Horse To Follow: エンブロイダリー

1着(6頭立て), 2歳 未勝利戦
1800m (芝), 新潟競馬場
土曜日 7月29日

血統: アドマイヤマーズ × ロッテンマイヤー(クロフネ)
調教師: 森一誠

夏の新潟開催は、2歳コースレコードを0.9秒も更新する驚きのレースで開幕した。

7月後半から始まる新潟競馬場の夏開催、毎年優秀な若駒がデビューすることで有名な開催だが、今年は開幕戦から大物候補が現れた。6頭立てで唯一の牝馬ながら1.1倍の1番人気。圧倒的な注目を集めたエンブロイダリーだったが、その評価に見合う、もしかしたらそれ以上のパフォーマンスを見せつけた。

レースはエンブロイダリーがスタートダッシュと共に先頭に立ち、ペースを引っ張る展開。直線に入ってライバルが追い上げ始めても、この牝馬に乗るクリストフ・ルメール騎手の手は動かない。肩鞭を入れただけでグングン突き放し、最終的には7馬身差の逃げ切り勝ち。ライバルに影すら踏ませない、完璧な逃げ切りだった。

さらに、2歳トラックレコードを0.9秒も更新。タイムは1:45.5、新記録を樹立した。

Embroidery wins at Niigata
EMBROIDERY’S RECORD TIME / Niigata // 2024 /// Photo by @ntmkuc

ルメール騎手はこの日が休暇明け。これが復帰後最初のレースだったが、そのレースセンスに陰りは見られなかった。本人もそれについて尋ねられると、「自転車と一緒で感覚は忘れない」と答える余裕を見せた。

馬主は、水色の勝負服で有名なシルクレーシング。不思議なことに、その前の記録を持っていたカンティアーモもまた、シルクレーシングの所有馬だった。この牝馬は後に、G3・フラワーカップで3着入着を果たしている。余談だが、3年前の夏にはイクイノックスも同じ新潟1800mで初勝利を挙げている。

0.9秒という大幅な更新を見せたレコードタイムだが、この週の開催は時計が早かったというのも確かだ。同じ日に行われた3歳未勝利戦では1:45.4、3歳以上のオープン戦ではレコードタイムに迫る1:44.0が出ており、全体的に時計が早いコンディションだった。

また、翌日の日曜日にも、2歳馬が芝コースでレコードを更新している。1400mの未勝利戦で、同じシルクレーシングのアーリントンロウがレコード勝ち。2頭はともに優秀な2歳馬だが、馬場状態の影響は少なからずあったと見るのが自然だろう。

しかし、これをまぐれと片づけるのはフェアではない。エンブロイダリーはジョアン・モレイラ騎手を乗せて敗れた新馬戦のときから、その才能の片鱗を見せていた。先に抜け出したミリオンローズを捉えきれず2着に敗れたレースだったが、追い上げるときの末脚は目を見張るものがあった。この馬の実力が確かなのは、間違いないだろう。

父のアドマイヤマーズは今年の新種牡馬。JRAでは4勝を挙げており、新種牡馬の中ではタワーオブロンドンと並んでトップのペースで勝ち星を積み重ねている。オーストラリアのアローフィールドスタッドでもシャトル種牡馬として供用されており、今年の種付け料は2.2万オーストラリアドルだ。

Admire Mars wins G1 Hong Kong Mile
ADMIRE MARS, CHRISTOPHE SOUMILLON / G1 Hong Kong Mile // Sha Tin /// 2019 //// Photo by Lo Chun Kit

母のロッテンマイヤーはG3・クイーンカップで3着入着。3代母のビワハイジで、G1・6勝馬のブエナビスタがファミリーにいる血統だ。伯母のエーデルブルーメは、今年のG3・マーメイドステークスで2着に入っている。

ちなみに、このファミリーラインはビワハイジに因み、小説『アルプスの少女ハイジ』に関連する馬名が多い。2代母のアーデルハイトはハイジの本名、母のロッテンマイヤーはハイジの教育係だ。

では、エンブロイダリーの由来は?きっと、ロッテンマイヤーの趣味が刺繍だったことが由来だろう。
レース映像はこちら

将来の展望: 最優秀2歳牝馬の候補に入る可能性あり

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