「世界ナンバー2のスプリンター」の座は一体誰の手に?
マイケル・コックス記者:
これに結論を出すには、まだ少し気が早いかもしれない。オーストラリアの牝馬、テンプテッドは秋シーズンを3戦3勝で駆け抜けたが、相手関係は限られていた。
私が本当に見たいのは、カーインライジングの後塵を拝してきた香港スプリンターが海外へ出て実力を示すことだ。サイレントウィットネスが絶対王者として君臨していた20年前、ケープオブグッドホープがそうしたように。
では、ヘリオスエクスプレスはどうか。2024年の香港クラシックマイルと香港クラシックカップを制したあと、マッシヴソヴリンが勝った香港ダービーは着外に敗れた。その後は14戦走るも、実に12戦でカーインライジングと顔を合わせてきた。
カーインライジング不在の一戦では勝利を挙げたが、王者の2着はG1での5回を含む8回、3着も3回に上る。不運なキャリアの中で積み上げてきた、実に際立った成績だ。
デイヴィッド・モーガン記者:
サトノレーヴは、堀宣行調教師の最近のコメントを聞く限り、相手のホームに乗り込んでカーインライジングを倒すことは至難の業だと覚悟していることだろう。
それでも、日本No.1スプリンターのサトノレーヴが意地の走りを見せることを期待しているはずだ。
そして再び世界最強馬とぶつかることで、サトノレーヴは今後の海外遠征へ向けて、さらに評価を高める機会を得る。6月のロイヤルアスコット再挑戦も視野に入っている。
7歳を迎えた同馬は、この1年半で世界の芝1200m路線でも最上位クラスにいることを示してきた。
2024年12月のG1・香港スプリントではカーインライジングから3/4馬身差の3着。昨年のチェアマンズスプリントプライズでは同馬の2着に入り、その数週間後のロイヤルアスコットでもラザットに僅差の2着だった。その後は国内のG1・スプリンターズSで4着、さらに2025年12月の香港スプリントでは精彩を欠いて9着と、少し躓いた面もあった。
それでも、サトノレーヴは昨年と同じくG1・高松宮記念を勝ってこの一戦に臨む。そしてその勝ち方を見る限り、ただ本来の姿を取り戻しただけでなく、これまで以上の状態にある可能性すら感じさせる。
もしそうなら、陣営は世界中どの芝1200m戦に送り出すにしても、カーインライジング以外を恐れる必要はないだろう。
ルーク・ミドルブルック記者:
注目はファストネットワークだ。
カーインライジングの陰に隠れがちだが、デニス・イップ厩舎のファストネットワークと、ヘリオスエクスプレスの間でも良い勝負が続いている。
両馬は昨年10月のG2・プレミアボウル以降、これまで4度対戦し、互いに2回ずつ先着している。その内容を見ても、ファストネットワークはヘリオスエクスプレスに劣らない評価を受けていい。
プレミアボウルでは12番枠から出て後方近くに控える厳しい形となりながら、6着でもヘリオスエクスプレスとの差は1/4馬身しかなかった。むしろこちらの方が中身の濃い競馬だったと言える。
その後のG2・ジョッキークラブスプリントでは2番枠を引き、ヘリオスエクスプレスの1馬身前あたりで運び、直線ではカーインライジングの後ろから理想的な形で脚を使って2着に入った。
G1・香港スプリントでもファストネットワークが再びヘリオスエクスプレスに先着し、カーインライジングの速い流れの近くで運びながら3着を確保した。ヘリオスエクスプレスはG1・センテナリースプリントカップで雪辱したが、その日はファストネットワークがいつものようにスムーズにゲートを出られず、持ち味である前目の位置を取れなかった点は注意が必要だ。


チャンピオンズマイルの「焦点」は?
マイケル・コックス記者:
香港競馬の4歳世代はどれほど強いのか。
香港ダービー馬のインヴィンシブルアイビスと、香港クラシックマイル勝ち馬のリトルパラダイスには、その答えを示す機会が与えられる。
4歳馬はチャンピオンズマイルであまりいい成績を残していない。もっとも、その世代の本当に一流の馬は、通常、より賞金の高い2000mのクイーンエリザベス2世カップへ向かう。
だが、あのエイブルフレンドでさえ勝てなかった。2014年には道悪の中、南アフリカのヴァライエティクラブに敗れている。地元4歳馬による最後の勝利は2011年のエクステンション。その前は2007年のエイブルワンまで遡る。
香港競馬は歴代屈指の名馬たちに恵まれてきた。ビューティージェネレーション、ゴールデンシックスティ、そして今はロマンチックウォリアー、カーインライジング、さらにはヴォイッジバブルまでいる。昨年のダービー世代は振るわなかった。この世代は、特に1600m以上の路線で生じつつある空白を埋めていかなくてはならない。
今回のチャンピオンズマイルは3つのG1の中で最も混戦と言われているが、ジャンタルマンタルは国内では文句なしのマイル王であり、香港の新星たちにとって確かな物差しになる。
デイヴィッド・モーガン記者:
ヴォイッジバブルはまだやれるのか。
まず前提として、ロマンチックウォリアーとカーインライジングの陰に隠れがちとはいえ、ヴォイッジバブルが積み上げてきた実績は驚異的であり、その功績はもっと広く称えられていい。
4歳時には香港クラシックマイルと香港ダービーを制覇。G1・香港マイルとG1・スチュワーズカップはともに2勝ずつ挙げている。そして昨年は、1600mのスチュワーズカップ、2000mの香港ゴールドカップ、2400mのチャンピオンズ&チャターカップを制し、史上2頭目の香港三冠馬となった。
ただ、正直に言えば今季は物足りない走りもあった。リッキー・イウ調教師も、この7歳馬がいつもの高いレベルで走れていないと感じれば、そう遠くない時期に引退させる考えを示している。
ヴォイッジバブルは今回、いつものチークピーシズではなく、初めてブリンカーを着用する。スチュワーズカップではロマンチックウォリアーに完敗し、香港ゴールドカップでも同じ相手に対して見せ場なく5着に終わった。
それでも前走には希望があった。G2・チェアマンズトロフィーではラッキースワイネス、2着マイウィッシュから1馬身半差の3着だったが、両馬より5ポンド重い斤量を背負っていた。まだもう一度、大きな勝利を挙げられる力が残っているかもしれない。
もしそうでないとしても、ヴォイッジバブルが去れば、香港のG1戦線、特にマイル路線には大きな穴が空くだろう。
ルーク・ミドルブルック記者:
香港競馬のマイル路線は、私たちが知る“水準”をまだ保てているのか。結論から言えば、答えはノーだ。
問題は、ここ数年の香港マイル路線に、エイブルフレンド、ラッパードラゴン、ビューティージェネレーション、ゴールデンシックスティ、ヴォイッジバブルといった傑出馬が次々と現れてきたことだ。4歳クラシック世代が出るたび、新たなスターが現れるのが当然のように思われてきた。
昨季はギャラクシーパッチがその座を継ぐ最有力に見えたが、まだそこまでは至っていない。今季はマイウィッシュが同じような期待を背負ってきたが、現時点では決定打を打てていない。
つまり、香港競馬のマイル路線は、いまだ若い世代の台頭を待っている状態。現状を牽引しているのは2頭の7歳馬、ヴォイッジバブルとラッキースワイネスだ。
その息の長さは称賛に値するが、今年のチャンピオンズマイルはマイウィッシュのような若い馬がはっきりと存在感を示さなければならない。そして、ギャラクシーパッチにもまだチャンスは残されている。
香港チャンピオンズデーが「転機」となりそうなのは誰?
ルーク・ミドルブルック記者:
ジェリー・チョウ騎手だ。
まだ大レースでの実績は多くなく、キャリアを代表する勝利と言えば、今もラッキーパッチで制した2021年のG2・ジョッキークラブスプリントだろう。
だが今季、彼は香港競馬を代表する騎手の一人になりつつある。騎手リーディングは現在4位につけており、最優秀地元出身騎手に贈られるトニー・クルーズ賞も視野に入る。そして今回、リッキー・イウ厩舎の看板馬であるヴォイッジバブルで、数少ない、しかも現実味のあるG1制覇のチャンスに挑む。
ヴォイッジバブルのような馬で国際G1を勝てば、それはチョウの騎手人生で最大の勝利となり、今後の大舞台での騎乗機会も一気に広がるだろう。
マイケル・コックス記者:
ロマンチックウォリアーと、その歴史的評価だ。
少なくとも香港での競走生活に限れば、競馬史に燦然と輝く屈指のキャリアと言っていい。その終盤に差しかかる今、この一戦は最大級の試練として位置付けられている。
もし通算4度目のクイーンエリザベス2世カップ制覇を果たせば、そのキャリアを鮮やかに締めくくる一撃になる。
クイーンエリザベス2世カップにはこれまで数々の名馬が参戦してきたが、今年は過去20年間の海外遠征馬の中で、最高レーティングの128を持つ馬が参戦する。それがマスカレードボールだ。
デイヴィッド・モーガン記者:
先日のG1・シドニーカップ制覇は、ジェイソン・コレット騎手の評価を押し上げる絶好の材料となった。香港チャンピオンズデーで、日本馬のジョバンニへの騎乗依頼を受けてクイーンエリザベス2世カップに臨むタイミングとしても申し分ない。
ニュージーランド出身の有望騎手である彼は、シドニーの層が厚く厳しい騎手社会で上位の一角を占めるまでの地位を築いてきた。だが今回は、オーストラリアとニュージーランド以外で初の大きなタイトルを狙うことで、その名をさらに広く知らしめる機会となる。
ロマンチックウォリアーやマスカレードボールのような強敵を相手に、伏兵のジョバンニを勝利へ導ければ、日本サイドからの新たな騎乗機会もきっと増えることだろう。

香港チャンピオンズデー後に見たい「見出し」は?
デイヴィッド・モーガン記者:
『マイル転向からの復活劇、ラッキースワイネスがチャンピオンズマイル制覇』
もしG1を勝てば、それだけで十分なニュースになる。重い脚部故障でどん底を味わったかつてのチャンピオンスプリンターが、マイラーとして蘇るとなれば、マンフレッド・マン調教師の努力が報われた勝利となるだろう。
マイケル・コックス記者:
「激闘制したチャンピオン、王者が真っ向勝負で強さを証明」
カーインライジングを負かせるとすれば不運くらいのものだが、彼が一方的に相手をねじ伏せる以外の勝利を見せたのは随分前の話だ。
ロマンチックウォリアーも、見方によってはキャリア最大の試練を迎える。両馬とも地元では圧倒的な支持を集めるだろうが、どちらかが苦境を乗り越えて勝つなら、それ自体が大きな見出しになる。
ルーク・ミドルブルック記者:
「カーインライジング衝撃の敗戦、シャティンが沈黙に包まれる」
想像するのが難しい見出しだ。だが、もし本当にそうなれば競馬界にとって何を意味するのか。12月の香港スプリントに向けて海外勢の関心がさらに高まるかもしれないし、逆にカーインライジング陣営自身が、ジ・エベレスト以外の海外挑戦にも目を向けるきっかけになるかもしれない。
カーインライジングのような馬が支配する構図は素晴らしいが、可能性が開き始めた時、競馬はさらに面白くなる。
