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2024 ホープフルステークス: G1レビュー

競馬場: 中山競馬場
距離: 2000m 
総賞金: 1億5220万0000円 (96万4060米ドル)

中山競馬場で行われた2歳馬によるJRA最後のG1、ホープフルステークスはクロワデュノールが勝利。感動的な騎乗を見せた北村友一騎手とともに制し、将来の日本の競馬界のスターとして名乗りを上げた。

2017年にG1に格上げされたホープフルステークスは、その名の通り、サートゥルナーリア、コントレイル、レガレイラなど、新たなスター馬を生み出してきた。それ以前の改名前も含めると、コスモバルク、ヴァーミリアン、ロジユニヴァース、ヴィクトワールピサ、エピファネイアといった馬を輩出している。

斉藤崇史調教師が管理するクロワデュノールが、これらの名馬たちに肩を並べるにはまだ道のりは長いが、2歳時の全てのレースを完璧にこなし、クラシック三冠に挑戦する機会を得ることとなる。

Croix Du Nord was a dominant winner of the Hopeful Stakes
CROIX DU NORD, YUICHI KITAMURA / G1 Hopeful Stakes // Nakayama /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

レース展開

サンデーレーシング所有の勝ち馬は2025年に向けて大きな話題となるだろうが、このレースでは単勝オッズ303倍のファウストラーゼンの存在も重要だった。それはなぜか?9度目のG1騎乗となる杉原誠人騎手が、17番人気の馬で大胆な戦略を取り、3着に食い込む好騎乗を収めたからだ。

今年の日本のG1レースの多くは、スローペースに悩まされてきた。このレースも、直線を出てジュンアサヒソラに騎乗する横山和生騎手がペースを落とし、1600メートルから800メートル地点までを49.7秒という緩いペースで進んだ時点で、同じ展開になりそうだった。

そこに登場したのが、杉原騎手とファウストラーゼンだ。後方2番手につけていたこのモズアスコット産駒は、1000メートル地点に近づいた際、馬群が密集する不利な状況に置かれた。しかし杉原騎手は、ペースの犠牲になることを避け、外から馬群を回してファウストラーゼンをジュンアサヒソラの外につけることを決断した。

このペースアップにより、7番手につけていたクロワデュノールは理想的な位置を確保することができ、1番人気馬に絶好のチャンスが与えられた一方で、中団より後ろの馬たちの展望は暗くなった。

印象的だったのは、ファウストラーゼンは最後の1ハロンでまだ先頭を走っており、最終的にクロワデュノールには3馬身余り、2着のジョバンニには1と1/4馬身差の3着を確保する粘りを見せたことだ。杉原騎手のこの騎乗が、2025年の芝のG1レースが再開される際、他の騎手たちにも刺激を与えることを期待したい。

Croix Du Nord and his Hopeful Stakes rivals
CROIX DU NORD / G1 Hopeful Stakes // Nakayama /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

勝者・クロワデュノール

日本に前売り式の馬券があれば、クロワデュノールは三冠の3つのレース、4月のG1・皐月賞、5月のG1・日本ダービー、10月のG1・菊花賞のすべての早期1番人気となっていただろう。

イギリスG2勝ち馬のライジングクロスを母に持つこの馬は、2015年のG1・優駿牝馬(オークス)4着のアースライズの半弟だ。しかし、彼は世代の台頭するスターとして、2025年に向けた期待の星となっている。

注目すべきは、先月のG2・東スポ杯2歳Sに勝利し、その後ホープフルSを制したという、コントレイルと同じ臨戦過程を歩んでいることだ。3歳時も同じ道を進むとすれば、次走は皐月賞となる。

勝利ジョッキー・北村友一

北村友一騎手は、クロノジェネシスで2020年の有馬記念を制して以来、4年に及ぶ長い雌伏の時を経て、G1勝利を手にした。

北村騎手は2021年5月、阪神の未勝利戦で脊椎などの骨折という大怪我を負った。過酷なリハビリ期間で400日以上も実戦から離れることを余儀なくされ、その間にクロノジェネシスはG1・宝塚記念に勝利し、凱旋門賞と有馬記念に挑戦して引退。北村はキャリアの最後を観客として見守ることになった。

復帰後は騎乗機会に恵まれず、今年3月になってようやく重賞での勝利を手にした。しかし、クロノジェネシスの調教師である斉藤崇史調教師と同じサンデーレーシングの所有馬でG1の頂点に返り咲いたことで、レース後には涙を隠せなかった。

そして今、新年に向けて日本競馬における最もチャンスのある一頭を手にしている。

An emotional Yuichi Kitamura after winning the Hopeful Stakes
YUICHI KITAMURA / G1 Hopeful Stakes // Nakayama /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

勝利トレーナー・斉藤崇史

斉藤崇史調教師は、8勝目のG1を手にし、これはジェラルディーナが2年前に香港でQEII世杯を制して以来となる。

G1勝利の多くはクロノジェネシスによるものだが、2021年にはキラーアビリティでもこのホープフルSを制している。キラーアビリティは3歳時には期待に応えることができなかったものの、今年初めにサウジアラビアで2着と好走しており、将来的にクロワデュノールが海外に挑戦することになっても不思議ではない。

勝利騎手コメント

北村友一 (クロワデュノール、1着): 「馬が本当に強かったですし、信じて乗りました。枠順を見たとき、スタートだけは絶対に失敗したくないと思ったので、決められて良かったです。道中は思い通りではなかったですが、馬を信じて自分のレースに徹して、強い走りができたと思います」

「またG1を勝つことができました。本当に皆さんに助けていただいて、応援していただいて、またこの舞台に導かれたのだと思います。この場をお借りして、皆さんに感謝の言葉を伝えたいと思います。ありがとうございます。来年はまたビッグレースで活躍したいと思いますので、一緒に歩んでいけたらと思います。これからも努力して、一生懸命頑張りたいです」

Yuichi Kitumara enjoying his Hopeful Stakes win
YUICHI KITAMURA / G1 Hopeful Stakes // Nakayama /// 2024 //// Photo by Shuhei Okada

この先は?

クロワデュノールは、4月のG1・皐月賞で最大の試練に挑むことになる。これはホープフルSと同じコース・距離で行われるが、クロワデュノールは1番人気候補となるだろう。

レースリプレイ: 2024 ホープフルステークス

アンドリュー・ホーキンス、Idol Horseの国際担当。世界の競馬に対して深い情熱を持っており、5年間拠点としていた香港を含め、世界中各地で取材を行っている。これまで寄稿したメディアには、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト、ANZブラッドストックニュース、スカイ・レーシング・オーストラリア、ワールド・ホース・レーシングが含まれ、香港ジョッキークラブやヴィクトリアレーシングクラブ(VRC)とも協力して仕事を行ってきた。

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