最も重要なのは、最初の第一歩。コスタノヴァのパフォーマンスを振り返るクリストフ・ルメール騎手は、綺麗にゲートを出た瞬間、日曜日に東京競馬場で行われた今シーズン最初のG1、フェブラリーステークスの連覇への道は開かれたと語った。
ルメール騎手は「やっぱり安心しました。ちょっと『あ、良かった、出た』と思いました」と振り返る。
その鮮やかなスタートは、前回の失敗とは正反対の転換点となった。
ルメールとコスタノヴァは昨年夏、浦和競馬場のさきたま杯で大敗に直結する致命的な出遅れを経験。今回のフェブラリーSでもスタートが「一番心配だった」とルメールは認める。
しかし今となっては、その敗戦こそが必要な「トライアル」だったと彼は捉えている。リズムと強烈な末脚が重視される東京競馬場の広大かつ公平なコースにおいて、コスタノヴァの最初の一歩は、選択肢を広げ、最終的にタイトルを防衛するために必要なすべてであった。
木村哲也調教師は、準備不足ではなく、あえて「練習をしない」という決断を下したことから、祈るような気持ちでゲートを見守っていたことを明かす。前走のゲート難を受け、審判部がゲート内での様子を監視する中で、厩舎側はあえて従来のゲート練習を一切行わないという選択をした。
指揮官は「正確に言うと、ゲート練習はしなかったですね」と明かした上で、「当然、責任ある立場として、多少の不安を持ってレースに挑んだという形です」と当時の心境を語った。
その賭けは見事に報われた。ルメールは、馬を後方に控えさせながらも「今日は良いスタートをしましたので、ロスがなかったです」と述べた。ウィルソンテソーロの後ろに潜り込み、理想的とも言えるポジションでレースの展開を待った。
「リズムはちょうど良かったです。ウィルソンテソーロの後ろですごく良いポジションでした」とルメールは振り返った。
そこから、連覇を狙うコスタノヴァは木村師が予期していた通りの落ち着きを見せた。リズム良く、エネルギーを温存しながら、険しい東京の直線に備える。
木村哲也調教師は「スタートでリズム良く出てくれることが、全てだと思っていました」と道中の手応えを語る。コスタノヴァが絶好の手応えで直線に向いた瞬間、勝利は必然のものと感じられた。
「彼がああいう絶好の手応えで回ってくるときは、ちゃんと脚が残っているときです」と木村師は述べ、「あとは前の馬をどれだけ捕まえにいけるかというところを注視していました」と続けた。
ベテランらしい冷静さで進路を確保したルメールは、馬を外へと持ち出した判断を「安全に乗りました」と振り返り、「ちょっと外側になりましたが、外に出してからのコスタノヴァの手応えはすごく良かったです」と語った。


レース後の議論は、今回初めて着用したブリンカーへと及んだ。ルメールは、その装具が道中の走りを根本的に変えたわけではないとしつつも、スタート時の集中力を高めた可能性に言及。また、パドックで馬を落ち着かせた厩舎スタッフの仕事も称賛した。
ルメールは「道中では何も変わらなかったけど、多分スタートでもうちょっと集中してたかもしれない」と分析し、「今日はスタート前、穏やかでしたね」と付け加えた。
一方で、木村師はブリンカーの効果を単純な結論に結びつけることには慎重だった。前走後から着用を検討し、自ら全責任を負って決断したことを認めつつも、その真の影響は数年経たなければ分からないかもしれないと示唆。
木村師は「個人的には『調教から変えて臨んでいる』という捉え方をしているので、何が今日、彼の走りをそうさせたのかっていうのは、ちょっとまた何年も経ってみないとわかんないです」と慎重な姿勢を崩さなかった。
今回、勝者が完璧な状態で仕上げられていたことは疑いようがない。ルメール騎手は、昨年の数戦を経て、コスタノヴァのコンディションが「だんだん良くなった」と感じていた。
「ラスト200mだけフルパワーを使いました。たぶん、あれからコンディションがステップアップしました。今日はベストコンディションで走れました」
ルメールはさらに、「今年多分、ピークを迎えましたね」と述べ、ダート馬でありながら、芝の馬のようなしなやかな加速を見せるまでに成長したとその走りを描写する。
「走るフォームはすごく良いですね。芝の馬みたい。フットワークが低いですから、スピードが出ています」
この勝利により、コスタノヴァはコパノリッキー(2014/15年)、カフェファラオ(2021/22年)に続く、史上3頭目のフェブラリーステークス連覇という快挙を成し遂げた。一瞬の出遅れや過酷な直線でのミスが許されないこのレースでは、連覇は稀有な記録である。
歴史的な勝利にもかかわらず、木村師の終始控えめな態度には揺るぎが無かった。フラストレーションの溜まる1年を振り返り、記録達成よりも安堵の気持ちが強いと語った。
「連覇云々、記録云々は別にして、まず結果を残せてほっとしたというところですね」
今後の目標について、調教師も騎手も具体的な明言は避けた。木村師は「まずはしっかり馬のコンディションを確認してから考えたい」と述べ、性急な海外遠征よりも慎重な姿勢を示した。
一方で、ルメールはこの馬が世界レベルのダート馬であるという確信を持っている。
「彼はダートでトップレベルです。次はわかりませんが、やっぱりG1ホースですから、どこへでも行けると思います」
