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2025 エリザベス女王杯: G1レビュー

競馬場: 京都競馬場

距離: 2200m

総賞金: 2億8310万0000円 (約180万4000米ドル)

1年前、同じ舞台で悔しい結果に終わったレガレイラが京都へと戻り、キャリア最高と言っていい完成度の走りを見せた。馬群中団から一気に脚を伸ばし、2分11秒0という、このレース50年の歴史で最速となるレースレコードで、国内トップクラスの牝馬たちが集う一戦を制した。

2着にはパラディレーヌ、そして猛然と追い込んだ人気薄のライラックが入り、上位3頭は差し・追い込み勢が独占。一方で、クラシック世代の有力馬の多くは後方からの追走を強いられる形となった。

この勝利は、レガレイラにとって2023年のG1・ホープフルステークス、2024年G1・有馬記念に続くキャリア3度目のG1制覇となった。

レガレイラは有馬記念の勝利後、骨片除去手術を受けた影響で、約6か月間ターフを離れていた。再び最高峰の舞台で勝ち負けできる状態まで立て直した木村哲也調教師の手腕は、改めて高く評価されるべきだろう。

勝ち馬・レガレイラ

1番人気に推されたレガレイラは、その期待にきっちり応えてみせた。

スワーヴリチャード産駒の同馬は、序盤は外目の10番手か11番手あたりで運び、荒れが進んだ内ラチ沿いを避けながら進出。レース最速タイとなる上がり3ハロンを繰り出し、最後は2着に1馬身3/4差をつけてゴール板を駆け抜けた。

この勝利は、4歳シーズン序盤を骨折で棒に振ったレガレイラにとって、完全な復活を印象づける一戦となった。今年の宝塚記念では精彩を欠いたが、9月のG2・オールカマーでの勝利が、ピークを再び取り戻したことを示していた。そのメッセージを、日曜日の一戦で決定的なものとした格好だ。

戸崎圭太騎手はこう振り返る。

「元々持っていた強さというのはホープフルSで見せつけられていたので、それを信じながら毎回乗せていただいてます。その中でしっかりと成長もしてきているところありますし、まだまだこれからも楽しんでいただけるかなと思います。体の面ではしっかりしてきてる部分があるなと思います」

戸崎騎手は、レガレイラにはまだどこか「牝馬らしい」気性面が残っているとしつつ、厩舎スタッフによる総合的なケアと成長を称えた。

「精神的な部分もその時々その日でちょっと変わってくるので、まだまだその辺は牝馬らしさがあるのかなと思いますけども。レース行ってからの乗りやすさっていうのはこの馬の強みだと思います」

「怪我してから少し長い間休んで、それが本当あんまり良くなかったんですけども、それからしっかりと馬もスタッフも立て直してきて、しっかりとこういうところで成果を出すっていうことで、すごく感動しています」

勝利騎手・戸崎圭太

戸崎圭太騎手はこれまでにも多くのG1勝利を収めてきたが、今回の勝利はその中でも特別な意味を持つ一戦となった。

自身にとってG1勝利は、昨年12月にレガレイラとのコンビで制した有馬記念以来。日曜日の圧巻の勝利で、JRA・G1通算14勝目に到達した。

この日は内ラチ沿いの馬場が荒れ、伸びあぐねる馬も多い馬場状態だったが、戸崎騎手は道中を通じてレガレイラのバランスを保ち、馬場と展開を読み切った騎乗を見せた。

「一番は内の方の馬場がちょっと良くなかったと思うので、なるべく内に閉じ込められないような形に気を付けていこうと。ギアを入れてから、スイッチを入れてから1つ1つのことに反応していってくれたので、強さを見せられたなと思います」

Keita Tosaki guiding Regaleira to victory in the Queen Elizabeth II Cup
REGALEIRA, KEITA TOSAKI / G1 Queen Elizabeth Cup II // Kyoto Racecourse /// 2025 //// Photo by Shuhei Okada

勝利調教師・木村哲也

木村哲也調教師は、イクイノックス一頭の実績にとどまらない手腕を示し続けている。今回の勝利は木村調教師にとってJRA・G1通算14勝目となるが、そのうち5勝はイクイノックスで挙げたものだ。

イクイノックスの輝かしいキャリアを支えたトレーナーは、今回も決して容易ではない課題に真正面から取り組んできた。

木村調教師は、手術明けのレガレイラを丁寧に立て直しただけでなく、レース前、特にスタート前のゲート入りの瞬間に見せる神経質な面を和らげるため、辛抱強く工夫を重ねてきた。美浦トレセンでの調教に加え、レース当日の発走前に一度発馬機に入れてからいったん外に出し、改めてゲートインさせるという型破りなアプローチも奏功した。

レガレイラはこれで2歳、3歳、4歳でそれぞれG1タイトルを手にしたことになる。

惜敗組

3歳馬のパラディレーヌは2着に入り、G1の舞台でも十分に通用する走りを見せた。1番枠からロスの少ない立ち回りで脚を溜め、残り200メートルで先頭に立って力強く粘り込んだが、レガレイラの一級品の決め手に最後は屈する形となった。そう遠くない未来にG1タイトルに手が届きそうだ。

6歳の人気薄ライラックは、このレースでレガレイラと並ぶ最速の上がりを繰り出して追い込んだ。その末脚は、12月の香港国際競走への招待に向けた期待を一気に高める内容であり、相沢郁調教師もレース後、その可能性をほのめかしている。

リンクスティップは先行集団の後ろで流れに乗り、直線では一度は大きく見せ場を作ったものの、ゴール前で差し・追い込み勢の強襲に遭い、最後は交わされてしまった。それでも、上昇著しい牝馬として高く評価できる内容と言える。

ココナッツブラウンはスタートでやや後手を踏み、外を回るロスの多い競馬になりながらも、最後はしっかりと脚を伸ばして5着に食い込んだ。

一方で、ステレンボッシュの不振は続いている。昨年のG1・桜花賞馬は、この日も道中でスムーズさを欠き、持ち前の切れ味鋭い末脚も影を潜めたままだった。かつての輝きを取り戻すには、まだ時間と工夫が必要だろう。

勝利騎手コメント

戸崎圭太騎手(レガレイラ・1着):
「今日は僕自身は人気に応えられてよかったなと思います。レガレイラは本当に強いと信じて乗せていただきましたし、素晴らしい走りで勝ってくれたので、応援ありがとうございました。また今後もいい走り見せてくれると思いますので、どうぞよろしくお願いします」

今後は?

レガレイラは、12月28日に行われるG1・有馬記念での連覇に向けて、これ以上ない態勢を整えたと言えるだろう。これは木村調教師と戸崎騎手がレース前から明言していた目標であり、日曜日の素晴らしい走りによって、そのプランは一段と現実味を増した。

その先の海外遠征も、決して非現実的な話ではない。ただし、関係者は限られた現役生活の残り時間を最優先に考えており、慎重にレース選択を行っていくことになりそうだ。

一方で、ライラックの強烈な追い込みは、香港ジョッキークラブの選考委員会にも強い印象を残したはずだ。香港国際競走の出走予定馬は、11月26日(水)に発表される予定となっている。

レースリプレイ: 2025 エリザベス女王杯

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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