クリスチャン・デムーロ騎手は、年末に控えるJRAでの短期騎乗を前に、まずはフランスでの激しい最終決戦が待っている。そして、今のところは、長年の縁がある日本でも短期免許以上のことは考えていないと明かした。
現在、デムーロ騎手は、フランスのリーディングジョッキーを決めるクラヴァッシュドール賞(仏最優秀騎手賞)争いでトップに立っており、初のタイトル獲得に向けた戦いを優勢に進めている。
今年は3歳馬のルファールに騎乗し、3勝目を目指すG1・凱旋門賞を目前に控えた時点で158勝を挙げ、通算4度のリーディングを誇るマキシム・ギュイヨン騎手に、現在は7勝差をつけている。
このリーディング争いは10月31日まで続く。デムーロ騎手は油断せず、11月と12月に控えるJRAの短期免許を取得して訪日する際には、初のリーディングタイトルを手にしていたいと願っている。なお、ギュイヨン騎手も11月30日から翌年3月1日まで、香港競馬で騎乗する予定だ。
「通常は日本へもう少し早く行きますが、今回は様子を見ています。今年は(クラヴァッシュドールのために)フランスに残って戦わなければならないからです」と、クリスチャン・デムーロ騎手はIdol Horseに語った。
これまでも、彼は10月下旬のG1・天皇賞秋に合わせて来日していたが、背後にギュイヨン騎手の存在がある以上、今年はそうもいかない。3月1日に始まったこの長い戦いは、ゴールまで厳しい展開になると見込まれている。
「今年は良いスタートを切れましたし、さらにドバイでG1(ソウルラッシュでのドバイターフ)を勝つことができたのも大きかったです。冬も調子が良く、その流れを維持して、たくさんのレースに勝てました。まだ戦いの途中で、今はリードしていますが、残りあと1か月あります」
「凱旋門賞の後、必要ならもっと努力してタイトルを取りにいきます。今年が初めてのクラヴァッシュドール争いですから」
もし達成すれば、彼のキャリアに新たな勲章が加わることになる。イタリアでのリーディング2回(2011年、2012年)、ソットサスとエースインパクトでの凱旋門賞2勝、さらに日本やドバイで挙げたジェラルディーナ、ソウルラッシュ、シャフリヤールとのG1制覇に並ぶ、大きな実績となるだろう。

デムーロは日本との縁も深い。2011年に初来日して以来、定期的に短期免許で騎乗し、JRAで通算200勝以上を挙げている。
兄のミルコ・デムーロ騎手(現在は米カリフォルニアで騎乗中)は、クリストフ・ルメール騎手と並び、JRAの通年免許を持つ唯一の外国人騎手だ。通年免許にはJRAの試験合格が必要であり、クリスチャン自身も将来的にその可能性を考えているが、時期の見極めが重要だという。
「(通年免許の取得は)良い機会だと思うので考えてはいます。ただ、今はフランスでやれており、トップレベルで戦えている状況です」と彼は語る。
「日本に移籍のタイミングとして適切な時期かどうかは分かりません。まだ早いのかもしれません。将来的にはあるかもしれませんが、私はまだ33歳で若いですし、まずは凱旋門賞をもう1勝したいと思っています」
昨年のシーズンは、主戦厩舎のジャン=クロード・ルジェ調教師が病気で戦線を離れたこともあり、厳しいものとなった。しかし最近、ルジェ調教師はがん治療を終えて復帰し、再び現場に姿を見せている。
「私の騎乗スタイルは以前と変わっていません。ただ、昨年はルジェ師が病気になったことで、多くの馬を失い、厩舎としても大変でした。その分、今年は多くの調教師の馬に乗る機会が増えたのだと思います」とデムーロ騎手は語った。
「ルジェ師が戻ってきたのは良いことです。離れてしまった馬主を取り戻すことが今は重要ですが、彼は素晴らしい調教師ですし、必ずうまくいくと思います。その一方で、私は今年さまざまな厩舎から多くの乗鞍を得ており、今のところ順調に進んでいます」
勝利を確信しているわけではない。デムーロの言葉には常に “もし” がつきまとう。しかし彼は、もし仏リーディングを獲得できれば、それがキャリアの頂点であるだけでなく、大きな飛躍につながることを理解している。
「もし自分の実績に欠けているものがあるとすれば、リーディングジョッキーのタイトルがそれです。フランスの主要クラシックはすべて勝ってきましたが、このタイトルだけが残されています。だからこれからも挑戦を続けます」
「そして、もしチャンピオンになれば、人々の見る目も変わり、騎乗機会も増えるはずです。ぜひ実現したいと思います」