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フォーエバーヤングがG1・ブリーダーズカップ・クラシックで精彩を欠いた敗戦を喫した後、矢作芳人調教師は、なぜいつもの走りができなかったのか、馬が言葉で教えてくれればいいのにと嘆いた。

「馬が話せない」という点で、競馬は珍しいスポーツだ。主役であるアスリート、本来なら最大のスターとなるべき存在が、観客と言葉を交わせない。

だが、騎手は話せる。しかも、香港の王者ザック・パートン騎手や、米国を拠点とする数多くの騎手のように、話のうまい人もいる。

土曜日、その魅力で主役の座をさらったのは、ベテランのケンドリック・カームーシュ騎手だった。積極的な騎乗でウィリアム・ビュイック騎手との駆け引きを制し、G1・ブリーダーズカップ・マイルで勝利を収めた。

9月のウッドバイン競馬場での雪辱を果たすと、「俺は『ゲイター(愛称のワニ)』って呼ばれてるんだ!」と、喜びのあまりラップでも口ずさむかのように言葉を繰り出した。誰もがそのカリスマ性を目の当たりにした。

「前回のカナダじゃやられたけど、キーンランドならやり返せるって分かってたんだよ。さあ、どうだ、デターミニスティックだ!」

「デターミニスティック」の「タ」を強調し、語尾の「ティ」をたっぷり引き伸ばして、最後は「ク」と歯切れよく締めくくった。

「競馬は世界最高のスポーツだよ!」とカームーシュは続けた。「まだ競馬場に来たことがないなら、一度来てみてよ。俺みたいなイケてるやつにも、世界のトップジョッキーたちにも会えるんだからさ」

「競馬を見に来てくれよ。みんな、愛してるよ! フゥーッ!」

サフィー・オズボーン騎手の丸みを帯びた母音の響きはカームーシュとは対照的だが、香港の競馬ファンも間もなく、その人柄に引き込まれることだろう。ホリー・ドイル騎手もいる。ファンやメディアへの対応にはいつも定評があり、負傷から復帰したばかりの彼女も、数週間後から香港で騎乗を始めると発表された。

競馬の物語を伝えるうえで、騎手は欠かせない。人間の側の主役であり、中には伝説となった人もいる。

英国の名騎手だった故レスター・ピゴットをはじめ、イヴ・サンマルタン、ジョージ・ムーア、唯一無二のランフランコ・デットーリ。米国のビル・シューメーカーやエディ・アーキャロ。そして、日本競馬史上最高のジョッキー、武豊だ。

彼らのカリスマ性はファンを魅了した。世界的に競馬が衰退傾向にある今、そうした魅力でファンを引きつける騎手が、これまで以上に求められている。しかし、この10年ほど、世界の騎手の頂点に、人々を強く引きつける個性の持ち主が新たに現れたとは言い難い。

例えば、ライアン・ムーア騎手は間違いなく名手だ。周囲の話では、ユーモアがあり、淡々と人を笑わせる才もあるという。馬に携わるプロとしての意識も極めて高い。

だが、ムーアは社交的な性格ではなく、メディアに対しては慎重で、心を閉ざしていることも多い。少なくとも、拳を合わせたり、馬上から跳び下りたりして、感情を表に出すタイプではない。

ただ、今の競馬には、そうした生き生きとした姿も必要なのだ。今は若者から年配者まで、画面を指でなぞったりタップしたりするだけで、躍動感、興奮、笑い、高揚感をすぐに味わえる。SNSでフォローする人たちを通じて、そうした感情を共有することも多い。

Frankie Dettori and Inspiral win Breeders Cup at Santa Anita
FRANKIE DETTORI, INSPIRAL / G1 Breeders’ Cup Filly & Mare Turf // 2023 /// Photo by Sean M. Haffey
Billy Loughnane celebrating Libertango's win at the Breeders' Cup
BILLY LOUGHNANE / G1 Breeders’ Cup Juvenile Turf Sprint // 2026 /// Photo by Michael Reaves (Getty Images)

その意味で、ブリーダーズカップの金曜日、最初の大レースの後に見られた光景は、競馬の未来に希望を感じさせるものだった。リベルタンゴで勝ったビリー・ロックネイン騎手の反応と、観客との一体感だ。

「いいぞ、ビリー!」「やったぞ、ビリー!」。あるいは、ただ「ビリー!」と何度も繰り返す声もあった。ロックネインが自身初のブリーダーズカップ制覇を決めると、ウイナーズサークルのあちこちから、さまざまな歓声が上がった。

ロックネインはどう応えたか。いたずらっ子のような満面の笑みを浮かべ、勝利を喜んで両腕を掲げ、空に向かって拳を突き上げた。

そして、リベルタンゴの背中に掛けられた優勝馬の花飾りから黄色い花びらをつかみ取り、宙へ放り投げ、周りの人たちに降り注がせた。そこは完全に彼の舞台だった。観客も大喜びだった。

今年、ロックネインは大きく成長した。わずか20歳で英国のリーディングジョッキーとなり、無敗の名マイラー、ボウエコーでG1・英2000ギニー、G1・セントジェームズパレスステークス、G1・サセックスステークスを制した。

リベルタンゴの勝利後、記者会見に臨んだロックネインには大人の落ち着きがあった。特に英国のスポーツファンが近年すっかり見慣れてしまった、不機嫌で、斜に構えた無愛想さとは違う。メディア対応を管理されて個性を失った姿が、成熟と取り違えられることがある。

ロックネインは、落ち着きの中にも明るさがあり、自分の考えをしっかり言葉にしていた。受け答えは洗練され、内容も充実し、人を引きつける彼らしさも感じられた。

もっとも、外国で騎乗し、たった今、大舞台を勝ったばかりなら、そう振る舞うのは難しくない。本当に問われるのは、ケンプトン競馬場の何の変哲もない一日に、メディアやファンから向けられる関心にどう応えるかだ。

ロックネインも、ほかのトップジョッキーと同じように、そういう日は目の前の仕事に没頭することがある。仕事の厳しさや、ときには細かなところまで注目され、立ち入られることを考えれば、ある程度は理解できる。

一方、米国の一流の競馬人たちは取材に気さくに応じ、興味深い話を聞かせてくれる。その姿は、ブリーダーズカップからほかの国の関係者が学べることの一つだ。例えば坂井瑠星騎手にとっても、学ぶべき点がある。

フォーエバーヤングは話せないが、鞍上の坂井は話せる。ただ、取材に応じることはごく少なく、メディア対応はできるだけ控えている。通訳がそばにいることを考えると、言葉の壁だけが理由とは言えない。

今回ブリーダーズカップでロックネインが見せた姿は、最も若い世代の騎手たちが、その大切さを理解している証しなのかもしれない。曲芸を披露する必要はない。心を開いて自分らしさを見せ、人々とつながる。そうすることで、メディアも競馬の物語を、そこに息づく情熱とともに伝えられる。

1988年11月5日、ジュリー・クローン騎手は、女性騎手として初めてブリーダーズカップに騎乗し、歴史に名を刻んだ。ダービーシャフルとのコンビでジュベナイルフィリーズに出走し、2着に入った。

同じ日、ミエスクはブリーダーズカップ史上初の連覇を達成した。ニアルコスファミリーの名牝は、1987年にハリウッドパーク競馬場のBCマイルをレコードで制した。1988年はチャーチルダウンズ競馬場で行われたマイルを4馬身差で制した。

Miesque winning the 1988 Breeders' Cup Mile under Freddy Head
MIESQUE, FREDDY HEAD / G1 Breeders’ Cup Mile // Churchill Downs /// 1988 //// Photo by Breeders’ Cup

今週、目を引いたのは、名馬フライトラインの産駒、パワーラインだ。スティーブ・アスムッセン調教師が管理するこの牡馬は、ブリーダーズカップの土曜開催の幕開けを飾る7ハロンの未勝利戦(メイドンスペシャルウェイト)でデビュー3戦目を迎えた。その走りからは、上級条件でも通用しそうな素質がうかがえた。

パワーラインは7月、サラトガ競馬場の6ハロン戦でデビューして2着。8月には同じ競馬場の6ハロン半のレースに出走し、4着だった。2カ月ぶりの実戦となった今回はスタートで後手を踏んで10番手に下がり、フラヴィアン・プラ騎手を背に、行きたがるそぶりを見せた。

フランス出身のプラは、内から4頭分の外を回りながら前へ進ませ、最後の直線に向いた時には、4頭が横に並ぶ先頭争いに加わっていた。パワーラインは鋭く脚を伸ばし、先頭に立ったところで内へよれたが、そのまま脚を使い続け、1馬身差で勝った。

母はステークス勝ち馬のパークアベニュー。パワーラインは2025年8月のファシグティプトンのセールで、180万米ドル(約2億8500万円)で購買された。

POWERLINE, FLAVIEN PRAT / Keeneland // 2026 /// Video by Keeneland Racing

チャンピオンズステークスデー
フレミントン競馬場(オーストラリア)、11月7日

2週間前、白熱したG1・コックスプレートで1、2、3着となったコスミッククルセーダー、バードマン、アエリアナの3頭が、フレミントンに戻り、チャンピオンズステークスで再び顔を合わせる見通しだ。コックスプレートで6着だったG1・3勝馬のサーデリウスも、出走が見込まれている。

バイエルン大賞デー
ミュンヘン競馬場(ドイツ)、11月7日

欧州で今年最後となるG1で、マーク・プレスコット調教師が、2004年のアルバノヴァ、2021年のアルピニスタという2頭の名牝に続く、同レース3勝目を狙う。今回送り込むのはコンセントだ。昨年のG1・ロワイヤリュー賞勝ち馬で、前走のG1・ロワイヤルオーク賞では2着に入った。

1マイル半で争われる一戦には10頭が出走する見込みで、同じく英国から遠征するゲシンも名を連ねる。フランス勢の筆頭はタジリナだ。地元の期待を集めるのは、無敗の4歳馬アキド。過去6回のうち2回を勝っているヘンク・グレーヴェ調教師の管理馬で、前走はG3を制した。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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Racing Roundtable, Idol Horse

ワールド・レーシング・ウィークリー、世界の競馬情報を凝縮してお届けする週刊コラム。IHFAの「世界のG1レース・トップ100」を基に、Idol Horseの海外競馬エキスパートたちが世界のビッグレースの動向をお伝えします。

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