シティオブトロイがアメリカのデルマー競馬場で開催されるG1・ブリーダーズカップクラシックに向けて調整中の最中、香港では全兄のアンビリーバブルも復帰への道を着々と歩んでいる。
アンビリーバブルは5月に前脚の腱を負傷し休養入りしていたが、復帰後初となるキャンターを火曜日にシャティン競馬場で行った。
ジャスティファイ産駒のこの馬は、バリードイルのエイダン・オブライエン厩舎に在籍していた時代はバルティネッリという馬名で知られていた。移籍前は5戦2勝、ロイヤルアスコットのキングジョージ5世ハンデキャップで3着に入った後、ロー厩舎が主催するシンジケートに売却された。
「アンビリーバブルは今、キャンターを再開していますが、状態は良さそうです」
「幸運なことに、怪我を早く見つけることができました。もし、そのままレースを使っていたら、もっと深刻な怪我に繋がっていたと思いますから」
フランキー・ロー調教師はIdol Horseの取材に対して、現在の状態を説明してくれた。
「今のところは、時間をかけて様子見しながらの調整。それがベストなアプローチです。あまり無理はさせたくないですね。1200ポンド(約544キロ)を超える大柄な馬ですし、まだ牡馬のままですから」
香港競馬はあまり牡馬がいないことで知られているが、アンビリーバブルは全弟の活躍を受けて、まだ去勢されずに走っている。
シティオブトロイはヨーロッパの最優秀2歳牡馬を獲得した昨年に続き、今年はG1・英ダービー、G1・エクリプスステークス、G1・インターナショナルステークスを立て続けに制し、ヨーロッパのスーパースターの地位に上り詰めた。
アンビリーバブルは香港では5戦0勝だが、故障発覚の8日前に走った5月のG3・クイーンマザーメモリアルカップ(2400m)では3着、その前の3月には香港ダービー(2000m)で5着に入り、安定して掲示板入りを確保している。
「全弟の活躍を受けて、オーナーたちからは『まだ去勢しないでおこう』と言われています。良いレースを勝てば、種牡馬入りの道も開けるかもしれませんね」
シャム厩舎 & クルーズ厩舎の動向
一方、ダニー・シャム厩舎もバリードイルから購入したジャスティファイ産駒がいる。ヨーロッパ時代はキャピュレットという馬名で走り、5月のリステッド・ディーステークスを制した実績を持つ良血馬、ロマンチックソーだ。
現在はロマンチックウォリアーの馬主、ピーター・ラウ氏がスキ・タン氏と共同で所有している。早くも香港ダービーの有力候補と称されるこの馬は、9月7日に鞍上ヒュー・ボウマン騎手でダート1200mのバリアトライアルに出走予定とされていたが、雨を心配して取り止めとなっていた。
「最初のバリアトライアルの出来を見て、どのレースを使うか決めます」とシャム調教師は語っている。
シャティンではシャム厩舎の隣に厩舎を構えるトニー・クルーズ調教師は、カリフォルニアスパングルを擁している。ロマンチックウォリアーとは双璧を成す存在だが、どちらも今シーズンのビジョンは明確なようだ。
ロマンチックウォリアーは、6月のG1・安田記念を制して以来となる復帰戦を、11月27日の『ジョッキークラブレース』で予定している。2年前に勝った2000mのG2・ジョッキークラブカップ、もしくはG2・ジョッキークラブマイルを使う見込みで、その後はG1・香港カップ3連覇の偉業に挑む。
その後の予定としては、3月のドバイがターゲットとして浮上している。
「ドバイはオプションの1つです。日本や、安田記念連覇を目指すのも候補ではありますが、日本は賞金がそれほど高くありません。ですが、日本遠征で受けられる待遇は超一流ですし、施設も非常に素晴らしいことは確かです」
香港のチャンピオンスプリンター、カリフォルニアスパングルもドバイ遠征を視野に入れており、今年前半にはドバイでG1・アルクォーツスプリントを制した実績がある。当面の目標としては、10月20日のG2・プレミアボウルでの復帰戦だ。
2022年にはG1・香港マイルを制した実績もあり、マイル路線でもトップクラスの実力を誇る騸馬だが、調教師は今シーズン短距離路線に専念させる意向を示している。トニー・クルーズ調教師はIdol Horseの取材に対して、以下のように語った。
「今のところの出来には満足しています。調子は良いですし、今シーズンはスプリントに留める予定です。短距離に専念ということですね」
「10月にG2を走った後、11月はジョッキークラブスプリント、12月は香港スプリントという算段です。ドバイはまだ先の話ですが、頭の片隅には入っています。香港で良い成績を残せるようなら、ドバイを目指すつもりです」