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カランダガン対オンブズマン。それだけでも十分に心を引かれるが、凱旋門賞2着馬のベイシティローラーに、アルマカム、グシュタード、ホタツェルまで加わるとなれば、土曜日にアスコット競馬場で行われるG1・英チャンピオンステークスは見逃せない。

チャンピオンは、最強の相手と競い合ってこそ、その地位を手にする。カランダガンもオンブズマンも傑出した競走馬であり、両馬がぶつかる姿を見られることこそ、競馬の醍醐味であるはずだ。どちらか1頭でも欠ければ、その魅力は薄れる。

もし、英チャンピオンSが騸馬の出走を認めていなければ、出馬表にカランダガンの名前はなかった。公式レーティングで欧州最高の評価を受けるオンブズマンは、実力馬たちと対戦することになるが、チャンピオン同士の対決は実現しなかった。2頭のスターが激突する光景は見られないのだ。

2012年、この英チャンピオンSがフランケルの引退戦となったことを思い出してほしい。マイルで欧州の最強馬たちを破ってきたフランケルは、引退戦の前走となったヨークの1マイル1/4戦でも、英国とアイルランドの最強馬たちを7馬身差で一蹴し、衝撃を与えた。

英チャンピオンステークスでは、この王者に新たな試練が待っていた。秋のアスコットらしい、しっかりと雨を含んだ軟らかい馬場。そしてフランス競馬のスター、シリュスデゼーグルである。

道悪巧者のシリュスデゼーグルは、前年の英チャンピオンSで、オーストラリア発の中距離王者であるソーユーシンクを破って優勝していた。当時、100年前のホーネッツビューティー以来、欧州競馬界に現れた最高の騸馬とも評されていた。

そして、フランケルはこの騸馬を鮮やかに破り、傑出した名馬としての評価を確かなものにした。その勝利が種牡馬価値を損なうことも、まったくなかった。

英チャンピオンSは、世界の大半のG1と同じく騸馬に門戸を開いている。欧州の3歳クラシックが保護されているのは当然として、ほかのG1に騸馬が出走することで問題が起きたわけでも、サラブレッドの質が損なわれたわけでもない。

それだけに、先日フランスギャロが凱旋門賞への騸馬の出走を認める方針を決めた際の騒動は、興味深かった。大手生産者たちは落胆を隠さず、その反発は、名門モンソー牧場を運営するアンリ・ボゾ氏が「凱旋門賞を守ろう」と題したオンライン署名活動を始めるほどだった。

競馬と生産の両面で大きな影響力を持つクールモアは、自社のSNSアカウントでこの署名活動を紹介した。Xの投稿は5日間で48万4000回表示され、997件の「いいね」、558件のリポスト、102件のコメントを集めた。それでも、署名したのはわずか1161人だった。

コメントの大半は、クールモアやほかの大手生産者の主張を支持するものではなかった。この場に集まったファンたちは、最強馬同士の対決を見たいという思いを、はっきりと示していた。

その実現には、最高峰のレースにも騸馬の出走を認める必要がある。裕福な生産者を守るために出走を制限することを、競馬ファンは望んでいないのだ。

ボゾ氏の署名活動では、生産者が凱旋門賞で3歳牡馬を古馬と対戦させるのを避ける可能性もあると主張している。相手が騸馬なら、なおさらだという。その理由として挙げているのが、騸馬の身体的な優位性だ。

確かに、去勢によって競走馬は一般的には調教はしやすくなり、テストステロンの分泌が盛んな牡馬に比べて馬体重も軽くなりやすい。だが、だからといって騸馬のほうが競走能力に優れているとは限らない。

ここで大切なのは、生産者には出走させない選択肢があるのと同じように、出走させる選択肢もあるということだ。

本当に競馬の利益を第一に考え、本当にその牡馬がチャンピオンであると証明したいのなら、キングジョージや英チャンピオンSでそうするように、凱旋門賞でも騸馬と競わせるはずである。もし騸馬との対戦を避けるのなら、凱旋門賞の質を下げる選択をしているのは、生産者自身だ。

実際、大手生産者は何十年にもわたり、優れた牡馬の多くを4歳まで走らせず、3歳で引退させて種牡馬入りさせることで、世界の主要レースの質を下げてきた。

そして率直に言えば、商業生産を行う多くの生産者は、スピードを求めてサラブレッドのスタミナを犠牲にすることで、凱旋門賞やエプソムの英ダービーのような2400m戦の将来を脅かしている。

フランケルが4歳まで走り、近年もバーイードやダリズが4歳で競走を続けたことは、競馬にとって幸運だった。

だが、シーザスターズ、シンダー、ジェネラス、ガリレオ、ジャイアンツコーズウェイ、シティオブトロイ、エースインパクト、キングマン、シャマーダル、ダラカニをはじめ、実に多くの馬が3歳シーズンを終えて引退したことは、競馬界にとって大きな損失だった。

どんなスポーツにも、最高峰の戦いとライバル関係、そしてスターがある程度長く活躍し続けることが必要だ。競馬には、馬とその物語に思い入れを持ち、熱心に追いかけるファンが欠かせない。

5月にフランス競馬の危機的状況を説明したフランスギャロも、そのことを理解している。

騸馬は長く現役を続け、ファンとのつながりを築いていく。香港競馬界を盛り上げてきた名王者のカーインライジング、ロマンチックウォリアー、ゴールデンシックスティを見ればよい。何シーズンにもわたって走り、競馬ファンの厚い支持を得てきた。

4歳、ときには5歳まで走ってから種牡馬入りする日本競馬界のスターたちにも、同じことがいえる。

だからといって、騸馬をもっと増やす必要があると言いたいわけではない。そもそも、凱旋門賞の変更によって去勢される牡馬の数が急増したり、騸馬がこのレースを席巻したりする可能性は極めて低い。

だが、最強馬の一角に騸馬がいるのなら、その力を証明するために、この舞台で競う資格があるはずだ。

騸馬の出走を認めることは、競馬の本質を損なうどころか、競馬のためになる。ファンが望む対決が実現するからだ。競馬ファンが減りつつある今、その期待に応えることは欠かせない。

Daryz claiming back-to-back Arc's under Mickael Barzalona
DARYZ, MICKAEL BARZALONA / G1 Prix de l’Arc de Triomphe // ParisLongchamp /// 2026 //// Photo by Shuhei Okada

1920年10月12日、カナダ・オンタリオ州ウィンザーで行われたケニルワースパークゴールドカップは、1919年の米三冠馬であるサーバートンと、今や伝説的な名馬となったマンノウォーのマッチレースとなった。

マンノウォーにとっては引退前の最後のレースであり、7馬身差で難なく勝利。通算成績を21戦20勝、2着1回として競走生活を終えた。この日の硬い馬場は、蹄の弱かったサーバートンに合わなかったといわれている。

1970年10月17日、競馬史に残る有名な番狂わせの一つが起きた。傑出した三冠馬ニジンスキーが、約1.36倍に推された英チャンピオンステークスで敗れたのだ。

ヴィンセント・オブライエン調教師が管理する3歳馬のニジンスキーは、2週間前の凱旋門賞で僅差の2着に敗れ、無敗記録が途切れたばかりだった。今度は約15.29倍だった5歳馬のロレンザッチオに屈した。

その40年後の2010年10月16日、同じニューマーケットで、怪物フランケルがG1・デューハーストステークスを鮮やかに制し、名馬への道をまた一歩進んだ。ヘンリー・セシル調教師が管理する同馬は、後のG1・愛2000ギニー馬であるロデリックオコナーを難なく退けた。翌年のチャンピオンスプリンター、ドリームアヘッドは大きく離された5着だった。

日本勢によるG1・ケンタッキーダービー制覇への挑戦は、来年初めに具体的な形が見えてくるだろう。

だが、5月の第1土曜日にチャーチルダウンズ競馬場を目指す候補馬たちは、秋のうちから頭角を現す。月曜日の東京で見せた勝ちっぷりを見る限り、ウィンターブリーズは有力候補の1頭に数えられてもおかしくない。

この2歳馬は芝でデビューし、6月と7月に続けて2着になったが、砂の深いJRAのダートに転じてから本領を発揮。9月20日に中山の未勝利戦を2歳のコースレコードで圧勝し、一躍話題を集めた。

そして今週、東京競馬場で行われたプラタナス賞でも、5馬身差で快勝した。プラタナス賞と言えば、月曜日にJpn1・マイルチャンピオンシップ南部杯を勝ったメイショウハチローは、2024年のレースで5着に入っている。

ウィンターブリーズの今回の勝利を導いたのは、リーディングジョッキーのクリストフ・ルメール騎手。逃げ馬のすぐ外、差のない2番手につけると、直線では馬の行く気に任せて先頭へ。ホットロッドチャーリー産駒で、昨年のG2・UAEダービー勝ち馬アドマイヤデイトナの半弟にあたる同馬は、強く追われることなく後続を突き放した。

注目の田中博康調教師は、海外にも目を向けている。レース後、出走枠に入るだけの実績を積めていれば、次走は12月16日に地方競馬で行われるJpn1・全日本2歳優駿となる可能性が高く、その後は来季の海外遠征を検討すると話した。

川崎競馬場で行われる全日本2歳優駿は、3年前にフォーエバーヤングが制したほか、アグネスワールド、アグネスデジタル、フリオーソ、ルヴァンスレーヴ、デルマソトガケらも勝っている。

WINTER BREEZE, CHRISTOPHE LEMAIRE / Platanus Sho // Tokyo /// 2026 //// Video by @JRA_Special (X)

ジ・エベレストデー
ランドウィック競馬場(オーストラリア)、10月17日

香港の名王者、カーインライジングが、世界最高賞金の芝レースで連覇を目指す。

ここを勝てば連勝は22に到達。デヴィッド・ヘイズ調教師が管理する同馬に立ちはだかるのは、昨年2着に敗れて以降5戦無敗のゴドルフィンの実力牝馬テンプテッドを筆頭とする、オーストラリアの精鋭たちだ。雨が降り、道悪になる可能性もあるだけに、カーインライジングにとってこれまでで最も厳しい試練となるかもしれない。

ジ・エベレストに出走する12頭の顔触れには、ジョリースター、ジミーズスター、ヘッドウォール、エンジェルキャピタル、ニンジャ、ギガキックも名を連ねている。

コーフィールドカップデー
コーフィールド競馬場(オーストラリア)、10月17日

G1・コーフィールドカップは、オーストラリア競馬を代表する1マイル1/2のハンデ戦である。

昨年の勝ち馬ハーフユアーズは、その後G1・メルボルンカップも制した。今年は57.5kgを背負うが、1980年のミンダイナスティ以来となる2度目の優勝、そして1954年と1955年のライジングファスト以来となる連覇を目指し、再びこの舞台に戻ってくる。

かつてはアイルランドで走っていた実力馬のザーランは有力候補の1頭で、G1・ターンブルステークス勝ち馬のコスミッククルセーダー、英国から遠征するエンフジャールも優勝を争う一頭と目されている。

英チャンピオンズデー
アスコット競馬場(英国)、10月17日

カランダガンとオンブズマンが英チャンピオンステークスで激突するほか、当日は英チャンピオンズロングディスタンスカップ、英チャンピオンズスプリントステークス、英チャンピオンズフィリーズ&メアズステークス、クイーンエリザベス2世ステークスという、さらに四つのG1も行われる。

長い歴史を持つクイーンエリザベス2世ステークスは、欧州のマイル王者を決める一戦になり得る。ただし、開催時期が遅くなり、軟らかい馬場で行われることが多い現在に比べると、以前のほうが総合的な実力を測る舞台として優れていた。

今年は、好調のトークオブニューヨーク、仏ダービー馬のコンスティテューションリバー、仏2000ギニー馬のライフ、実力馬ザヴァテリが出走する可能性がある。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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