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競馬場: 中京競馬場

距離: 1800m

総賞金: 2億6040万0000円 (約173万6000米ドル)

今年、第一回から数えて創設25周年を迎えるチャンピオンズカップは、芝のG1・ジャパンカップの『ダート版』として、ジャパンカップダートの名称でスタートした。

以来、舞台は東京から中山、再び東京、阪神、そして中京へと移り変わり、名称も変わった今では、JRAの年末を締めくくるダート王決定戦として、独自の存在感を放つまでになっている。

チャンピオンズカップが転機を迎えたのは2014年だ。JRAが「年末にトップクラスの海外ダート馬を日本へ招待する」という、難しいミッションを断念し、新名称を掲げて左回りの中京競馬場へと開催地を移したことで、レースは再出発を切った。

それ以来、チャンピオンズカップは日本のG1カレンダーにおける重要な一戦として、揺るぎない地位を築いてきた。

ダート路線に新時代の波到来?

レモンポップが過去2年、このレースを連覇してきた。しかし、その引退に加え、フォーエバーヤングの目標が海外レースに定められていることで、新たなスターが名乗りを上げるチャンスが生まれている。

そこに現れたのが、まだキャリアが浅い4歳馬のダブルハートボンドと、3歳世代のナルカミという2頭の新星だ。両者の激突は、実に興味深いものになりそうだ。

ナルカミは、かつてのレモンポップと同じくゴドルフィンの勝負服で走る。わずか6戦で5勝を挙げ、その多くで相手をちぎってきた台頭ぶりは、まさに衝撃的と言っていい内容だ。

前走、大井で行われたJpn1・ジャパンダートクラシックでは先行策から力の違いを披露。羽田盃と東京ダービーを制し、ダート三冠を狙っていたナチュラルライズを2着に退け、その野望を打ち砕いてみせた。

一方、シルクレーシングのダブルハートボンドも、キャリア7戦で6勝の戦績を誇る。こちらも大差勝ちを何度か演じてきたが、前走のG3・みやこステークスでの勝利はクビ差という辛勝だった。

ただし、その着差はレースの中身をすべて物語るものではない。ダブルハートボンドは直線で一気に突き抜けてリードを広げ、やや気を抜いたようにも見えたところへ後続が詰め寄ると、もう一度しっかりと反応して押し返しており、「クビ差以上」の完勝だったと言える。

Keita Tosaki rides Narukami to victory in the  2025 Japan Dirt Classic at Oi
NARUKAMI, KEITA TOSAKI / Listed Japan Dirt Classic // Oi Racecourse /// 2025 //// Photo by @Weboshi_photo

シックスペンスはダートで“覚醒”したのか

キャロットファームの4歳馬、シックスペンスは、芝からダートへとスイッチしてきた興味深い逸材だ。

シックスペンスは2024年春には、G2・スプリングステークスを含むデビューから3連勝を飾り、G1・日本ダービーの有力候補と目されていた。しかし、肝心のダービーでは9着に敗れ、世代の頂点は夢に終わった。

それでも秋にはG2・毎日王冠を制して立て直し、今年に入ってからもG2・中山記念を制覇。ところが、春のG1・大阪杯とG1・安田記念では結果を残せず、シックスペンスの陣営は思い切った方向転換に踏み切った。

アーモンドアイを育てたことで知られる国枝栄調教師は、シックスペンスの矛先を芝からダートに向け、その後の唯一の出走として選んだのが、盛岡のJpn1・マイルチャンピオンシップ南部杯だった。

そこでシックスペンスは、チャンピオンズカップの2年連続2着馬、ウィルソンテソーロの2着と健闘。キズナ産駒のシックスペンスは、ダート路線のトップホースとしての道を切り開けるのか。その真価が問われる一戦になりそうだ。

「三度目のウィルソン」なるか?

ウィルソンテソーロは、日本各地を舞台に中央・地方交流の主要ダート重賞を数多く経験してきた強豪だ。それに加え、G1・サウジカップとG1・ドバイワールドカップにも挑戦し、いずれも4着と健闘している。

中でも、2023年と2024年のチャンピオンズカップでの2年連続2着は、おそらくウィルソンテソーロにとってベストパフォーマンスと言っていいだろう。今年はレモンポップが不在なだけに、いよいよこの馬が主役に躍り出るチャンスかもしれない。

もっとも、すでに6歳となり、これ以上大きな上積みはさほど期待しにくい立場でもある。10月の南部杯では勝利を飾ったものの、前走の船橋・JBCクラシックでは5着どまり。ここからどこまで上積みを示せるかが、大きな焦点となる。

兄の無念は、弟が晴らす

今年のG1・ケンタッキーダービーでは見せ場なく終わったルクソールカフェは、日本のダート戦線を代表する良血馬だ。全兄はG1・フェブラリーステークスを2度制した、あのカフェファラオである。

もっとも、そのカフェファラオはチャンピオンズカップと相性が悪く、2020年は2番人気で6着、翌年の2021年も11着と精彩を欠いた。

ルクソールカフェには、その雪辱を「一族代表」として晴らすチャンスが巡ってきている。前走のG3・武蔵野ステークスでの勝利は、この大舞台へ向けた手応え十分の前哨戦に映った。ただ、その前のジャパンダートクラシックでは、ナルカミから大きく離された3着に敗北。この点は気になる材料でもある。

今回の手綱を取るのは、アメリカを拠点とするフランス出身の名手、フローレン・ジェルー騎手。ジェルー騎手にとっては、これがJRAのG1レース初騎乗となる。

Luxor Cafe and Joao Moreira
JOAO MOREIRA, LUXOR CAFE / Fukuryu Stakes // Nakayama /// 2025 //// Photo by @at_that_instant

「老兵」と侮ることなかれ

56歳のレジェンドジョッキー・武豊騎手と、8歳の古豪・メイショウハリオ。今年のチャンピオンズカップでは、このベテランコンビが新星たちに一矢報いろうと狙っている。

ただし、過去のチャンピオンズカップで7歳馬以上が勝利した例はなく、最年長で優勝した騎手は2000年、52歳でこのレースを制した岡部幸雄元騎手だ。これまでの優勝馬の内訳は、3歳が5頭、4歳が4頭、5歳が12頭、6歳が4頭となっている。

武豊騎手はこのレースを過去4度制しているものの、最後の勝利は2007年まで遡る。

メイショウハリオは地方交流のJpn1を4勝している実力馬だが、JRAのG1タイトルはまだ手にしていない。チャンピオンズカップにはこれまで2度出走し、2021年は7着、2023年は5着という成績だ。

それでも、8歳にして臨んだ前走のJpn1・JBCクラシックでは2着と健闘しており、その存在感はいまだ衰えていない。

デイヴィッド・モーガン、Idol Horseのチーフジャーナリスト。イギリス・ダラム州に生まれ、幼少期からスポーツ好きだったが、10歳の時に競馬に出会い夢中になった。香港ジョッキークラブで上級競馬記者、そして競馬編集者として9年間勤務した経験があり、香港と日本の競馬に関する豊富な知識を持っている。ドバイで働いた経験もある他、ロンドンのレースニュース社にも数年間在籍。これまで寄稿したメディアには、レーシングポスト、ANZブラッドストックニュース、インターナショナルサラブレッド、TDN(サラブレッド・デイリー・ニュース)、アジアン・レーシング・レポートなどが含まれる。

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