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ダニー・シャム師通算900勝「ロマンチックウォリアーが引退したら私も」 心の痛みと新たな目的

通算900勝に到達したダニー・シャム師が、ロマンチックウォリアーを巡る心の痛みと愛情、そして『引退』まで口にするほどの葛藤を明かした。

ダニー・シャム師通算900勝「ロマンチックウォリアーが引退したら私も」 心の痛みと新たな目的

通算900勝に到達したダニー・シャム師が、ロマンチックウォリアーを巡る心の痛みと愛情、そして『引退』まで口にするほどの葛藤を明かした。

ダニー・シャム調教師は、インタビューで思い切った本音を口にすることがある。もっとも、その多くは世界を飛び回るスーパースター、ロマンチックウォリアーが次にどこへ向かうのかという話題に関するものだ。だが昨年12月、香港レーシングポスト紙の取材で彼が明かしたのは、はるかに個人的な内容だった。

「私はもうすぐ66歳で、もう生計を立てるために働く必要はないと思っています。だからロマンチックウォリアーが引退したら、私も引退する可能性はとてもとてもとても高いです」 シャム師はそう語り、広東語のフレーズ「hou dai(好大)」、つまり『とても高い』を強調するために3回繰り返した。

ロマンチックウォリアーが昨年、球節の故障で手術を受けて戦線離脱したとき、徹底した仕事ぶりで知られるシャム師も、精神的に追い詰められていった。彼は香港ジョッキークラブを通じて心理的なサポートを求めた。

「妻に話して、辞めたいと切り出しました。ロマンチックウォリアーが苦しむのを見たくなかったんです。もし妻がその決断に同意してくれたなら、私は辞表を出すつもりでした。クラブの心理士とも話して、なぜあのとき自分がすぐ疲れてしまうのかを尋ねました。以前なら1日12時間以上働くことも簡単にできたんです。あの3か月は本当にきつかったです」

妻クリスティと息子アーロンは、それでも続けるように背中を押した。

シャティンのオールウェザーでの開催が静かに終わった涼しい水曜の夜。シャム師はゆっくりと厩舎へ戻っていく。調教師として通算900勝目を挙げたばかりで、その節目が彼を振り返る気持ちにさせていた。日曜には愛馬ロマンチックウォリアーがG1・スチュワーズカップに出走する。昨年の故障から復活し、先月は史上初の香港カップ4連覇を成し遂げた。その勝利は、彼にとって安堵の勝利でもあった。

史上最高の獲得賞金を誇る競走馬を手がける重圧について問われると、シャム師はこう語る。

「もちろん、ロマンチックウォリアーを管理できるのは光栄で、喜びでもあります。でも彼がケガをしたときはつらかった。本当に苦しくて、私もその痛みを感じました。まるで息子のようなんです」

「世界中の親なら、自分の子どもが熱を出したりケガをしたりしたら、こちらのほうがよりつらく感じますし、『その痛みを代わってあげたい』と思うでしょう。だから難しかったんです。彼は私にあまりにも多くを与えてくれた馬でしたから」

「厩舎で彼を見ると、彼は私のところへ来るんです。まるでキスでもしたいみたいに。だから私は結局、『君が引退したら、私も引退したほうがいい』と言いました」

その率直なインタビューは、クラブ関係者との話し合いにつながった。シャム師(現在66歳)は、65歳のときに認められた5年間の契約延長は全うすると伝えたという。だが、その振り返りの時間はすでに、彼の中に新しいものを芽生えさせていた。新たな目的と目標だ。

そもそもロマンチックウォリアーのその先に、何があるのか。ほとんどすべてを証明してしまった馬とともに、いったい何を証明し直すのか。

シャム厩舎の元主戦騎手シェーン・ダイは最近、Idol Horseで、かつてのボスの容赦ない仕事ぶりだけでなく、生涯学び続ける姿勢についても書いていた。その姿勢は、絶え間ない質問の中に表れていた。

「いつも質問していて、決して満足しませんでした」 ダイはそう振り返る。 「彼はアイヴァン・アランとジョン・ムーアという、香港史上最も成功した調教師のうち2人から学びました。でもダニーは、誰かのやり方をただ真似するだけでは満足しませんでした。どうしてそうなるのか、なぜ機能するのかを理解したかったんです」

そしていまシャム師は、自分の目的が次世代へ知識を伝えることへ移ったと言う。とりわけ、その相手として挙げるのはアシスタントトレーナーのカイル・ライだ。

「彼を見ると、私は自分がアイヴァンの厩舎にいた頃を思い出すんです。学びたがっていて、とても優秀です」 シャム師はそう語る。 「私の新しい目標が見つかりました。若い人たちを育てることです。だから背中を押していきます」

SHANE DYE, DANNY SHUM / Sha Tin // 2004 /// Photo by Kenneth Chan (Getty Images)
Danny Shum at morning trackwork in Meydan
DANNY SHUM / Meydan // 2025 /// Photo by Shuhei Okada

もちろん、シャム師自身が学ぶのをやめたわけではない。彼はいまも質問し続け、ライバルの調教師にさえ問いかける。そして、まだ達成すべきことがたくさんある。

「私のキャリアの最初の10年は、そこまで良くなかった。でも、この10年はずっと良くなりました」

厳しすぎる自己評価にも聞こえるが、数字はその主張を裏付ける。最初の10シーズンで勝ち星は304勝。そこから11年半で、600勝近くを積み上げてきた。

「自分の仕事にもっと集中するようにしていますし、結果がそれを示しています。素晴らしい馬たちを管理してきました」シャム師はそう語る。

厩舎のゲート付近で足を止めた。頭上の巨大なデジタル時計は午後11時15分を示していたが、シャム師の夜はまだ終わっていない。

彼はキャリアを通じて問い続けてきた。だが最大の師はロマンチックウォリアーだったと、彼は言う。そしてその馬と人の絆こそ、シャティンの次世代のホースマンたちへ最も伝えたいものでもある。

「もっと触って、感じてください。馬に手をかけてほしい」 シャム師はスタッフにそう呼びかけた。 「指示に従って、私のやり方に従ってください。でもまずは、担当する馬を一頭一頭、理解してください」

マイケル・コックス、Idol Horseの編集長。オーストラリアのニューカッスルやハンターバレー地域でハーネスレース(繋駕速歩競走)に携わる一家に生まれ、競馬記者として19年以上の活動経験を持っている。香港競馬の取材に定評があり、これまで寄稿したメディアにはサウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ジ・エイジ、ヘラルド・サン、AAP通信、アジアン・レーシング・レポート、イラワラ・マーキュリーなどが含まれる。

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