13日に開場し、のちにG1・アーリントンミリオンの開催地として世界的に名を馳せたが、2021年9月に閉鎖された。

2017年10月14日にランドウィック競馬場で行われた記念すべき第1回のジ・エベレストは、ピーター&ポール・スノーデン厩舎のレッドゼルが優勝。ケリン・マカヴォイ騎手を背に、ジェームズ・ハロン・ブラッドストックが保有する出走枠を使っての参戦だった。

なお、1番人気のベガマジックは3/4馬身差の2着に敗れている。

カーインライジングのジ・エベレスト挑戦は、今週、競馬界の話題を独占している。SNS上の噂が引き金となった前売り市場の混乱から、月曜日の調教で行われた注目の追い切りまで、そのすべてが注目を集めた。

だが、デヴィッド・ヘイズ調教師とその “競馬一家” にとって、土曜日のレースは80年にわたる歴史の集大成でもある。その原点は、父のコリン・ヘイズ元調教師と、アデレード郊外に築かれた革新的な調教施設「リンジーパーク」にさかのぼる。

オーストラリア年間最優秀競馬ライターを受賞、Idol Horseのアダム・ペンギリー記者が執筆した長編記事では、世界最高賞金の芝レースであるジ・エベレストの頂点に挑もうとしている、リンジーパークの伝統と歴史を描いている。

歴史的な再戦となるか、少なくとも現時点では「ランブル・イン・リヤド2」が現実味を帯びてきた。

ダニー・シャム調教師がIdol Horse記者のジャック・ダウリングに長期プランを明かし、G1・サウジカップでのロマンチックウォリアーとフォーエバーヤングの再戦が一歩前進した。

ロマンチックウォリアーが2025年のG1・サウジカップでフォーエバーヤングに喫した痛恨の敗戦を雪辱するには、まず香港で2戦を無事にこなす必要がある。脚部手術からの復帰を目指す同馬は順調で、その様子は下記記事で詳しく伝えられている。

週末にSNS上で拡散した「カーインライジング体調不安」の噂による混乱劇。月曜日の追い切りを取材したアダム・ペンギリー記者のレポートは必見だ。記事内の一節を引用すると、体調不安説の顛末はこうだ。

「息をしているのか?」
もちろんだ。

「脚は4本あるのか?」
もちろんだ。

「ちゃんと動いているのか?」
全く問題ない。

また、今週の『Idol Horse Newsdesk』Podcastでは、ジャック・ダウリング記者とペンギリー記者がこの “悪質デマ騒動” と前売り市場の大混乱を振り返り、笑いを交えながら分析している。

2026年の牝馬三冠戦線に向けて、頻繁に耳にすることになりそうな名前がイクシードだ。世界的名馬イクイノックスの全妹である同馬は、日曜日の東京競馬場2000mの新馬で鮮烈なデビュー勝ちを収めた。

単勝1.7倍の断然人気に推され、父キタサンブラック、母シャトーブランシュの良血牝馬は、2分00秒2で1馬身半差の楽勝。クリストフ・ルメール騎手の手綱に導かれ、将来のスターの資質を存分に示した。

木村哲也調教師(イクイノックスの現役時も管理)が手がけるイクシードは、落ち着きと生来のパワーを兼備。中団で脚をため、直線ラスト1ハロンで楽に加速、上がり3ハロン33秒4をマーク。

ノーザンファーム天栄の場長、木實谷雄太氏は「牝馬ながらしっかりした体つきで、動きにキレがある。しぐさや敏感さは、若い頃の兄を彷彿とさせる」と同馬について語っている。

いまだ若さを残し、馬体もこれから増していきそうな段階だが、イクシードは時間とともに良化を続けるタイプに映る。厩舎は慌てず、ひと息入れて2026年春の大舞台を視野に入れる構えを示唆。

経験を積む途上にあるものの、血統と初戦の手応えが示す通り、次なる “芝の女王” はすでに私たちの目の前にいるのかもしれない。

🇦🇺 ジ・エベレストデー
10月18日
G1・ジ・エベレスト(IFHAレーティング29位タイ)
G1・キングチャールズ3世ステークス(同59位タイ)

カーインライジングは、ランドウィックで土曜日に行われる総賞金2,000万豪ドルのG1・ジ・エベレスト(1200m)で7番枠を引いた。

世界最上位評価のスプリンターが歴史に挑む一戦で、ザック・パートンが騎乗する同馬にとって、この枠は「完璧」とデヴィッド・ヘイズ調教師は評している。

同日開催のG1・キングチャールズ3世ステークス(1600m)は、ファンガールが前売りで本命視され、ミスターブライトサイド、プライドオブジェニ、そして昨年のゴールデンイーグル勝ち馬であるウィリアム・ハガス厩舎のレイクフォレストが続く。ハイレベルなマイル戦となりそうだ。

🇦🇺 コーフィールドカップデー
10月18日
G1・コーフィールドカップ

コーフィールドカップは、最初のコーナーまでの距離が比較的短くタイトなため、枠順が極めて重要だ。

木曜日に発表された枠順は、戦術面で多くの難問を投げかけている。1番人気のハーフユアーズは2番枠を引き当て、ジェイミー・メルハム騎手はリスクなく先行集団の直後を進める理想的な隊列を取りやすく、2400メートルでの持久力勝負に噛み合うはずだ。

ミドルアース(3番枠)とメイダーン(5番枠)も好枠で、いずれも好位のベストポジションが見込める一方、ロイヤルスプレマシー(6番枠)も再び先行馬の背後でロスなく運べそうだ。外枠勢は難しくなる。

ヴォーバン(13番枠)はブレイク・シン騎手の巧腕で序盤に内へ収めたいところで、ヴァリアントキング(16番枠)は大外に近い枠からの発走で、序盤から難しい立ち回りを強いられる。昨年のメトロポリタンハンデを制したランドレジェンド(15番枠)は、枠の不利を打ち消すために前へ行く策が必要になるかもしれない。

オーストラリアの名物ハンデ戦として “層が厚い年” とまでは言えないが、複数の海外遠征馬が彩りを加える。スタート直後の駆け引きがレースを形作る。コーフィールドでは序盤400mがしばしば距離適性を左右し、今年の枠順も序盤からのドラマを予感させる。

🇬🇧 ブリティッシュ・チャンピオンズデー
10月18日
G1・英チャンピオンステークス(IFHAレーティング16位タイ)
G1・クイーンエリザベス2世ステークス(同29位タイ)

珍しく良馬場想定となったブリティッシュ・チャンピオンズデーは、G1が5レース組まれる祭典が待ち受けている。

英チャンピオンSでは、種牡馬入りが決まっている愛チャンピオンSとエクリプスSの勝ち馬であるドラクロワと、インターナショナルSでそのドラクロワを破ったオンブズマンの、胸躍る再戦に期待が集まっている。フランスのカランダガンも、再び10ハロンに戻ってくる公算が大きい。

G1・クイーンエリザベス2世ステークス(1600m)では、フィールドオブゴールドが3歳勢の先陣を切って古馬に挑む。道悪を望む牝馬のフォールンエンジェル、善戦止まりが続くロザリオン、アスコット巧者のドックランズ、伸び盛りのネヴァーソーブレイヴが名を連ねる。

🇧🇷 ラテンアメリカ大賞デー
10月18日
G1・ラテンアメリカ大賞

南米のチャンピオン決定戦、G1・ラテンアメリカ大賞がブラジルに戻り、2016年以来となるガベア競馬場での開催となる。

出走16頭はすでに確定しており、ブラジル4頭、アルゼンチン2頭、チリ3頭、ペルー6頭、ウルグアイ1頭という顔触れが、ブラジル勢に挑む構図だ。ジョアン・モレイラはサンパウロのオバタイェとのコンビを継続するが、同国のイーサリアムが立ちはだかる。

🇦🇺 コックスプレートデー
10月25日
G1・コックスプレート(IFHAレーティング10位タイ)

1883年からタイトな小回りで競馬を紡いできたムーニーバレー競馬場は、現行のコース配置での最終開催日を迎える。看板のG1・コックスプレート(第104回)が終了次第、競馬場は一時閉鎖され、スタンドを現在の800m地点へ移設する形でコースが再配置される。

節目のコックスプレートは、史上14頭目の複数回優勝を狙うヴィアシスティーナが主役。先週のG1・ターンブルステークスを制したサーデリウスが立ちはだかる。先週のG1・マイトアンドパワーステークスでの衝撃的敗戦を受け、トレジャーザモーメントの出走にはなお不確定要素が残る。

🇯🇵 菊花賞
10月26日
G1・菊花賞

皐月賞、日本ダービーに続く、クラシック三冠の最終戦。ダービー馬のクロワデュノールは凱旋門賞遠征で回避、皐月賞馬のミュージアムマイルも不在となる一戦になった。注目は、G2・神戸新聞杯でワンツーを決めたエリキングとショウヘイだ。

さらに、G3・新潟記念で唯一の3歳馬ながら2着健闘のエネルジコも参戦する。

🇦🇺 ヴィクトリアダービーデー
11月1日
G1・ヴィクトリアダービー

メルボルンカップウィークの開幕日は、伝統と実力が交錯する一大イベントだ。開催名の由来は3歳馬の2500m長距離戦、ヴィクトリアダービーだが、併催レースの層も極めて厚い。

フレミントンの直線1200mコース、通称 “ザ・ストレート・シックス” で行われるG1・クールモアスタッドステークスは、オーストラリア屈指の「種牡馬選定レース」の舞台として有名だ。G1・エンパイアローズステークスと合わせ、この日はG1が3本立てとなる。

🇺🇸 ブリーダーズカップデー
11月2日
G1・ブリーダーズカップクラシック(IFHAレーティング5位タイ)
G1・ブリーダーズカップターフ(同15位)
G1・ブリーダーズカップマイル(同36位)

2年連続でデルマー開催となる米国競馬の祭典の2日目は、ダートと芝の両方で世界の精鋭が集う。G1・ブリーダーズカップクラシックが全14レースの中心となり、総賞金3,000万米ドル超が用意される。日本や欧州からの国際遠征馬が、地元の強豪陣営に挑む。

🇯🇵 天皇賞秋
11月2日
G1・天皇賞(秋)(IFHAレーティング25位)

天皇賞(秋)は、日本における3歳以上の2000m戦最高峰だ。多くの場合、夏競馬や宝塚記念を経た有力馬が集結する舞台で、国内中距離王決定戦であり、ジャパンカップへの重要な前哨戦でもある。宝塚記念でG1初制覇を果たしたメイショウタバルに、皐月賞馬ミュージアムマイル、東京優駿2着のマスカレードボールら、3歳世代が挑む構図だ。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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