Aa Aa Aa

クリストフ・ルメール騎手と、シルクレーシングの勝負服。この組み合わせは、偉大な王者アーモンドアイやイクイノックスと共に、いくつもの最高の瞬間を競馬史に刻んできた。

そして、12月14日のG1・香港マイルでは再びその勝負服を身に纏い、エンブロイダリーとともに大舞台へと挑む。

香港ジョッキークラブ(HKJC)が水曜日に発表した4つのG1レースの出走馬リストにより、桜花賞と秋華賞を制したエンブロイダリーが、初の海外遠征に挑戦することが確定。距離をマイルに短縮して、シャティン競馬場で初めて古馬と対戦する。

ルメールはIdol Horseの取材に「まだ3歳馬ですから、外国馬や日本の古馬相手に真の実力を測るのは難しいですが、日本での走りを見る限り、非常に良いパフォーマンスが期待できると思います」と話し、エンブロイダリーへの期待を語った。

JRAの騎手リーディングでトップに立つ日本のチャンピオンジョッキーは、4月のG1・桜花賞以来となるマイルへの距離短縮を懸念していない。エンブロイダリーは先月、2000mのG1・秋華賞を制しているが、5月のG1・優駿牝馬では距離が持たず9着に敗れていた。

「現時点ではマイルがベストの距離でしょう」とルメール。「エンブロイダリーはトップクラスの牝馬です。素晴らしい加速力を持っていますし、私たちは大きな期待を寄せています」

「オークスの時は、マイルから2400mへの距離延長となり、折り合いをつけるには気性面の成長がまだ十分ではありませんでした。ですが、秋華賞の1週前の調教やレース本番では、以前よりずっとリラックスして折り合いもついていました。今はだいぶ大人になってきたというサインだと思います」

「初めての海外遠征になりますから、輸送や環境の変化、香港の雰囲気にどう対応するかを見ていく必要があります。未知数な部分はありますが、とても良い挑戦になるでしょう」

「エンブロイダリーには大きなポテンシャルが秘められていることは分かっていますし、馬にとっても非常に良い経験になると思います」

Team Embroidery pose after winning the Shuka Sho at Tokyo
CHRISTOPHE LEMAIRE (L), EMBROIDERY, KAZUTOMO MORI (R) / G1 Shuka Sho // Kyoto /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

ペースの乱高下が激しいシャティンのマイル戦は、森一誠厩舎のエンブロイダリーにとって新しい経験となるだろう。香港マイルは通常、出足からペースが上がり、その後一旦落ち着き、コーナーで再びペースアップしてから、直線の激しい追い比べとなる展開が多い。

香港マイルはシャティンのスペシャリストが制することが多い。今世紀に入ってからは香港調教馬が19勝を挙げているのに対し、日本馬は5勝。直近の日本馬の勝利は6年前のアドマイヤマーズまで遡る。

「シャティン競馬場に合うかもしれません。とても乗りやすい馬ですから。秋華賞では自信を持って乗ることができました。1コーナーから2コーナーの後、ポジションを上げることができましたし、その後もまたうまく折り合いました」

「エンブロイダリーは未知数のレースに戸惑うようなタイプではありません。順応性が高く、この手のレースにおいて非常に大きな強みになります」

エンブロイダリーを含め、今年の香港国際競走に挑む日本馬の8頭。香港マイルには昨年の2着馬であるソウルラッシュも参戦する。

一方、昨年の香港マイルを制したヴォイッジバブルは、ロマンチックウォリアーが待っている2000mのG1・香港カップではなく、香港マイルでタイトル防衛を目指す構えだ。

ジャパンカップが初めて開催されたのは1981年11月22日だが、日本馬による初勝利は1984年のこの週、11月25日にカツラギエースが挙げたものである。

このレースはミスターシービーとシンボリルドルフの三冠馬対決としても注目され、英国馬のベッドタイムや、世界を股にかけるニュージーランド馬のストロベリーロードも参戦していた。カツラギエースは単勝40.6倍の人気薄ながら勝利し、2着にベッドタイム、3着にシンボリルドルフ、10着にミスターシービーが入った。

1946年11月26日には、史上初となる航空機による馬の大西洋横断輸送が行われ、歴史が作られた。アメリカン航空がアイルランドのシャノン空港からニュージャージー州ニューアークまで6頭の馬を空輸し、飛行機は翌日目的地に着陸した。

1982年11月28日は悲しい日となった。5戦5勝の記録を持つ無敗の2歳馬、ランダルースがウイルス感染により死亡し、ハリウッドパーク競馬場の内馬場に埋葬された。ウェイン・ルーカス調教師が管理したこの牝馬は、死後に全米最優秀2歳牝馬に選出された。

かつてのレジェンドジョッキーであり、香港競馬の評論家でもあるシェーン・ダイ氏が、カーインライジングが自身の見てきた中で最高の短距離馬である理由を力説。今週のコラムは必見だ。

今年のブリーダーズカップは地方競馬のトップジョッキー、吉原寛人騎手にとって計画通りにはいかなかった。

カリフォルニアでデイヴィッド・モーガン騎手が独占取材し、競馬ファンから騎手への転身、若手時代の弱点、“海外遠征のパイオニア”との出会い、そして海外重賞勝利への揺るぎない決意について語った。

オーストラリアのリゾート地、ケアンズに拠点を構えるリッキー・ルドウィグ厩舎から、香港のトップレベルへと上り詰めたトモダチココロエ。マイケル・コックス記者がその軌跡を追った。

今週の「世界の注目馬リスト」は、パントルナイーフを紹介。月曜日、1800mのG2・東京スポーツ杯2歳ステークスを制し、Idol Horseの“Future Idols”の称号を手にした牡馬だ。

このレースは未来のスターへの登竜門であり、過去の勝者には昨年のクロワデュノールを筆頭に、イクイノックス、コントレイル、ワグネリアン、サトノクラウン、ディープブリランテ、ローズキングダム、ナカヤマフェスタなどが名を連ねている。

パントルナイーフはデビュー戦ではアートバーゼルの2着に敗れたが、そのアートバーゼルは次走のリステッド・アイビーステークスで、中内田充正調教師が管理する期待馬、アンドゥーリルから1馬身差の2着に入っている。

パントルナイーフの2戦目はラストスマイルを2着に下して初勝利を挙げたが、今回はそのライバルが5着に入り、これまで戦ってきた相手のレベルの高さが証明された。

今回、クリストフ・ルメール騎手はパントルナイーフをスムーズなリズムに乗せ、中団の外目を追走。コーナーで進出を促すと、馬は楽に反応した。直線へスムーズに入り、残り400mで前の馬を追いかけるよう指示されると、きっちり応えて伸び、懸命に追撃するG3入着馬のゾロアストロを退けた。

ゾロアストロは勝ち馬よりもかなり早い段階から追われており、その分ラストでの踏ん張りに差が出た格好だ。

Peintre Naif and Christophe Lemaire
PEINTRE NAIF, CHRISTOPHE LEMAIRE / G2 Tokyo Sports Hai Nisai Stakes // Tokyo /// 2025 //// Photo @s1nihs

ジャパンカップ
東京競馬場、11月30日

アルカセットが外国調教馬として最後にジャパンカップを制してから20年が経つが、フランシス=アンリ・グラファール調教師の管理するカランダガンは、その歴史を揺るがすに足る挑戦者として浮上している。

アスコットのG1・キングジョージとG1・英チャンピオンSを制覇すると、それに続いて東京へと向かい、輝かしい歴代優勝馬にその名を加えようとしている。

グラファール師は自身のキャリア最高のシーズンに花を添えようとしているが、2400mの大一番では、ダービー馬のクロワデュノールやダノンデサイル、そして秋天覇者のマスカレードボールを始めとする日本のスター軍団が待っている。厳しい戦いは承知の上での挑戦だ。

チャンピオンズカップ
中京競馬場、12月7日

ゴドルフィンは、かつてジャパンカップダートとして創設されたチャンピオンズカップで、レモンポップによって2年連続で栄冠を手にしてきた。今年はその後継者として、別の有力馬にタイトル奪取を託すことになる。

レモンポップが引退し、新たなヒーロー誕生の舞台が整う中、ジャパンダートクラシック勝ち馬のナルカミは、現在4連勝中で通算成績を6戦5勝とし、頂点を目指してさらに歩みを進めようとしている。

G3・みやこステークスを制して通算7戦6勝としたシルクレーシングの4歳牝馬、ダブルハートボンドとの上がり馬対決にも注目が集まる。

香港国際競走
シャティン競馬場、12月14日

先週日曜日にシャティン競馬場で行われた前哨戦は、4つのG1が行われる香港国際競走への期待を大いに高めるものとなった。

ここで安定の強さを見せたカーインライジングとロマンチックウォリアーは、それぞれ香港スプリントと香港カップのタイトル防衛に向けて圧倒的な人気を集めそうだ。

一方、香港マイル戦線は混戦模様。ジョッキークラブマイルではギャラクシーパッチが復調し、マイウィッシュはここからの巻き返しが必要となるだろう。ヴォイッジバブルはマイル王座の防衛を目指す。

また、香港ヴァーズには昨年の勝者であるジアヴェロットを含め、世界からトップクラスの遠征馬が集結している。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

デイヴィッド・モーガンの記事をすべて見る
Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

ワールド・レーシング・ウィークリーの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録