私がこれまで目にしてきた中で、カーインライジングは最高のスプリンターだ。
ブラックキャビアよりも、サイレントウィットネスよりも、そしてロードカナロアよりもこの馬は強い。
他の3頭に敬意を払っていないわけではない。彼らは皆、偉大なチャンピオンだった。だが、カーインライジングの何が凄いのかをここで改めて語りたい。
カーインライジングは驚異的な出脚の速さを持っている。勝つために運や特定の展開を必要としない。自分で展開を作れる馬だ。ハイペースからさらに加速することができる馬は稀で、その先行力のおかげでトラブルに巻き込まれることもない。
そして、その背にはザック・パートンという完璧な騎手がいる。
私はめったに馬を「チャンピオン」とは呼ばない。人々はこの言葉をあまりにも安易に使いすぎる。私が現役時代に騎乗したオクタゴナルやタイザノット、彼らは素晴らしい馬でファンからも人気だったが、それでも私はチャンピオンとは呼ばないだろう。
キングストンタウンはチャンピオンだった。ウィンクスもチャンピオンだった。サイレントウィットネスは全盛期はチャンピオンスプリンターだったし、ブラックキャビアもそうだった。ロマンチックウォリアーはチャンピオンであり、ゴールデンシックスティもそうだ。フランケルは中でも最高だった。カーインライジングもその一握りのグループに属している。
私が競馬界で誰よりも尊敬してやまない人物がいる。どの競馬ファンよりも長い年月を、レースに費やしてきた人物だが、その彼がこう言った。カーインライジングと比較できる唯一のスプリンターは、ヴェインだけだと。それほどのレベルの話をしているのだ。
ほとんどのスプリンターはレース展開の犠牲になり得る。前半が速すぎればゴール前で止まってしまうし、ペースが遅すぎて後方待機となれば、レースに参加することさえできない。
だが、カーインライジングには“言い訳”というものがない。好位につけ、進路を確保し、そこからさらに再加速できる。プレッシャーを受け止めながら加速できる馬はごくわずかだ。
だからこそ、私は彼を他の馬より上に評価する。私は常にブラックキャビアとサイレントウィットネスを五分五分と見ていた。日によってどちらかが勝つだろうと。ロードカナロアが制した2013年の香港スプリントは、私が今まで見た中で最も衝撃的な香港スプリントだった。
しかし、もし全員が、公平な馬場で、しかも全員ベストコンディションで一緒に走ったとしても、私はカーインライジングに賭けたい。
オーストラリアのスプリンター、ジミーズスターは枠順さえ良ければジ・エベレストでもっとカーインライジングに迫れたはずだとか、来年は脅威になるだろうといった話をよく耳にする。
だが、シドニーでのカーインライジングはベストの状態と比べたら、少なくとも4馬身は劣っていた。日曜日、ホームである香港に戻り、本来の走りを取り戻した彼の姿を我々は目の当たりにした。
2005年、ケープオブグッドホープが香港のスプリント路線のレベルがいかに高いかを示した。サイレントウィットネスはこの馬を簡単に負かしたが、その後、ケープオブグッドホープはオーストラリアやイギリスへと遠征し、世界の強豪相手にG1レースを制した。
サイレントウィットネスがケープオブグッドホープを楽に負かしたこと、そしてカーインライジングがさらにその上を行くとすれば、なぜ私がこの馬が世界最強スプリンターだと考えるのか、理解してもらえるはずだ。
ザック・パートンはこの馬にとって完璧な騎手だ。彼は積極的で、不運な要素を排除することを好む。カーインライジングはそのスタイルに完璧に合っている。ザックが静かに乗れば彼は爆発的な脚を使うし、スピードに乗せても依然として強すぎる。このコンビは強烈だ。

また、デヴィッド・ヘイズ調教師のシンプルな戦略も称賛に値する。「スプリンターなのだから、スプリンターとして扱う」ということだ。マイルに伸ばすことも、無意味な遠征もしない。地元には巨額の賞金があり、来年のジ・エベレストは論理的な長期的目標となる。
これまで多くの名馬が適性外の条件に挑み、二度と全盛期の輝きを取り戻せなくなるのを見てきた。
サイレントウィットネスがその代表例だ。カーインライジングに関しては、何も試行錯誤する必要はない。無敵の強さを維持させるべきだ。私の見解では、彼はこれまでに見た中で最高のスプリンターだ。そう言い切れる。
“年齢の壁”を乗り越えたロマンチックウォリアー
日曜日、ダニー・シャム調教師は歴史に残る名仕上げでロマンチックウォリアーを送り出した。7ヶ月の休養明け、怪我からの復帰、そしていきなりの2000m戦。これは優秀な馬であっても簡単なことではない。
私にとっての鍵は、始動戦に向けて彼が見せた姿だった。バリアトライアルはどの年よりも良かった。動きは流れるようで、コンディションも申し分なく、馬体重がそれを物語っていた。
昨シーズン、彼は2年前と比べて20〜30ポンド(約9~13kg)ほど馬体重が増えていたが、今回は、2023年の香港カップを勝った時と全く同じ体重で戻ってきた。それが、仕上がりの良さを何より物語っていた。
人々は「休み明けの2000m」を何か新しいことのように話すが、彼は以前に2度それをやってのけ、圧勝している。ダニーはこの課題に向けてどう仕上げるべきか正確に知っている。
私はよく、馬の偉業について騎手の功績に着眼点を置くが、ロマンチックウォリアーの場合、シャム師が成し遂げたことは信じられないほど素晴らしく、最大級の敬意に値する。
ロマンチックウォリアーが真のチャンピオンである理由は、様々な距離で勝てるからだ。フレッシュな状態なら、1200m戦でも勝てるだろうと私は思う。末脚勝負にも対応でき、2000mも走れる。さらにチャンスがあれば、2400mもこなせると信じている。
サウジカップで示したように、ダートさえも走れる。それでもなお、彼ほどの馬であっても、ゴールデンシックスティは彼が得意とする2000mで直接対決に勝った。ゴールデンシックスティがいかに特別な馬であったかを物語っている。

ヴォイッジバブルに関しては、初戦の走りが非常にハードだったため、日曜日のG2・ジョッキークラブカップのようなレースでの叩き2戦目は決してプラスにはならないと思っていた。
ここから調子を上げるだろうが、ロマンチックウォリアーも同様だ。そこが問題なのだ。香港国際競走当日に2000mでヴォイッジバブルが形勢を逆転する姿は想像できない。香港マイルへ距離を短縮して1600mに戻すのは正しい判断だ。マイルの方が混戦であり、ヴォイッジバブルは絶対的な適距離にいるロマンチックウォリアーとの対戦を避けることができる。
一波乱の前哨戦、香港マイルのジャッジは
日曜日のG2前哨戦で、単勝1.4倍の1番人気マイウィッシュが敗れたことで、香港マイルは一気に面白くなった。さて、これをどう見るべきか。
私のレースの見立ては、マーク・ニューナム調教師がレース後に語ったことと一致した。
ペースが速くなり、マイウィッシュは掛かってしまい、一度もリラックスできなかった。普段は折り合える馬が突然あのように引っかかると、終いの脚を使えなくなる。まさにそれが起きたのだ。
400m通過地点で彼が掛かっているのを見て、私は「これはまずい」と思った。結果だけ見れば物足りない内容だったが、それには正当な理由があった。マークが示唆したように、おそらく出走間隔が5週間空いたことと、レース当日のフレッシュさが裏目に出たのだろう。
好材料は、あの一戦から多くの収穫を得られることだ。マイル本番まで3週間、あのレースを叩いたことで、次はもっと落ち着くと期待できる。もし枠順に恵まれ、4、5番手で気分良く運び、彼らしい瞬発力を発揮できれば、依然としてマイル戦線の中心だ。もしまた引っかかれば、レースは混戦になる。
ギャラクシーパッチはカーインライジングとは対照的なタイプの馬だ。脚質的に自らの運命をコントロールできない。展開が向く必要があるのだ。
だが、だからといって彼がトップクラスでないわけではない。昨シーズンを通して多くの人々が「期待外れ」だと言い続けていたときでさえ、私は決して彼を「見限る」ことはなかった。前回の調整過程を振り返ってみれば、一連の悪い騎乗や展開が災いし、ベストの走りを見せるチャンスを与えられなかったことが分かるだろう。
日曜日、彼はついに必要なものを手に入れた。速いペース、そしてジェームズ・マクドナルドの我慢強い騎乗だ。J-Macは距離ロスを抑え、道中で慌てる場面もなく、直線で一度だけ勝負をかけた。それがギャラクシーパッチのスタイルだ。行きたくないポジションに無理に入れようとすれば引っかかってしまうし、彼が本当に使える“切れる末脚”は一瞬だけだ。それを温存しなければならない。

彼はヴォイッジバブルやロマンチックウォリアーほど強いか。いや、そうは思わない。しかし、条件さえ整えば、ギャラクシーパッチはG1を勝つ能力が十分にあり、彼が正真正銘の香港マイルの有力候補であることを、改めて証明してみせた。
香港勢の視点から見ると、マイル戦線はこう見える。マイウィッシュは折り合えば依然として本命。ギャラクシーパッチはペースと騎乗が噛み合えば脅威。そして2000mから距離を短縮してくるヴォイッジバブルが、さらなる厚みを加えることになる。
シェーン’s セレクション: ハッピーバレー開催
先週、推奨馬に挙げたランランタイミングは心房細動を起こしてしまい、ほとんど最後方に近い着順だった。このようなアクシデントが起こると、馬が本来の力を発揮することが叶わない。今週の水曜日は、期待できる馬を2頭挙げたい。
推奨馬: 7レース、5番・アメージングゲイズ
前走は直線残り200mで不運が重なり、進路があればおそらく勝っていたはず。パートンが騎乗する今回は、4番ゲートからは好走を期待したい。
推奨馬: 8レース、7番・キングロータス
11番ゲートは理想的ではありませんが、おそらく後方から運ぶ形になるはず。前走の内容は非常に良く、このレースもメンバー構成的には力上位だ。

