Aa Aa Aa

国が違えば、競馬の運営や見せ方も大きく異なる。使われる専門用語、ルール、そして細かなニュアンスまで様々だ。時には、我々が本当に同じスポーツを追っているのかと疑問に思うことさえある。

こういった文化の違いは、ダービーデーのエプソム競馬場で掲げられた『ヘイ、アメリカ!ダービーはD-ar-b-yと発音するんだぞ、D-er-b-yじゃねえからな!』というユーモラスな看板からも感じ取ることができた。

DERBY SIGN / G1 The Derby // Epsom /// 2025 //// Photo by Epsom Downs Racecourse

各国の競馬の違いの中でも、厩舎規模の違いはあまり目を引くようなものではないかもしれない。しかし、国によっては世界中の競馬ファンを驚かせるような数字が待っている。

例えば、欧米の競馬ファンたちは、アジア圏の調教師たちは管理できる馬の頭数に制限があることを知ると、驚きをもって受け止めることが多い。

香港では、各調教師には60頭までの頭数制限が設けられており、中国本土にある従化トレセンの施設も利用する場合は制限が70頭まで拡大される。現在、ジミー・ティン、マイケル・チャン、ミー・ツイ以外の全調教師がこの施設を利用している。

現在、昨シーズンのリーディングトレーナーであるフランシス・ルイのみが厩舎をフル稼働させている。デイヴィッド・ヘイズとピエール・ンは69頭、5人の調教師が68頭を管理している。

これは、香港競馬の約1300頭の競走馬が、調教師の間で均等に分散されていることを意味する。22人の調教師のうち、50頭未満の管理馬しかいないのはわずか5人で、ツイ調教師だけが35頭未満の25頭となっている。

日本のJRAでは、調教師は美浦または栗東のトレセンに厩舎を構え、成績に応じて上限30馬房を割り当てられる。

通常、管理馬は割り当てられた馬房数の2.5倍までとされているが、杉山晴紀調教師(91頭)のように、まだ厩舎に入厩していない2歳馬を登録する特例により、その数を超えている調教師もいる。馬たちは通常、次の出走の直前に美浦や栗東に入厩するまで、近郊の育成牧場で調整される。

矢作芳人調教師は日本でもトップクラスの大厩舎を構えており、管理馬の中には現在の世界ランキング首位のフォーエバーヤングもいるが、そんな矢作師でさえ75頭しか管理していない。さらに、栗東トレセンで与えられた馬房数はたったの28だ。

これらの競馬を見慣れたファンは、海外に存在する巨大厩舎について知ると同様に驚く。

オーストラリア最大の調教師であるキアロン・マーの厩舎は、レーシングオーストラリアによると528頭の管理馬が登録されている。ただし、この登録馬リストにはATCダービーやシドニーカップの勝ち馬であるエクスプローシブジャックのように、すでに引退済みだが未更新の馬も含まれている。とはいえ、入厩中だがまだ馬名が登録されていない2歳馬や1歳馬も存在する。

マーのライバルであるクリス・ウォーラー調教師は458頭の競走馬をリストに載せており、香港のデヴィッド・ヘイズ調教師の息子たちが共同運営するベン、ウィル、JDの厩舎は382頭を管理している。

オーストラリアの厩舎規模は非常に大きく、10番目に大きいアンソニー & サム・フリードマンの父子が共同運営する厩舎でさえ、レーシングオーストラリアに登録されている馬が200頭を超えている。

イギリスでは、アンドリュー・ボールディング厩舎が247頭で最大であり、ドーバー海峡を挟んだフランスでは、フランシス=アンリ・グラファール厩舎が228頭でトップに立っている。両者ともに、それぞれの国からオーストラリアのトップ10にランクインできる唯一の調教師となるだろう。

アイルランドとアメリカの正確な数字を把握するのはより難しい。エイダン・オブライエン調教師は世界的にも有名な厩舎を率いているが、厩舎の管理頭数はわずか200頭強ほどだ。

障害競馬と平地競馬、二刀流の達人であるウィリー・マリンズ調教師や、障害競馬の第一人者であるゴードン・エリオット調教師も200頭に近い数字だが、アイルランドの競馬統括団体からは内訳は提供されていない。

スティーブ・アスムッセン、トッド・プレッチャー、チャド・ブラウンといったアメリカの主要な調教師のほとんども、それぞれ200頭前後の馬を管理している。しかし、各厩舎に登録されている馬の数を示す単一のデータベースは存在しない。

しかし、厩舎の規模がどうであれ、調教師の役割、唯一の責任者としての彼らの立場は、どの国の競馬でも変わらない。勝利の興奮、敗北の痛み、そして馬への愛情。競馬というスポーツの真髄は世界共通だ。

Idol Horse reporter Andrew Hawkins

Hawk Eye View、Idol Horseの国際担当記者、アンドリュー・ホーキンスが世界の競馬を紹介する週刊コラム。Hawk Eye Viewは毎週金曜日、香港のザ・スタンダード紙で連載中。

Hawk Eye Viewの記事をすべて見る

すべてのニュースをお手元に。

Idol Horseのニュースレターに登録