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土曜日のG3・サウジダービー(総賞金150万米ドル、約2億2500万円)で激闘を制したゴールデンヴェコマの勝利は、コナー・ビーズリー騎手にとって、自身の名をG1の舞台に押し上げる大きな一歩となった。約10年前、キャリアを脅かす大怪我を負った彼にとって、この勝利は特別な意味を持つものだった。

30歳のビーズリーは今冬、UAEリーディング争いで2位につけ、すでにG1・ザプレジデントカップ(純血アラブ)をヘロスデラガルデで制覇。さらに、ゴールデンヴェコマとのコンビではG3・UAE2000ギニーを制し、リヤドに乗り込んでいた。

キングアブドゥルアジーズ競馬場で見せた勝負強さは、ライアン・ムーア、ジョン・ヴェラスケス、武豊、クリストフ・ルメール、ジョエル・ロザリオ、オイシン・マーフィー、川田将雅、ジェームズ・マクドナルドといった世界のトップジョッキーが集う舞台でも決して見劣りするものではなかった。

「ここでは世界のトップジョッキーと肩を並べて戦うことになります。世界中の馬が集う大舞台で結果を出すなんて、まさに夢が叶ったようです」とビーズリーはIdol Horseに語った。

「キャリアのこの段階で、僕にはこういう勝利が必要だし、次のレベルへ進むためにここまで来た。もっと上を目指しているし、情熱を持って挑んでいる。チャンスをもらえれば全力で応えたい。今日それができると証明できたと思います」

Connor Beasley celebrates his Derby win on Golden Vekoma
GOLDEN VEKOMA, CONNOR BEASLEY / G3 Saudi Derby // King Abdulaziz Racecourse, Riyadh /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

ダート1600mで争われたG3・サウジダービー。ゴールデンヴェコマは好スタートを切ったものの、ビーズリー騎手はすぐに好位を維持し、逃げる日本馬シンフォーエバーを視界に捉え続けた。向正面からコーナーへ差し掛かる場面で、ビーズリーは勝負どころで動いた。日本の牝馬ミストレスとミリアッドラヴの間に進路を求め、果敢に前進。馬を促しながら外から押し上げようとするミストレスを振り切った。

「スタートは良かったけど、日本の馬は僕の馬よりも明らかにスピードに乗るのが速かった。ペースは速かったと思うけど、前との差を詰めておかないといけないと考えていました。ゴールデンヴェコマは持続的なスピードで走り続ける馬だから、あまり離されるわけにはいかなかったんです」とビーズリーは振り返る。

「少しスペースを見つける必要があった。あそこは絶対に入らなきゃいけなかった。馬の助けも必要だったし、先行馬の後ろにいた時、日本馬がすぐ近くにいて、キックバックをかなり受けていましたから。外に出してちょうど馬の間に入れると、そこから一気に加速して、先頭との差を一気に詰めていきました」

シンフォーエバーが直線入口でリードを2馬身に広げる中、ビーズリー騎手はゴールデンヴェコマに2発のムチを入れた。このドバイ調教馬はすぐに反応してストライドを伸ばしたが、直線に入ると内にモタれ気味になり、ビーズリーはバランスを取るために3度もムチを持ち替えながら立て直しを図った。

「左手前で走っていたので、右手前に切り替えたかったんです」とビーズリーは説明する。「普段なら自分から切り替えるんだけど、今日は慣れない馬場で…ドバイよりもずっと深い馬場だったから、それが影響したのかもしれない。最初の試みで手前を替えなかったから、とにかくスムーズに加速を続けることに集中しました」

「プレッシャーのかかる中で早めに仕掛ける必要があったけど、この広い直線で彼はしっかりとスピードに乗り、最後まで力強く走り切れましたね」

ゴールデンヴェコマは1馬身3/4差をつけてゴールし、菅原明良騎手騎乗のシンフォーエバーを退けた。次の目標は、4月5日にメイダンで行われるG2・UAEダービー(1900m)になりそうだ。

「おそらくそれがプランになるでしょう」とビーズリーは語る。「メイダンの2000ギニーを勝ったことで既に出走権は手にしているし、次まで6週間の間隔がある。ドバイに戻って状態を確認しながら、ボスとオーナーが最適な選択をするだろうけど、UAEダービーが濃厚だと思う」

ビーズリーが冬のUAEシーズンで主戦を務めるのは、アフマド・ビン・ハルマシュ調教師の厩舎。イギリスに戻れば、地元ダラムでキャリア初期に師事したマイケル・ドッズ調教師との強い関係も持っている。一方、ゴールデンヴェコマの馬主はモハメド・アル・スボウシ氏だ。

ビン・ハルマシュ調教師は、昨年フロリダで開催されたOBSスプリング2歳トレーニングセールで、ゴールデンヴェコマを9万ドル(約1350万円)で落札。今回のサウジダービー制覇で獲得した賞金は90万ドル(約1億3500万円)に上る。ビーズリーは、まだまだこの馬の成長余地は大きいと見ている。

「この馬には計り知れない可能性がある」とビーズリー。「彼は大型馬で、3歳になったばかりの今の段階でこれだけの活躍をしている。来シーズン、さらに成長して力をつけたらもっとすごいことになると思う」

2015年7月の落馬事故によりヘリコプターで病院へ搬送され一時は生死の境をさまよったビーズリーにとっても、ここまでの道のりは決して平坦ではなかった。しかし、ビン・ハルマシュ厩舎の手厚いサポートを受け、今や世界の舞台で実力を証明するチャンスを掴んでいる。

「本当に多くの人々が支えてくれている」とビーズリー。「アフマド・ビン・ハルマシュ厩舎はまるで家族のような存在で、チーム全員が一丸となって馬を育てている。厩舎スタッフも含め、オーナーや関係者全員が力を尽くしてくれているからこそ、この結果を出せたんだ。感謝の気持ちでいっぱいです」

「自分にとっても、馬にとっても、そして厩舎全体にとっても大きな成果だ。ゴールデンヴェコマは本当に素晴らしい走りを見せてくれたし、誇りに思います」

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍していた。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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