どの馬、どの調教師、どの騎手に注目すべき?
デイヴィッド・モーガン: ブレントン・アヴドゥラ騎手は昨シーズン、トニー・クルーズ厩舎のカリフォルニアスパングルで国内外のG1レースを制し、香港の競馬ファンに存在感を示しました。今シーズンもこれまで33勝、中堅騎手としても目立った存在です。リーディングでも上位を狙える存在、3位とか4位に入れる騎手だと思います。
大物とコンビを組んで実績を積み重ね、そして12月の大一番で勝てば、大きな目標への足掛かりとなるランクアップに繋がるはずです。彼は今シーズンすでにG3を勝っていますが、香港競馬はトレンドの波が激しく、カリフォルニアスパングルは3連敗中です。
日曜日のジョッキークラブスプリントで大本命のカーインライジングを破れば、間違いなく今月の主役に躍り出るでしょう。厳しい目で騎手の才能を見抜く、クルーズ調教師からの信頼も得られると思います。
マイケル・コックス: 2回のチャンピオントレーナー、デヴィッド・ヘイズ調教師にとっては試練の日です。2度目となる香港競馬での調教師生活も4年目、安定した成績を上げるには至っていませんが、カーインライジングというG1馬候補が現れました。勝てば2020年3月、オーストラリアンカップをフィフティースターズで制した時以来のG1勝利です。
厩舎の代表馬、カーインライジングは素質充分ですし、前走のG2・プレミアボウルは素晴らしい競馬でした。G1・香港スプリントに向けて、ここも良い競馬で突破してほしいところですね。
仮に敗れても命取りになるわけではありませんが、12月のG1・香港スプリントでも敗れてしまった場合、2020年夏に待望の香港復帰を果たしたヘイズ調教師に対する失望の声が上がってしまうかもしれません。
アンドリュー・ホーキンス: ジョン・サイズ調教師は、例年通りの静かなスタートでシーズン序盤戦を迎えましたが、彼が調教師リーディングに向けて本格化するのはここからです。
ジョッキークラブスプリントはヘリオスエクスプレスとハウディープイズユアラヴ、ジョッキークラブマイルはビューティーエターナルとレッドライオンのそれぞれ2頭出し、ジョッキークラブのエンスードはG3・ササレディースパースの勝ち馬です。
この5頭のうち、12月の大一番で有力馬になれる馬がいるかは未知数です。チャンピオンズマイルを勝ったビューティーエターナルは確かだと思いますが。ですが、13度目のリーディング獲得に向けて、ここから号砲が上がることになると思いますよ。
有力馬の番狂わせは?
デイヴィッド・モーガン: 来月のG1に向けて、ビッグネームがその実力を証明する展開になると思います。しかし、ヘリオスエクスプレスは要注目です。昨シーズンは香港クラシックマイルと香港クラシックカップを制覇、香港ダービーは距離の壁の前に屈しました。先月、11ヶ月ぶりの1200m戦となったG2・プレミアボウルでは、カーインライジングに次ぐ2着に入りました。
オフィシャルレーティング自体は劣っているかもしれませんが、見せ場を作る可能性は充分ありますし、初戦を叩いたことで上積みも見込めます。
アンドリュー・ホーキンス: ロマンチックウォリアーが休み明けに弱い可能性はあるのでしょうか?レーティング上ではライバルを大きく引き離しており、5ポンドの斤量差ではまだまだ軽いくらいです。
2022年は始動戦となったこのレースを勝ちましたが、オーストラリアで初戦を迎えた昨シーズンはG1・ターンブルSでゴールドトリップの4着に敗れました。敗因は様々、休み明けだけが原因とは言えませんが、負けた場合はそれが理由になるでしょう。ですが、もし負けた場合は誰が勝つのか、予想が難しいです。勝つのはこの馬以外にいない気がします。
マイケル・コックス: 敢えて言うならば、驚きがないことが驚きです。普通、前哨戦3レースのうち最低1つは香港国際競走の情勢を揺るがす波乱の結果となりますが、カーインライジング(スプリント)、ギャラクシーパッチ(マイル)、ロマンチックウォリアー(カップ)の3頭はどれも盤石のように見えます。
前哨戦にも外国馬が出走するようにすべき?
デイヴィッド・モーガン: ある意味では、前哨戦のG2レースは『国内馬向け』のチャンピオンシップレースとして設定されているので、外国馬の招致に動かない香港ジョッキークラブの姿勢も理解できます。
一方、賞金は高く、過去には海外馬の参戦が本番を盛り上げたこともありました。シンガポールの名馬、ロケットマンが14年前に参戦したときは、ジョッキークラブスプリントで同着優勝を果たし、G1・香港スプリントでも2着に入りました。
これらのレースが香港国際競走への良いステップだと外国馬陣営にも広まり、12月の本番に向けての期待感を高める要素と位置づけられれば、盛り上がりは増すでしょう。前哨戦とのダブル制覇でボーナスが出る、とかはいかがでしょうか。
アンドリュー・ホーキンス: これらのレースはマンネリ感が問題ですね。スプリントは新鮮味があり、マイルも面白そうですが、カップの場合は香港ゴールドカップなどとの差別化が欲しいところです。これらのレースは外国馬にとっても魅力的だと思いますし、特に出走ラインギリギリの馬にとっては有益なはずです。
たとえば、南アフリカは競走馬の輸出手続きがまだ調整中ですが、地球半周分を移動する馬にとって、G2を前哨戦に使ってG1レースに挑むスケジュールは調整しやすいはずです。ジョッキークラブは香港国際競走を『芝の世界選手権』と謳っていますが、前哨戦のG2レースはこれに役立つはずです。外国馬にとって12月に向けての足掛かりになると思います。
マイケル・コックス: 私のスタンスは『蛇足は必要なし』です。デイヴィッドが指摘したように、前哨戦のG2は香港馬向けの国内レースとして設計されており、外国馬を迎え撃つ大一番の3週間前に行われます。
かつては『国際トライアル』と銘打って行われていましたが、ジョッキークラブが称する『芝の世界選手権』のステップとしては絶好の舞台です。外国馬の参戦が相次ぐようになると、明確な差別化ができなくなってしまいます。
前哨戦の後、12月に向けての話題は?
デイヴィッド・モーガン: ジョッキークラブカップでは、仮に仕上がりが万全でなくてもロマンチックウォリアーなら圧勝できると予想しています。史上初の香港カップ3連覇という偉業に向けて、彼の挑戦に対する話題は欠かせないでしょう。
また、日本の怪物牝馬リバティアイランドも香港遠征の期待が高まりますが、その一方で彼女のようなビッグネームが実際に来るのかという議論も出てくると思います。
アンドリュー・ホーキンス: ここ数年、地元の香港馬は香港国際競走で見事な成績を残してきました。そのため、出走馬発表を来週に控えた香港ジョッキークラブは、前哨戦でも良いレースを見られることを期待しつつ、外国馬の参戦を減らすような圧倒までは望んでいないでしょう。
特に、香港スプリントは日本以外からの遠征馬が目立っていません。カーインライジングが圧倒的な競馬を見せた場合、検討中の海外勢は回避を選んでしまうかもしれません。
無事に遠征が実現すればの話ですが、ロマンチックウォリアー vs リバティアイランドの香港カップは注目の対決になりそうです。しかし、リバティアイランドは天皇賞秋での凡走明けです。仮にロマンチックウォリアーが今週敗れたとしても、そのまま本命馬になるという可能性もあるのではないでしょうか。
マイケル・コックス: ゴールデンシックスティが去った後、その大きな穴を埋める存在は誰なのか。ギャラクシーパッチはその候補だと思います。ピエール・ン調教師は新進気鋭の天才ですし、彼を厩舎の看板馬に育てる準備も整っています。
リッキー・イウ厩舎のヴォイッジバブルも王座を虎視眈々と狙っています。ンの師匠、ジョン・サイズ調教師のビューティーエターナルも忘れてはいけませんね。
これらの有力馬ですが、ゴールデンシックスティやその前の王者であるビューティージェネレーションほど抜けた存在ではありません。香港で最も層が厚いマイル路線ですが、ライバル同士の争いが絶えない激戦区になるかもしれませんね。